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化学式(かがくしき、英: chemical formula)とは、化学物質を元素の構成で表現する表記法である。分子からなる物質を表す化学式を分子式(ぶんししき、英: molecular formula)、イオン物質を表す化学式をイオン式(イオンしき、英: ionic formula)と呼ぶことがある。化学式と呼ぶべき場面においても、分子式といい回される場合は多い。
化学式が利用される場面としては、物質の属性情報としてそれに関連付けて利用される場合と、化学反応式の一部として物質を表すために利用される場合とがある。
目次
1 種類
2 化学式の構成
2.1 同位体の扱い
3 組成式
3.1 実験式
4 構造式
4.1 特殊な構造式
4.1.1 電子式
4.1.2 立体表示と投影法
5 脚注
6 参考文献
7 関連項目
種類 五酸化二リン(十酸化四リン)
化学式は大きく分けて物質の元素組成を示す組成式と、分子構造を表示する構造式とに分類される。前者はもっぱら化学量論に基づく化学方程式の中などで使われて量的関係を示すことが多く、後者は分子構造を図示したり、反応機構を説明する化学反応式などで反応に特有な構造やそれに関連した性質を示す場合に利用することが多い。
組成式と構造式とは必ずしも合致しない。たとえばリン酸の無水物である五酸化二リン(右図)は、組成式的には P2O5 であるが、構造式からは分子の最小単位がP4O10であることがわかる。
特に有機化合物は異性体が多いために、構造式や示性式(後述)で物質を識別する機会が多く、無機化合物では組成式で十分物質の識別が可能であることが多い。
以下に主な化学式の種類を示す。 組成式も構造式も物質を構成する元素の種別は元素記号を使って表現される。また同一原子の個数を示すために元素記号の右下付き添え字をつけて表現する。 またポリマーなどで反復の個数をワイルドカード的に示す場合に n、m などの英小文字が右下付き添え字として利用される場合もある。 ラジカルあるいはイオンを表現する必要がある場合は、右上付き添え字で示す。ラジカルの場合は '・' を添え字とし、さらにイオンである場合は電荷に応じて '+' または '-' の符号を添え字とする。2価以上のイオンの場合は、正負を表す符号の前(左側)に価数を示す数字を添え字とする。 化学式の部分構造を示すために丸括弧 ( ) や角括弧 [ ] が使用される場合もある。閉じ括弧に右下付き添え字が存在する場合は括弧で括られた部分構造がその添え字の数字の回数だけ反復することを意味する。ワイルドカード的に示すために n、m などの英小文字が使用される場合もある。 括弧で括られた部分構造がラジカルあるいはイオンである場合は上記と同様な規則で閉じ括弧の右上付き添え字として付与する。 物質が一定比率の複数の要素で構成される場合は、各要素の化学式を・(ドット。日本語の約物である中黒「・」とは異なる記号[要検証 – ノート])で連結して1つの分子式として表す。特にイオン式の場合で、陽・陰イオンの構成比が1:1の場合は・が省略される場合もある。各構成要素の比率を示す場合は、それぞれの化学式の左側に係数をつける。係数は数値で示す場合と、ワイルドカード的に示すために n、m などの英小文字が使用される場合とが存在する。
組成式
分子式
示性式
構造式
電子式
化学式の構成
五酸化二リン
P2O5(組成式)
エタノール
CH3CH2OH(構造式)
ポリアセタール
CH3CO[OCH2CH2]nOCOCH3
スーパーオキシドアニオン
O2?
ポリアセタール
CH3CO[O(CH2)2]nOCOCH3
ヘキサシアノ鉄 (II) 酸イオン
[FeII(CN)6]4-
硫酸銅 (II) 5水和物
CuSO4・5H2O
塩化ナトリウム
Na+Cl?
塩化コバルトn水和物