イソシアン化水素
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イソシアン化水素

IUPAC名

hydrogen isocyanide
azanylidyniummethanide
別称isohydrocyanic acid
hydroisocyanic acid
isoprussic acid
識別情報
PubChem6432654
ChemSpider4937885 
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CHEBI:36856 

SMILES

[C-]#[NH+]

InChI

InChI=1S/CHN/c1-2/h2H Key: QIUBLANJVAOHHY-UHFFFAOYSA-N 

InChI=1/CHN/c1-2/h2H

特性
化学式HNC
モル質量27.03 g/mol
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

イソシアン化水素(イソシアンかすいそ、hydrogen isocyanide)は、分子式HNCで表される化合物である。シアン化水素 (HCN) の互変異性体である。星間物質として遍在し、宇宙化学の分野では重要な化合物の1つである。
名前

英語でhydrogen isocyanideとazanylidyniummethanideのどちらもIUPAC命名法に基づいた正しいものであり、優先IUPAC名はない。後者の名前は、水素化アザン (NH3) とメタニド (C-) を親化合物とした置換基命名法に基づいたものである[1]
性質

イソシアン化水素は、C∞v分子対称性を持つ直線形三原子分子である。双性イオンであり、シアン化水素の異性体である[2]。HNCとHCNは、それぞれμHNC = 3.05デバイ、μHCN = 2.98デバイという、どちらも大きく、近い値の双極子モーメントを持つ[3]。このような大きな双極子モーメントが、これらの種を星間物質として発見されやすくしている。
HNC-HCN互変異性

HNCがHCNよりも3920 cm?1 (46.9 kJ/mol) だけ高いエネルギーを持つため、これらの平衡比 ( [ H N C ] [ H C N ] ) e q {\textstyle \left({\frac {[HNC]}{[HCN]}}\right)_{eq}} は、温度100 K以下で10?25になると考えられていた[4]。しかし、観測によると、その比 ( [ H N C ] [ H C N ] ) o b s e r v e d {\textstyle \left({\frac {[HNC]}{[HCN]}}\right)_{observed}} は10-25よりずっと高く、冷たい環境では実際はほぼ1桁の比になることが観測された。これは、互変異反応のポテンシャルエネルギー経路のためであり、互変異化が起こるためには、おおよそ12,000 cm?1のところに活性化障壁が存在する。これが、HNCが中性-中性反応でほぼ破壊される温度と一致する[5]
スペクトルの性質

実際には、HNC は、J = 1→0 遷移を用いて、天文学的に観察されるほぼ唯一の化合物である。この遷移は、≒90.66 GHzで起こり、この値は、大気電波を通しやすい「大気の窓」によく一致する。HCN を含む多くの関連化合物もこれに近い窓で観測できる[6][7]
星間物質としての重要性

HNCは、HCNは別として、プロトン化シアン化水素 (HCNH+) やシアン化物 (CN) 等の星間分子として重要な他の多くの関連分子の生成と破壊にも複雑に結びついている。このようにして、HNCの化学は無数の他の分子の性質の理解に繋がり、HNC は星間化学という複雑なパズルの不可欠なピースとなる。

さらに、HNC は HCN とともに、分子雲の濃いガスのトレーサーとして一般的に用いられる。HNC は、星形成に繋がる重力崩壊の調査だけではなく、他の窒素分子と比較した存在量により、原始星コアの進化の段階を決定するのにも用いられる[3]

HCO+/HNC比は、ガス密度を測定する手段として用いられる[8]。この情報から核の進化、星形成、さらにはブラックホールによるガス供給の情報も得られ、高光度赤外線銀河の形成機構についての深い洞察が与えられる。さらに、[HNC]/[HCN] が光解離領域ではほぼ均一、X線解離領域ではより大きいという性質から、HNC/HCN 比は光解離領域とX線解離領域を区分するのに用いられる。HNCの研究は比較的単純であり、これは最も大きなモチベーションの1つとなっている。大気の窓としてJ = 1→0 遷移の明瞭な部分を持つ他に、簡単な研究に用いることのできる多数の同位体異性体(英語版)(アイソトポマー)があり、また観測を容易にする大きな双極子モーメントを持つ。これらのため、生成や破壊の反応経路の研究が進み、これらの反応が宇宙で起こることに関する良い洞察も得られた。さらに、HNC とHCN の間の互変異性の研究により、より複雑な異性化反応のモデルも提案された[5][9][10]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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