アンプ_(音響機器)
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この項目では、音響機器におけるアンプについて説明しています。電子回路については「増幅回路」を、楽器につなげるアンプについては「アンプ (楽器用)」をご覧ください。

音響機器(オーディオ機器)におけるアンプ(: amplifier)とは、音響を表現した電気信号増幅する機器である。日本語では慣例的に、英語名amplifier(アンプリファイア)を短縮させ「アンプ」と呼ばれることが多い。SOUND WARRIOR SW-10 真空管アンプ
概要1920年代真空管アンプ

さまざまある増幅器の一種である。用途、出力の大きさ、付加機能によりいくつかの種類がある。

初期の音響機器はアンプを持たず、微小な電気信号であっても反応性のよいスピーカーを内蔵する事で済ませていた(ただし、あまり大きな音は出なかった)。
真空管アンプの登場

真空管が発明されると、電気信号の増幅、ひいては音声(音響)を表現した電気信号の増幅が可能となり、通信機ラジオ、電気蓄音機などの音響機器に組み込まれた。これがアンプの発祥である(真空管アンプ)。後に音響機器の種類が増えると、それぞれの音響機器にアンプを内蔵するのでなく、アンプ(とスピーカー)を筐体として独立させ、それに複数の音響機器を接続するようになった。エレクトロニクスの技術者などは、世界中で、アンプは購入したりせず、さかんに自作した。なお、真空管アンプはアナログ信号をアナログのまま増幅する。
トランジスタアンプの登場と真空管アンプの存続

トランジスタが登場し、1950年代以降にトランジスタのアンプも用いられるようになった(トランジスタアンプ)。ラジオなどではトランジスタアンプがさかんに使われるようになっても、オーディオ観賞分野では、真空管アンプはトランジスタアンプと並び、依然として使われ続けた(現在でも製造され、使われ続けている)。真空管とトランジスタの増幅の特性(増幅後の波形の変化)がわずかに異なり、真空管アンプの音が「やわらい」「あたたかみがある」音に聞こえるのに対して、トランジスタアンプの音は「硬い」「つめたい」などと、一部のオーディオリスナーや評論家たちが評価したからである。

とは言え、トランジスタアンプによって低価格化も可能になり、真空管のように傷んで(ある程度の期間で)交換する必要があり、スイッチを入れてから温まるまで待たなければならなかったのに比べて、トランジスタは交換の必要がなく、スイッチを入れるとすぐに使え、おまけに小型であるなど、さまざまな点で便利ではあったので、一般人向けには次第に販売される割合が増えてゆき、低価格帯のオーディオ機器では、ほぼすべてがトランジスタアンプになっていった。が、それでも高級音響機器(高価格帯)では真空管アンプが用いられつづけたのである(2018年現在でも真空管アンプは販売され続けている。たとえばアンプひとつの価格が数十万円以上、ものによっては百万円以上するようなものもある。)
アンプICの登場

60年代以降には、真空管アンプおよびトランジスタアンプに加え、IC等も使われるようになった。
現在の状況

多くの電気機器では、内部回路はほとんどがトランジスタ、さらにはICへと移行が進み、真空管増幅器は消えてしまった。しかし音響機器のファンの中でも特に熱狂的なファンというのは、音の聞こえ方のわずかな違いに徹底的にこだわるので、そしてしばしば音のためならば、価格や機器の大きさのことは度外視するので、独特の音の質感をもたらす真空管アンプが今でも生き残っているのである。たとえ真空管アンプの音質を高く評価し、購入する人数が、全人口に対して非常に小さくても、熱狂的なファンは ひとりあたりとても大きな金額(桁がいくつも違うほどに、とても大きい金額)を支払うので、真空管アンプの市場(マーケット)が総金額としてはそれなりに大きくなり、市場として立派に成立し、メーカーとしても製造しつづけることができるのである。

詳細は後述参照。
種類

レコードプレーヤーCDプレーヤーチューナーカセットプレーヤーなどの音響機器からのライン出力を受け、またセレクタやトーンコントロールなどを内蔵し、主として電圧を増幅し、次のパワーアンプを駆動する増幅器をコントロールアンプあるいは次のメインアンプと対置してプリアンプと呼ぶ。コントロールアンプからの出力を受け、主として電流(ないし電力)を増幅し、スピーカーなどを駆動する増幅器をパワーアンプあるいはプリアンプと対置してメインアンプと呼ぶ。これらを別々のコンポーネントにすることが広く行われたのでそれぞれを「プリアンプ」「メインアンプ」と区別するようになり、更にはそれらを一体化したものとしてプリメインアンプやインテグレーテッドアンプ(総合アンプ)という呼称も生まれた。プリメインアンプの中には、プリ部とメイン部を切り離して使えるものもあった。
コントロールアンプ(プリアンプ)詳細は「プリアンプ」を参照

コントロールアンプ(プリアンプ)は小さな(主としてラインレベルの)入力信号を増幅するだけでなく、音を細かく調整したり、入力を切り替えたりする機能を備えており、そのために高音域、中音域、低音域の音量を個別に調整する「トーン・コントロールつまみ」(=イコライザー (音響機器))や、ステレオの左右の音量を調整する「バランス調整つまみ」、入力を選択する「入力切替スイッチ」(入力セレクタ・スイッチ)などを備えている。

レコードが主力の媒体だった時代には、レコード盤の表面の溝のわずかな動きを拾って電気信号に変えるピックアップ・カートリッジの微小な出力を増幅する専用のアンプがプリアンプに備わっていることが一般的であった。特に、単純な増幅だけではなく、MCカートリッジの非常に微小な出力を増幅したり(ヘッドアンプ。これは特殊で、信号を引き回したくないことなどもあり、レコードプレーヤー側に備えることも多い)、レコードに記録された信号の「RIAA特性」と呼ばれる周波数特性を、逆特性のフィルターを通して戻すイコライザアンプが必要であった。プリアンプ内蔵ではなく独立させた「フォノアンプ」もあった。1980年代ごろからは主なメディアがCDに移行したため、フォノイコライザを持たない機種が多くなっており、近年はこれらは全てレコードプレーヤーの側が備えるのがもっぱらとなっている。

一般の音響機器のライン出力の出力レベルは2Vrms程度あるので、500mW程度で駆動するのであれば、プリアンプの必要性は無い。
パワーアンプ(メインアンプ)

パワーアンプ(メインアンプ)はプリアンプからの出力を受けて電力増幅を行い、スピーカーなどを駆動する。

電力を増幅するだけであるため、入力制限用または出力調整用の「ボリュームつまみ」が付いているだけ、というものが一般的であり、プリアンプ側にメインボリュームがあることを前提として[1] ボリュームが無いものも少なくない。大出力のものは発熱も大きいので放熱に注意しなければならない。
インテグレーテッドアンプ(プリメインアンプ)

コントロールアンプ(プリアンプ)とパワーアンプ(メインアンプ)を一体化したものをインテグレーテッドアンプ(プリメインアンプ)という(これに対しコントロールアンプやパワーアンプをセパレートアンプと呼ぶことがある)。

操作パネルはコントロールアンプとほぼ同じで、パワーアンプを内蔵しているのでスピーカ端子がある。

コントロールアンプとパワーアンプを一体化したといっても、内部でコントロールアンプ回路とパワーアンプ回路を分けて組んでいるものと、回路的に融合させてしまっているものとがある。前者の構成ではコントロールアンプ出力端子とパワーアンプ入力端子が設けられていることがあり、この場合、一つの筐体に収まったコントロールアンプとパワーアンプとして別々に使うことができる。すなわち、コントロールアンプ出力端子を別のパワーアンプ入力に接続したり、逆に別のコントロールアンプ出力をパワーアンプ入力端子に接続して使うことができる。後者の構成では完全に同じことはできないが、 AUX 入力などのライン系入力端子を使ってパワーアンプとして使うことはできる。

2010年頃からは USB DAC を搭載した製品や、アンプ同士の連動機能によってチャンネル数を拡張できる機種が開発され、 PC オーディオや AV アンプとの垣根がなくなりつつある。
レシーバー

インテグレーテッドアンプにラジオチューナーを内蔵したものをレシーバーという。スピーカーをつなぐだけでラジオ放送を聴くことができ小形に収まる。

更にレコードプレーヤーを一体化したものもあったが、レコードプレーヤーは本質的には機械部品であり、また構造が大掛かりになるので、セパレート型ステレオやモジュラー型ステレオの一部としてはともかく、アンプとしては日本では流行らなかった。しかしコンパクトディスク (CD) プレーヤーやミニディスク (MD) プレーヤーなどは内蔵が容易であり、ラジオチューナーと CD プレーヤーを内蔵したものは CD レシーバーなどと呼ばれる。

また、最近ではラジオチューナーを内蔵していなくても、インターネットラジオが聴けるものをネットワークレシーバーと呼ぶことがある。
デジタルアンプ「増幅回路#D級」も参照

級別としてD級とされることもある。

デジタルアンプとはPWMPDMを電力増幅に利用するアンプである。アナログ入力の(すなわちアナログ段を持つ)製品もあるが、デジタル入力から出力スイッチング素子までアナログ回路を経由しない「フルデジタル」などと呼ばれている製品もある[2](ただし出力スイッチング素子以降にアナログ回路であるローパスフィルタが必ず存在するため、厳密には「フルデジタル」なアンプなど存在しない)。デジタルアンプでは入力音声信号により変調されたパルス波デューティ比または頻度を制御するため、最終出力段のトランジスタはONかOFFかの単純なスイッチング動作となり、アナログアンプに比べ電力効率が飛躍的に高いことが最大の特長である。基本的な原理は、電圧可変スイッチング電源の出力電圧を入力(音声)信号に応じて変化させることと等価である。

市販のオーディオアンプでは、1977年に発売されたソニーのTA-N88が非常に初期のものである[3]。これは、自励発振型のPWM変調回路により入力信号からアナログ的にPWM波を生成するものであるため、これを世界初のデジタルアンプとするかについては意見が分かれるものの、今日のデジタルアンプの原型となるアンプである。

また、デジタルアンプはその電力効率の高さからミニコンポカーオーディオ携帯音楽プレーヤーなどのアンプ、また多チャンネルを扱うAVアンプ(後述)用としてよく用いられるほか、従来のアナログアンプにない特長を活かしたと称している、いわゆる「高級オーディオ」もある。


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