イチゴ
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この項目では、食用の植物について説明しています。その他の用法については「イチゴ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

オランダイチゴ
水耕栽培で育つオランダイチゴ
分類APG III

:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 angiosperms
階級なし:真正双子葉類 eudicots
:バラ目 Rosales
:バラ科 Rosaceae
亜科:バラ亜科 Rosoideae
:オランダイチゴ属 Fragaria
:オランダイチゴ F. × ananassa

学名
Fragaria × ananassa
Duchesne ex Rozier (1766)[1]
シノニム


Fragaria × magna Thuill.
(1800)[2]

英名
Garden strawberry,
pineapple strawberry,
ananas strawberry

イチゴ(生)100 gあたりの栄養価
エネルギー136 kJ (33 kcal)

炭水化物7.68 g
糖類4.89 g
食物繊維2 g

脂肪0.3 g
飽和脂肪酸0.015 g
一価不飽和0.043 g
多価不飽和0.155 g

タンパク質0.67 g
トリプトファン0.008 g
トレオニン0.02 g
イソロイシン0.016 g
ロイシン0.034 g
リシン0.026 g
メチオニン0.002 g
シスチン0.006 g
フェニルアラニン0.019 g
チロシン0.022 g
バリン0.019 g
アルギニン0.028 g
ヒスチジン0.012 g
アラニン0.033 g
アスパラギン酸0.149 g
グルタミン酸0.098 g
グリシン0.026 g
プロリン0.02 g
セリン0.025 g

ビタミン
ビタミンA相当量β-カロテンルテイン
ゼアキサンチン(0%) 1 μg(0%)7 μg26 μg
チアミン (B1)(2%) 0.024 mg
リボフラビン (B2)(2%) 0.022 mg
ナイアシン (B3)(3%) 0.386 mg
パントテン酸 (B5)(3%) 0.125 mg
ビタミンB6(4%) 0.047 mg
葉酸 (B9)(6%) 24 μg
ビタミンB12(0%) 0 μg
コリン(1%) 5.7 mg
ビタミンC(71%) 58.8 mg
ビタミンD(0%) 0 IU
ビタミンE(2%) 0.29 mg
ビタミンK(2%) 2.2 μg

ミネラル
ナトリウム(0%) 1 mg
カリウム(3%) 153 mg
カルシウム(2%) 16 mg
マグネシウム(4%) 13 mg
リン(3%) 24 mg
鉄分(3%) 0.41 mg
亜鉛(1%) 0.14 mg
マンガン(18%) 0.386 mg
セレン(1%) 0.4 μg

他の成分
水分90.95 g


単位

μg = マイクログラム (英語版) • mg = ミリグラム

IU = 国際単位

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

イチゴ(苺[3]・覆盆子、: Strawberry、学名: Fragaria)は、バラ科多年草

一見して種子に見える一粒一粒の痩果(そうか)が付いた花托(花床ともいう)部分が食用として供される。甘みがあるため果物として位置づけられることが多いが、草本性植物であるので野菜として扱われることもある[4]

通常、可食部の表は赤色(アントシアンによる)[5]だが、白色の品種もある(2009年に品種登録された和田初こい〈商品名・初恋の香り〉が世界初の白色イチゴとされる[6])。
概説

狭義には、オランダイチゴ属の栽培種オランダイチゴ(学名、Fragaria ×ananassaDuchesne ex Rozier)を意味する。イチゴとして流通しているものは、ほぼ全てオランダイチゴ系である。

広義にはオランダイチゴ属 (Fragaria) 全体を指す。英語のstrawberry(ストロベリー)はこの範囲である。バラ科オランダイチゴ属の半落葉性草本であり、北半球温帯に広く分布しているほか、ハワイ諸島や(南半球の)チリ中南部にも分布している[7]

さらに最広義には、同じバラ亜科で似た実をつける、キイチゴ属 (Rubus) やヘビイチゴ属 (Duchesnea) を含める。これらを、ノイチゴ、と総称することもある。オランダイチゴ属の二倍体の種にも、この総称に含まれているものがある。

明治時代から広く日本国内各地で生産されるようになったオランダイチゴ属は、日本語では「苺」と表記される場合が多い。

甘酸っぱい風味と香りで、一般に果物として姿も可愛らしく人気は高い[8]。栄養的にも優れ、特にビタミンCが豊富に含まれていることが知られている[8]
系統詳細は「オランダイチゴ属」を参照エゾヘビイチゴ

オランダイチゴ属の染色体の基本数は7 (n=7) である[9]

2倍体 (n=14)古くはヨーロッパにおいて栽培された種[9]。ベスカやダルトニアナなどがある[9]

4倍体 (n=28)中国チベットシベリアなどに見られる種[9]。モウピネンシスやオリエンタリスなどがある[9]

6倍体 (n=42)6倍体の種はモスカーターの一種が知られており、ヨーロッパ中部からロシアにかけて分布[10]

8倍体 (n=56)近代栽培イチゴは8倍体である[10]

特徴

好光性種子である。可食部は花托の発達したものであり、表面に分布する粒々がそれぞれ果実である[3]。このような形態をとるものをイチゴ状果偽果)という。独特の芳香があり、属名の由来にもなっている。属名のFragariaはラテン語で「香る」の意。

食材としての主なは12月 - 6月とされる[8]。かつての旬は、露地栽培の収穫期にあたる春から初夏とされていたが、温室栽培の技術発展に伴って、秋から翌年春まで多く流通するようになった[8]。赤色ができるだけ均一で、表面の粒(果実)がくっきりしていて、ツヤがあるものが市場価値の高い良品とされる[8][3]

ビタミンCが豊富である他、抗酸化物質として知られるポリフェノールの一種であるアントシアニンや抗作用のあるエラグ酸を含む。

生食の他、ジャムに加工されることも多い。受精すると花托の肥大が始まるが、一部受精していない雌しべがあるとその部位の肥大が弱くなる。したがって形の整った果実を作るためには、全ての雌しべ受粉するようにする。しかし、実際の栽培においては雌しべの先端部が未熟なまま開花するため[11]、均一な成長が行われるために花芽形成期の施肥と温度管理が行われる[12]
語誌

「いちご」の語源ははっきりしない。古くは『本草和名』(918年頃)や『倭名類聚抄』(934年頃)に「以知古」とある。『日本書紀』には「伊致寐姑(いちびこ)」、『新撰字鏡』には「一比古(いちびこ)」とあり、これが古形であるらしい。『本草和名』では、蓬?の和名を「以知古」、覆盆子の和名を「加宇布利以知古」としており、近代にオランダイチゴが舶来するまでは「いちご」は野いちご全般を指していた[13]

漢字には「苺」と「莓」がある。これらは異字体で「苺」が本字である。辞典によっては「莓」が見出しになっていて、「苺」は本字としていることがある。現代日本では「苺」、現代中国では「莓」を通常使う。

英語の strawberry(ストロベリー)は「 (straw) のベリー (berry)」と解釈できるが、そう呼ぶ理由ははっきりしない。「藁を敷いて育てた」「麦藁に包まれて売られていた」「匍匐枝が麦藁に似ている」という説があり、さらに、straw は藁ではなく、散らかす・一面を覆うを意味する strew の古語だという説もある。
近代栽培イチゴ(オランダイチゴ)
歴史

北半球のヨーロッパアジアで、古く紀元前から各地に自生していた野生イチゴの採集と利用が行われていたといわれる[8][14]スイスのトゥワン遺跡で出土した紀元前3830年から3760年頃の穀物スープからはイチゴの痩果が発見されている[14]。イチゴの栽培は古代ローマでは既に行われており、14世紀から16世紀にはいくつかの品種が栽培されていた[7]

近代栽培イチゴであるオランダイチゴは、18世紀オランダの農園で、北米産のバージニアイチゴ (F. virginiana) とチリ産のチリイチゴ (F. chiloensis) の交雑によって作られた[15][16]

北米原産のバージニアイチゴは、探検家や植民者によって16世紀前半から18世紀半ばにかけてヨーロッパへ持ち込まれた種で、植物園を通じてヨーロッパ各地に普及した[17]。一方チリ原産のチリイチゴは、マプチェ族などの先住民によって長年栽培されてきた品種である[7]。チリイチゴは18世紀初頭から19世紀半ばにかけてヨーロッパへ持ち込まれた種で、こちらも植物園を通じてヨーロッパ各地に普及した[17]

20世紀前半に創業したアメリカ合衆国Driscoll's社は、イチゴを始めとしたベリー種の栽培で急成長し、世界最大手の企業となった。Driscoll's社の製品はコストコなどの量販店で販売されている。
栽培

2021年の苺の国別生産量[18]国百万トン
中国3.38
アメリカ合衆国1.21
トルコ0.67
メキシコ0.54
 エジプト0.47
スペイン0.36
世界9.18

イチゴは土地にあった特有の栽培法を用いることで、世界各地で栽培が行われている[14]


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