イギリスの鉄道フランチャイズ
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ガトウィック・エクスプレス
1996年に開始された鉄道フランチャイズ

イギリスにおける鉄道フランチャイズとは、イギリスの鉄道においてフランチャイズ形式[注 1]によって民間会社に旅客列車の運行権を与えるシステムのことである。

フランチャイズ制は1990年代にイギリス国鉄の民営化の一環として成立したものである。各フランチャイズの運行権限は競争入札によって列車運行会社に与えられ、契約期間は通常7年以上である[1]。フランチャイズは地域の他に列車の種類ごとにも設定されており、独占的な契約ではないことから他のフランチャイズやオープン・アクセス事業者との競争も区間によっては発生する[2]。開始から20年以上が経過し、フランチャイズの数は合併によって25から17にまで減っているが、イギリスにおける鉄道旅客輸送の主流であることには変わりはない。なお、一部の近郊輸送区間では、コンセッション方式によって地方自治体から運行権が与えられるところもある。(コンセッションの項を参照)

フランチャイズ制はグレートブリテン島(・ワイト島)の鉄道においてのみ適用されており、北アイルランドにおける鉄道の運行は北アイルランド鉄道が担っている。
制度
入札・監督・終了

各フランチャイズの範囲や条件などは運輸省によって決定され、運行権も運輸省によって与えられる[3]。なお、権限移譲の一環として、スコットレールカレドニアン・スリーパーはトランスポート・スコットランド(英語版)が、ウェールズ&ボーダーズはトランスポート・フォー・ウェールズ(英語版)が管轄している。

入札が行われる前に運輸省はまず概要を記載した事前情報通知(Prior Information Notice)を発行し、地域の運輸連合や自治政府、運輸省管轄の非政府部門公共機関(英語版)で監視機関のトランスポート・フォーカス(英語版)への諮問を行う。この後、詳細な条件を記載した正式な入札招待状(Invitation To Tender)が事前審査を経た候補事業者3?5社に送付される。入札招待状には契約案がいくつか含まれており、契約案を事業者自らが提案することも可能である。最終的な落札者は案の実行可能性や創出価値、信頼性などによって決定される。また、入札者の過去の実績が検討の要素となる場合もある[4]

実績は契約期間中を通して監視される[4]

制度開始当初は実績が振るわない場合には財政支援が行われることもあったが、2004年の改革以降は特別な理由がない限り救済は行われないことになっている。代替として、契約の終了を早める措置を取ることが可能であり、この場合運輸省直営の最終手段運行事業者(Operator of Last Resort)が再契約までの間の運行を行う。なお、これが発生した際に同じ事業者によって運行されている他のフランチャイズも契約を強制終了させることができるという条項も定められている[4]
経営

運行事業者は経営上のリスクを受け入れることになるが、近年の契約には想定より一定程度低い収入に対して補償を行う(・想定より一定以上多い収入を回収する)条項が設けられている。

運行に伴う主な費用はネットワーク・レールへの線路および駅施設の使用料、車両リース会社(ROSCO)への車両使用料、そして車両の定期検査費用(重要部検査以上はROSCOの負担)と社員の人件費がある。収入は運賃が中心であり、契約によっては補助金が付くほか、利用する駅施設についてはテナント料などの収入を得ることも可能である[5]
一覧
現行フランチャイズ

フランチャイズ列車運行会社所有者契約開始日[注 2]満了予定日注記
カレドニアン・スリーパーカレドニアン・スリーパーセルコ(英語版)2015年3月31日2030年3月31日[6]
チルターンチルターン・レールウェイズアリーヴァ2002年3月3日2021年12月11日[7]
イースト・ミッドランズイースト・ミッドランズ・レールウェイ(英語版)アベリオ2019年8月18日2027年8月21日
イースト・アングリア(英語版)グレーター・アングリア(英語版)アベリオ(60%)
三井物産(40%)2016年10月16日2025年10月11日
エセックス・テムズサイド(英語版)c2cトレニタリア2014年11月9日2029年11月10日
グレーター・ウェスタン(英語版)グレート・ウェスタン・レールウェイファーストグループ2006年4月1日2023年3月31日[8]2019年コロナウイルス感染症の流行の影響により3年間延長[8]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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