イタチ属
オナガオコジョ M. frenata
分類
イタチ(鼬、鼬鼠)とは、ネコ目(食肉目)イヌ亜目クマ下目イタチ科イタチ属(Mustela)に含まれる哺乳類の総称である。オコジョ、イイズナ、ミンク、ニホンイタチなどがイタチ属に分類される。ペットとして人気のあるフェレットもイタチ属である。
「イタチ」の語は元来、日本に広く棲息するニホンイタチ(Mustela itatsi)を特に指す語であり、現在も、形態や生態のよく似た近縁のチョウセンイタチ(M. sibirica coreana)を含みながら、この狭い意味で用いられることが多い。また、広義にはイタチ亜科(あるいはイタチ科)の動物全般を指すこともあるが(イタチ亜科の場合、テンやクズリなどの仲間も含まれる)、ここではイタチ属のイタチ類について記す。 日本全国、ユーラシア、アフリカ、南北アメリカ大陸の亜熱帯から寒帯まで広く分布している。 イタチ属の動物は、しなやかで細長い胴体に短い四肢をもち、鼻先がとがった顔には丸く小さな耳がある。多くの種が体重2 kg以下で、ネコ目(食肉類)の中でも最も小柄なグループである。中でもイイズナ(Mustela nivalis)はネコ目中最小の種であり、体重はアメリカイイズナ (M. n. rixosa)で30 - 70 g、ニホンイイズナ(M. n. namiyei)で25 - 250 gである。 イタチ類は、オスに比べメスが極端に小柄であることでも知られ、この傾向は小型の種ほど顕著である。メスの体重は、たとえば前述のアメリカイイズナやチョウセンイタチ(M. s. coreana)ではオスの半分、ニホンイタチではオスの3分の1である。 小柄な体格ながら、非常に凶暴な肉食獣であり、小型の齧歯類や鳥類はもとより、自分よりも大きなニワトリやウサギなども単独で捕食する。反対にイタチを捕食する天敵は鷲・鷹・フクロウと言った猛禽類とキツネである。 肛門腺が発達しており、そこから強い悪臭を帯びた分泌液を噴出することで外敵から身を守る。 水辺を好み、泳ぐのも上手い。 伝統的な分類に基づくイタチ属の現生種は以下の通り。このうちアマゾンイタチ(Mustela africana
分布
特徴直立したイイズナ
種
アルタイイタチ Mustela altaica
オコジョ Mustela erminea
オナガオコジョ Mustela frenata(最新の分子系統ではミンク属(Neogale)に属す)
キバライタチ Mustela kathiah
イイズナ Mustela nivalis
シベリアイタチ(タイリクイタチ、チョウセンイタチ) Mustela sibirica, Siberian Weasel
(ニホンイタチ Mustela itatsi (M. s. itatsi))
セスジイタチ Mustela strigidorsa
ハダシイタチ Mustela nudipes
ヨーロッパミンク Mustela lutreola, European Mink
ヨーロッパケナガイタチ Mustela putorius, European Polecat, Black sable
(フェレット Mustela furo (M. p. furo))
ステップケナガイタチ Mustela eversmanni
クロアシイタチ(スジハライタチ) Mustela nigripes
アマゾンイタチ Mustela africana(最新の分子系統ではミンク属(Neogale)に属す)
コロンビアイタチ Mustela felipei(最新の分子系統ではミンク属(Neogale)に属す)
日本に棲息するイタチ属チョウセンイタチの顔
イタチ属 Mustela に属する動物は、日本には5種8亜種が棲息する。このうち、アメリカミンクは外来種であり、在来種に限れば4種7亜種となる。
比較的大型のイタチ類(ニホンイタチ、コイタチ、チョウセンイタチ)に対して、高山部にしか分布しないイイズナ(キタイイズナ、ニホンイイズナ)とオコジョ(エゾオコジョ、ホンドオコジョ)はずっと小型であり、特に、ユーラシア北部から北米まで広く分布するイイズナは、最小の食肉類でもある。
4種の在来種(ニホンイタチ、チョウセンイタチ(自然分布は対馬のみ)、イイズナ、オコジョ)のうち、ニホンイタチ(亜種コイタチを含む)は日本固有種であるが、前述のように(チョウセンイタチと同じく)大陸に分布するシベリアイタチの亜種とされることもある。また、亜種のレベルでは、本州高山部に分布するニホンイイズナとホンドオコジョが日本固有亜種であり、これにチョウセンイタチとエゾオコジョを加えた4亜種は、環境省のレッドリストでNT(準絶滅危惧)に指定されている。
外来種問題に関わるものとしては、西日本では国内移入亜種のチョウセンイタチが在来種のニホンイタチを、北海道では国内外来種のニホンイタチと外来種のアメリカミンクが在来亜種のエゾオコジョを、一部の島嶼部ではネズミ類などの駆除のために移入されたニホンイタチが在来動物を、それぞれ圧迫している。 「イタチ(以太知)」の呼称は遅くとも平安時代初期には存在したが、テンとイタチの呼称は平安時代初期から現代にかけて混称または混同される傾向があった[1]。 以下はニホンイタチ(対馬のみシベリアイタチ)に対する日本語方言である[1]。「イタチ」が転訛した呼称のほか、「キッキ」、「チーチ」「キチキチ」など鳴き声の擬音語、その他「トマ」、「ズット」、「オサコ」などがある。異名が多いのは、イタチは縁起の悪い動物と見做されていたため、忌言葉を用いたなごりとされる[2]。
日本のイタチ一覧
ニホンイタチ(イタチ) Mustela itatsi
【北海道・本州・四国・九州・南西諸島/日本固有種】 シベリアイタチの亜種とされることもある。北海道・南西諸島などでは国内外来種。西日本ではチョウセンイタチに圧迫され、棲息域を山間部に限られつつある一方で、移入先の三宅島などでは、在来動物を圧迫している。屋久島・種子島の個体群は、亜種コイタチ M. i. shoとして区別される。
シベリアイタチ(タイリクイタチ、チョウセンイタチ) M. sibirica, Kolinsky
シベリアイタチ(コリンスキー レッドセーブル、コリンスキーセーブル、レッドセーブル、シベリアン ファイアセーブル)
尾毛は、画筆や書筆の高級原毛として使われる。弾力がありしなやかで、揃いが良く、高価。
チョウセンイタチ(亜種) M. s. coreana
【本州西部・四国・九州・対馬】 対馬には自然分布、それ以外では外来種。ニホンイタチより大型。西日本から分布を広げつつあり、ニホンイタチを圧迫している可能性がある。
イイズナ M. nivalis
キタイイズナ(亜種、コエゾイタチ) M. n. nivalis
【北海道】 大陸に分布するものと同じ亜種。
ニホンイイズナ(亜種) M. n. namiyei
【青森県・岩手県・山形県?/日本固有亜種】 キタイイズナより小型であり、日本最小の食肉類である。
オコジョ M. erminea
エゾオコジョ(亜種、エゾイタチ) M. e. orientalis
【北海道】 日本以外では、千島・サハリン・ロシア沿海地域に分布。平地では国内外来種のニホンイタチ・外来種のミンクの圧迫により姿を消す。
ホンドオコジョ(亜種、ヤマイタチ) M. e. nippon
【本州中部地方以北/日本固有亜種】
アメリカミンク(ミンク) M. vison
【北海道】北米原産の外来種。毛皮のために飼育されていたものが、1960年代から北海道で野生化した。平地でエゾオコジョ・ニホンイタチを圧迫している。養魚場等にも被害がある。
方言