イトカワ
[Wikipedia|▼Menu]

イトカワ
(糸川)
25143 Itokawa

相模原市立博物館に展示された模型
仮符号・別名1998 SF36
分類地球近傍小惑星
(PHA)
軌道の種類アポロ群
火星横断
発見
発見日1998年9月26日
発見者LINEAR
軌道要素と性質
元期:2012年9月30日 (JD 2,456,200.5)
軌道長半径 (a)1.324 AU[1]
近日点距離 (q)0.953 AU[1]
遠日点距離 (Q)1.695 AU[1]
離心率 (e)0.280[1]
公転周期 (P)1.52 [1]
平均軌道速度25.37 km/s
軌道傾斜角 (i)1.622
近日点引数 (ω)162.80 度
昇交点黄経 (Ω)69.09 度
平均近点角 (M)176.48 度
物理的性質
三軸径535 × 294 × 209 (± 1) m[1]
直径330 m
表面積0.393 km2
体積0.0184 ± 0.00092 km3[1]
質量(3.510 ± 0.105)
×1010 kg[1]
平均密度1.90 ± 0.13 g/cm3[1]
表面重力0.07 - 0.1 mm/s2
脱出速度~0.0002 km/s
自転周期12.1324 ± 0.0001時間[1]
スペクトル分類S (IV)[1]
絶対等級 (H)19.2
アルベド(反射能)0.53
表面温度~206 K
Template (ノート 解説) ■Project

イトカワ(糸川、いとかわ、25143 Itokawa)(1998SF36)は、太陽系小惑星であり、地球に接近する地球近傍小惑星(地球に近接する軌道を持つ天体)のうちアポロ群に属する。
概要

イトカワは近日点が地球軌道の内側に入る、アポロ群の地球近傍小惑星である。地球軌道との最小距離が小さく、半径も160メートルあるため、潜在的に危険な小惑星 (PHA) にも分類されている。スペクトル型からS型小惑星に分類される[2]。日本の小惑星探査機工学実験宇宙機はやぶさ (MUSES-C)の目的地に選ばれ、2005年9月からの約1ヵ月半、はやぶさに搭載された可視光分光撮像カメラ、近赤外線分光器、レーザー高度計、蛍光X線分光器の4つの観測機器による詳細な探査が行われた。そして2005年11月には、イトカワ表面の岩石試料を採取して地球へ持ち帰るサンプルリターンを行うため、はやぶさは2度の着陸を行った[3]

イトカワは平均半径が約160メートル、長径500メートルあまりしかない小天体であり、これはこれまで惑星探査機が探査を行った中で最も小さな天体である[4]。はやぶさは2010年6月に地球へ帰還し、同年11月にははやぶさのカプセルコンテナ内にイトカワの微粒子が多数存在することが明らかとなり、その後イトカワの微粒子についての分析が進められている。

はやぶさによるイトカワの探査と地球へ持ち帰った試料から、これまで知られていなかった小さなサイズの小惑星について様々な知見がもたらされている。まずイトカワの質量と体積から考えて、内部の約40パーセントが空隙であると考えられ、イトカワは瓦礫を寄せ集めたようなラブルパイル天体であると考えられた。またイトカワの分光観測と岩石試料から、イトカワは普通コンドライトの中のLL4、LL5、LL6というタイプの隕石と同様の物質で構成されていることが判明した。そしてイトカワ表面の物質は宇宙風化を起こしていることが明らかとなり、地球上に落下する隕石の約8割を占める普通コンドライトの多くが、S型小惑星を起源とすることが明らかとなった。

また直径20キロメートル前後の母天体が大きな衝突によって破壊され、その瓦礫が再集積することによって現在のイトカワが形成されたと考えられること、重力が極めて弱いイトカワでは、表面の物質が惑星間空間に逃げ続けていると見られることなどが判明した。
発見とはやぶさの目的地に選定

イトカワは1998年9月26日アメリカニューメキシコ州ソコロマサチューセッツ工科大学リンカーン研究所地球接近小惑星研究プロジェクト (LINEAR) により発見された。発見後、 1998 SF36という仮符号が付けられ、軌道要素確定後に25143番小惑星とされた。
第三の候補

イトカワが発見された当時、日本宇宙科学研究所では、1995年8月に宇宙開発委員会で正式承認された小惑星探査機(工学実験宇宙機)はやぶさ(MUSES-C) の開発が進められていた。計画開始当初はMUSES-Cの探査対象である小惑星はネレウスとされ、打ち上げは2002年1月の予定であった。またネレウスのバックアップ天体として1989 MLが用意された[5]。しかし探査機の設計が進む中で重量的にネレウスに向かうことが困難であることが明らかとなったため、1999年8月にはバックアップ天体の1989 MLへ目的地が変更となり、打ち上げ時期も2002年7月へと変更された[6]

ところが2000年2月10日、宇宙科学研究所の科学衛星用ロケットであるM-Vロケット4号機の打ち上げが失敗した。失敗原因を分析し、対策を講じていく中で、MUSES-Cは予定通りに打ち上げを行うことが不可能であることが明らかとなった。MUSES-Cの目標天体であった1989 MLは、2002年7月の機会を逃すと次回打ち上げが可能となるのが5年後の2007年となってしまう。打ち上げが大きく延期されることにより、これまでMUSES-C計画を進めていくに際してアメリカと締結していた協力関係が維持できなくなり、アメリカが独自に小惑星探査機を打ち上げる方針に転換することも考えられることから、1989 MLをMUSES-Cの目標天体とすることは困難となった。そこで改めて候補天体を検討した結果、第3の候補として1998 SF36が、2002年11月から12月ないしは2003年5月の打ち上げでMUSES-Cが到達可能な小惑星として浮上してきた[7]
MUSES-Cの目標天体となる

1998 SF36がMUSES-Cの第3の目標天体として浮上する中で難題が持ち上がった。既にMUSES-Cの製作はかなり進行しており、推進剤タンクの製作も終了していた。MUSES-Cの目標天体であった1989 MLは1998 SF36と比べて到達に必要なエネルギー量が低く、1989 ML用に完成していたMUSES-Cの推進剤タンクの能力では1998 SF36に到達することが不可能であった[8]

MUSES-Cが1998 SF36に到達することが可能な手法について検討を進めていく中で、EDVEGA(Electric Delta-V Earth Gravity Assist)と命名されることになる、イオンエンジンと地球スイングバイを組み合わせた新たな軌道技法が編み出された[9]。スイングバイは探査機を天体に会合させ、その天体の引力を用いて探査機の進行方向の変換を行うとともに、天体の公転運動を利用して探査機の加速、減速を行う技法であるが、EDVEGAでは比推力が大きく、長時間をかけた加速に優れた能力を発揮するイオンエンジンを、探査機の軌道離心率を大きくするように噴射して軌道変更を行い、地球との軌道離心率の差という形でエネルギーを蓄え、地球との再会合時の経路角差によって生じる地球との相対速度からエネルギーを取り出す軌道技法である[10]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:117 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef