『イグアナの娘』(イグアナのむすめ)は、萩尾望都による日本の漫画作品。月刊少女漫画雑誌『プチフラワー』(小学館)1992年5月号に掲載された50ページの短編作品、および本作品を表題作とする作品集。
親子の確執を題材に、娘を愛することができない母親と母から愛されない娘、両者の苦悩をファンタジーの要素を織り込んで描く。
1996年に菅野美穂主演でテレビドラマ化された(後述)。 青島ゆりこは、長女・リカの出産直後からリカの姿が醜いイグアナに見えてしまい、どうしても愛することができずにいた。一方で、次女・マミは普通の可愛い人間の姿に見えるため、ゆりこはマミを溺愛し、リカにはますます冷たく接する。そしてリカ自身も、鏡に映る自分の姿がイグアナに見えるようになり、そのため母親にも愛されず、恋愛もできない、幸せになれないと思い込むようになってしまう。 大学に進学したリカは恋愛し、卒業と同時に結婚し親元を離れ、幸せを実感する。やがて出産したが、自分の子供がイグアナではなく人間の姿に見えることで子供を愛することができないでいた。そのとき、突然の母の訃報を受け実家に戻ったリカは、母の死に顔が自分そっくりのイグアナであることに驚き、ようやく母を許すことができた。 萩尾は2歳で絵を描き、4歳で漫画や本を読み始めたが、萩尾の母親が「漫画は頭の悪い子が読むもの」と叱るので、漫画を読むのも描くのも親に隠れて行っていた。萩尾は母親にいつも「勉強しろ」と追いたてられ、成績の悪い子とは付き合うなとか、教科書以外の本は読んではいけないとか、また姉や妹と比較されては四六時中怒られていた[1][3]。成績の良くなかった萩尾はそれで家にいるのがつらく、また競争もいやで、漫画家になろうと思ったのも競争しないですむと思ったからということもある[1]。 漫画家になり上京して独立住まいをするようになってからも、母親に対する反発は心の中に無意識にくすぶり続けた。萩尾は「最初は自分では気づかなかったのだけど、デビューして2年目ぐらいに『あなたの作品って、いつもお母さんがいなかったり、死んだりするのね』って言われて、『あれそうなのかな?』って。それで、母親を登場させたくない自分の内面心理について振り返り始めたりしました。」と語っている[4]。その後、1977年に定年になった父親を代表として会社を作ったが、両親との不和が高じて大げんかし、2年後に会社をつぶす。親との関係を見つめるため心理学を勉強し始め、内なる親から解き放たれるために、1980年に親殺しをテーマにした『メッシュ』の連載を開始し[5][6]、その流れを引き継ぎ、厳格だった母親との対立を基にして1992年に描いたのが本作品である[5][8][9]。 本作の主人公をイグアナに設定した経緯について、萩尾は2017年10月2日に行われた女子美術大学特別公開講座で「親と話しても話しても通じないのは、話している言葉が違うのではないか。もしかしたら私は人間ではないのかもしれない。」と思い、人間ではないのなら私はいったい何なのだろうと考え、ふと「イグアナかもしれない」と思い、本作が生まれたと述べている[10]。 本作品は以下の作品集にも収録されている。
物語
作品の背景
単行本・文庫本
PFコミックス『イグアナの娘』1994年7月20日初版発行 ISBN 9784091720320
収録作品「イグアナの娘」、「カタルシス」、「午後の日差し」、「学校へ行くクスリ」、「友人K」
小学館文庫『イグアナの娘』2000年12月10日初版発行 ISBN 9784091913814
収録作品「イグアナの娘」、「帰ってくる子」、「カタルシス」、「午後の日差し」、「学校へ行くクスリ」、「友人K」
萩尾望都Perfect Selection 9『半神』2008年3月2日初版発行 ISBN 9784091312242
収録作品「半神」、「イグアナの娘」、「天使の擬態」、「学校へ行くクスリ」、「午後の日差し」、「偽王」、「温室」、「マリーン」、「カタルシス」、「帰ってくる子」、「小夜の縫うゆかた」、「友人K」
テレビドラマ
1996年4月15日 - 6月24日、テレビ朝日系「月曜ドラマ・イン」枠で放送。全11話。
平均視聴率11.5パーセント、初回視聴率7.9パーセント、最高視聴率19.4パーセント(最終回)
初回こそ7.9パーセントと不振であったがその後着実に上昇を続け、最終回では同時間帯第1位となる19.4パーセントを記録した。
主人公の一家以外の登場人物はドラマオリジナルである。
登場人物
青島リカ - 菅野美穂 / 米澤史織(子供時代)