アンモニウム(ammonium)は、化学式NH4+の分子イオンである[1]。アンモニア(NH3)のプロトン化によって形成されるオニウムイオンである。アンモニウムは、NH4+の1つ以上の水素原子が有機基に置き換わってできる、陽電荷を持った、またはプロトン化置換基を持つアミンや、第四級アンモニウムカチオン(NR4+)に対する一般名でもある。「アンモニウムイオン」とも呼ばれるが、「アンモニウム」という用語自体がイオンの名前である。
アンモニウム
系統名Ammonium
識別情報
CAS登録番号14798-03-9
アンモニウムは、弱塩基であるアンモニアがブレンステッド酸(プロトンドナー)と反応して形成される。 H + + NH 3 ⟶ NH 4 + {\displaystyle {\ce {{H^{+}}+NH3->NH4^{+}}}}
NH 4 + {\displaystyle {\ce {NH4^+}}} の酸解離定数pKaは、9.25である。
アンモニウムイオンは弱酸性で、ブレンステッド塩基と反応して無電荷のアンモニア分子に戻る。 NH 4 + + B − ⟶ HB + NH 3 {\displaystyle {\ce {{NH4^{+}}+B^{-}->{HB}+NH3}}}
従って、アンモニウム塩の濃溶液を強塩基で処理するとアンモニアを生じる。アンモニアが水に溶けると、そのうち少量がアンモニウムイオンに変わる。 H 3 O + + NH 3 ⇆ H 2 O + NH 4 + {\displaystyle {\ce {{H3O^{+}}+NH3\leftrightarrows {H2O}+NH4^{+}}}}
アンモニアがアンモニウムイオンを形成する割合は、溶液のpHに依存する。pHが低い時は平衡は右に動き、より多くのアンモニアがアンモニウムイオンに変わる。pHが高い、つまり水素イオン濃度が低ければ平衡は左に動き、水酸化物イオンがアンモニウムイオンからプロトンを引き抜き、アンモニアを形成する。
アンモニウム化合物の形成は、気相でも起きる。例えば、アンモニア蒸気が塩化水素蒸気と接すると、塩化アンモニウムの白雲が形成され、最終的には、固相の白く薄い層となる。
アンモニウム塩アンモニウムの形成
アンモニウムイオンは、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の様々な塩で見られる。大部分の単純なアンモニウム塩は、非常に溶解性が高い。例外はヘキサクロリド白金(IV)酸アンモニウムで、かつては、これを生成させることでアンモニウムを検出していた。硝酸塩や過塩素酸塩は爆発性が高く、この場合はアンモニウムは還元剤となる。
アンモニウムイオンがアマルガムを形成する場合もある。これは、アンモニウム溶液を水銀電極を用いて電気分解した場合に生じる[2]。このアマルガムは最終的に分解してアンモニアと水素を放出する[3]。 アンモニアの窒素原子の孤立電子対は、水素と結合を形成する。その後、4つ全てのN-H結合は等価になり、極性共有結合になる。このイオンは、メタン及びテトラヒドリドホウ酸イオン それに金属水酸化物を加えると、アンモニアが生成される。 アンモニウムイオンの水素原子は、アルキル基または他の有機基で置換され、置換アンモニウムイオン(IUPAC名ではアミニウムイオン)を形成することができる。
構造と結合
検出
有機アンモニウムイオン「アミン」も参照