イアン・スティーヴンソン
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イアン・スティーヴンソン(Ian Stevenson1918年10月31日 - 2007年2月3日[1])は、「生まれ変わり現象」の研究者である。「心搬体」(psychophore)という用語を創出し、記憶や感情や体の外傷が来世に持ち越される媒体の存在を提唱した[2]

イアン・スティーヴンソン
Ian Stevenson
生誕 (1918-10-31) 1918年10月31日
カナダモントリオール
死没 (2007-02-08) 2007年2月8日(88歳没)
アメリカ合衆国バージニア州 シャーロッツビル
肺炎
市民権 カナダ
アメリカ合衆国に帰化(1949年)
研究機関バージニア大学医学部 知覚研究室 室長
出身校セント・アンドルーズ大学(1937?1939)
マギル大学 理学士号(1942)
マギル大学 医学部 医学博士号(1943)
主な業績転生研究
臨死研究
病歴聴取
影響を
与えた人物ジム・タッカー
大門正幸
配偶者オクタビア・レイノルズ (1947-1983年)
マーガレット・パーツォフ(1985-2007年)
プロジェクト:人物伝
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略歴

1918年カナダ モントリオールにて生誕、オタワにて少年時代を過ごす[3]。幼少期より気管支炎を患い、生涯それに悩まされていた。1939年マギル大学医学部を首席にて卒業。生化学心身医学研究を経て、精神医学を志す。1949年よりルイジアナ州立大学にて助手、助教、教授を務め、1950年代にはオルダス・ハクスリーらとLSDメスカリンの研究に携わっていた[4]1957年バージニア大学精神科主任教授に着任。1960年には「 ⇒前世の記憶とされるものによる死後生存の証拠」を発表し、閲読したチェスター・カールソンの資金援助を受ける[2]

生まれ変わり研究をライフワークとしたその契機となる論拠のなかには、江戸時代の当時8歳の少年・小谷田勝五郎のケースも含まれていた。勝五郎は疱瘡によって6歳で急死した、隣村に住む藤蔵という少年の生まれ変わりであると自称し、一躍騒動となった[5]。その顛末が平田篤胤池田冠山によって編纂され、小泉八雲によって『Rebirth of Katsugoro(勝五郎の転生)』として英訳されたことから、知るところとなった[2]

スティーヴンソンは、 インドでのフィールドワークを行った結果、短期間のうちに二十数例を発見する。1966年1974年に著書『前世を記憶する20人の子供』を出版し反響を得る。現在までにスティーヴンソンと彼が率いる研究グループは、東南アジアを中心に、前世の記憶を持つとされる子どもたちの事例を2300例ほど集めている。

スティーヴンソンの研究は、月刊の科学雑誌として最古の歴史を誇る『神経・精神病学雑誌 Journal of Nervous and Mental Disease』に掲載され、特集が組まれた。その反応として、スティーヴンソン宛に世界中の科学者から論文の別刷りを請求する手紙が約1000通届いたとされる[6]。当時の編集長であったユージン・B・ブローディ教授は、以下のコメントを残している。このような特集を組んだ理由は、執筆者が、科学的にも個人的にも信頼に足る人物であること、正当な研究法をとっていること、合理的な思考をしていること、といった点にある。以上の条件が満たされるなら、人間の行動に関する知識の増進をめざす雑誌が、このようなテーマの論文を自動的に不採用にすべきではないし、そうしてはならない義務があると思う[6]


2002年、研究所所長を退職。その後も個人調査と研究を継続し、259の論文と15の著作、膨大な「生まれ変わり」事例のファイルを残し、2007年肺炎にて逝去。享年88歳[2]。ヴァージニア大学の彼の研究グループは現在ジム・タッカーが引き継ぐ形となっている。「ジム・タッカー」を参照
「生まれ変わり」現象の研究
研究方法

スティーヴンソンが取った研究方法は面接調査であり、主として2歳から5歳までの間に「前世の記憶をよみがえらせた」子供とその関係者が研究対象として選ばれた。面接調査により、子供がもつ記憶の歪み、証言者たちの相互の証言の食い違いがないかを調査し、「前世の家族」の調査も行った[7]
「前世の記憶」を持つ子供の特徴

子供たちが自発的に「前世」を語り始めるのは、発話が可能になる2歳から5歳までの間であり、多くのケースでは5歳から8歳までには子供たちは語るのをやめてしまい、成長するにつれ本人の記憶からも忘れ去られることになる。


子供たちが語る内容は、「前世」の人物が死亡した時の様子、居合わせた人や物の描写、死亡してから生まれ変わるまでの様子などである。わずかな記憶のみをもつ子供もいれば、膨大な記憶を持つ者もいる。


そうした子供たちが示す行動には、まず「前世」の家族に対する親近感の表明がある。子供たちは時に「現世」への違和感を表明し、「本当の親のところへ連れて行って」などと訴える事がある。子供たちが前世の居住環境や親族の名を語り、その証言が事実と符合した例も多い。


死亡時の状況(やそれと類似した状況)への恐怖があり、特定の乗り物や火や水、銃火器などへの恐怖が見られる。


「前世」の人物と同様の食べ物や衣服の好き嫌い、前世と同じような発話や動作、前世の死に方に関連した先天性欠損や、
母斑)などが見られる事もある。スティーヴンソンは先天性欠損と母斑については生まれ変わり事例の「最有力の証拠」となると見なしている。(→#先天性刻印)


そうした子供たちの割合は、いずれの文化圏でも男児がかなり多いという特徴が挙げられる。次に、前世の記憶では子供たちの圧倒的多数が、自然死ではなく(事故にあったり殺されたりなど)非業の死を遂げ、突然に人生に終止符が打たれているという特徴がある。


「前世」と「現世」の性別が異なっている場合には、性の違和感が見られる場合もある。また「前世」で成人していた場合、その記憶を語る子供たちの物腰は大人びたものであることが多い。早熟な性的行動や、酒・タバコといった大人の愛用品への嗜好も見られる。


死亡した前世の人物の母親が、予告夢を見ていたというケースも多い。「次に生まれる子供は、死者の生まれ変わりである」と直観するに至る夢を見ている事例である。また稀ではあるが、死者が自然に生まれ変わる場所を正確に指摘していたケースもある。

真性異言

極めて稀ではあるが、前世を語る者の中には、その前世で語っていた言語を操る能力(真性異言)のある者がいる。スティーヴンソンが収集した2000例の中のわずか3例がこれに当たる。そうした事例では、催眠中に前世の人格が出現し、スウェーデン語ドイツ語などにより文章で意思疎通ができるほか、前世の言語での歌を歌う能力などが確認されている [8]
先天性刻印

子供たちが語る「前世の記憶」と符合する場所に母斑や先天性欠損が現れるケースがある。「前世の人格」が死亡した際に追った傷、あるいは前世の人格が持っていた痣、傷跡、ほくろや手術痕などが、現世の人格において同じ場所に再現されるケースである。中には、殺される際に手や指を切断されたために、その部分が欠損する形で現れた例もある。


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