アンナ・カレーニナ
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イワン・クラムスコイ作「邦題:忘れえぬ女」(1883年)。アンナ・カレーニナをイメージしたものとも言われている[1]。.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ポータル 文学

『アンナ・カレーニナ』(: Анна Каренина)は、帝政ロシアの作家レフ・トルストイの長編小説。1873年から執筆を開始し、1875年から雑誌『ロシア報知(英語版)』(: Русск?й В?стникъ[2])に連載した。1877年に単行本初版が刊行された。『戦争と平和』と並ぶ作者の代表作であり、現代に至るまで高い評価を受けている。
あらすじ

主な舞台は1870年代のロシア。

政府高官カレーニンの妻である美貌のアンナは、兄夫婦の諍いを仲裁するためにやってきたモスクワで若い貴族の将校ヴロンスキーと出逢い、互いに惹かれ合う。

地方の純朴な地主リョーヴィンはアンナの兄嫁の妹キティに求婚するが、ヴロンスキーとの結婚を期待するキティに断られてしまう。失意のリョーヴィンは領地に戻り、農地の経営改善に熱心に取り組む。ところがキティはヴロンスキーに無視され、それがきっかけで病を患ってしまう。

アンナは夫と幼い一人息子の待つペテルブルクへ帰京するが、ヴロンスキーはアンナを追う。二人の関係は急速に深まるが、それを知ったカレーニンは世間体を気にして離婚に応じない。

アンナはヴロンスキーの子供を出産後、重態となる。そこへ駆けつけたカレーニンは寛大な態度でアンナを許す。その一連を目の当たりにしたヴロンスキーはアンナを失うことに絶望しピストル自殺を図るが、未遂に終わる。その後ヴロンスキーは退役して、回復したアンナを連れて外国に出奔する。

リョーヴィンは病気の癒えたキティと結婚し、領地の農村で新婚生活を始める。そして兄を看取ったことをきっかけに人生の意義に悩むようになる。

帰国したアンナとヴロンスキーの二人は、不品行が知れ渡り社交界から締め出され、やむなくヴロンスキーの領地に居を定めることになる。離婚の話は、狂信的な知人のカレーニンへの入れ知恵や、一人息子を奪われるというアンナの恐れなどの事情でなかなか進まない。自らの境遇に不満なアンナと領地の経営に熱中するようになったヴロンスキーとは次第に気持ちがすれ違い始め、アンナはヴロンスキーの愛情が他の女性に移ったのではないかとまで疑うようになる。ついに絶望したアンナは列車に身を投げる。生きる目的を見失ったヴロンスキーは、私費を投じて義勇軍を編成し、トルコとの戦争(露土戦争)に赴く。カレーニンはアンナとヴロンスキーの間の娘である幼子のアニー(カレーニンとアンナは離婚していないので、法律上はアニーはカレーニンの娘扱いとなっている)を引き取る。なお、カレーニンとヴロンスキーの名前は、どちらもアレクセイである。

一方、リョーヴィンは、キティとの間に子供をもうけ、領地で幸せな家庭を築き、人は他人や神のために生きるべきものだという思いに至る。
主題

不倫という神の掟をやぶる行為に走ったアンナは不幸な結末を迎えざるをえない。しかし、自身の気持ちに誠実に生きたアンナを同じ罪人である人間が裁くことはできない。虚飾に満ちた都会の貴族社会で死に追いやられたアンナと、農村で実直に生きて信仰に目覚め、幸せをつかんだリョーヴィンとが対比され、人の生きるべき道が示されている[3][4][5][6][7]

また、この物語の主軸は、主人公アンナが、二人のアレクセイである、カレーニンとヴロンスキーの間を行き来することである、ともいえる。初めカレーニンの妻であったアンナは、ヴロンスキーに惹かれ、その妻となる。しかし、やがてヴロンスキーと心が離れ、最後にアンナは自殺してしまう。しかしアンナは娘であるアニーという形をとって生まれ変わり、再びカレーニンの下へ還るのである。
手法

トルストイは、リアリズムの巨匠の一人と評され、本作品においても鋭敏な感性で登場人物の肉体や行動、および環境を描くことで、その人物の心理を表現するという作者一流のリアリズムの手法が駆使されている。その的確な描写力に加え、心理に対する深い洞察、厳密なことばの選択などが、数多くの登場人物の個性を鮮やかに描き分ける[8][9][10]。また、修辞学を排し語義そのものを明らかにする直截的な文体が用いられている[11]
評価

雑誌に発表した当初から賞賛の声に包まれた[12]ドストエフスキーは「芸術上の完璧であって、現代、ヨーロッパの文学中、なに一つこれに比肩することのできないような作品である[13]」、トーマス・マンは「このような見事な小説、少しの無駄もなく一気に読ませる書物、全体の構造も細部の仕上げも一点非の打ちどころのない作品[14]」と評し、レーニンは、本がすり切れるまで読んだと言われている[15]桑原武夫は「この間お目にかかった志賀直哉さんも、近代小説の教科書といっていい、ともらされております[16]」と発言している。

2002年にはノルウェー・ブック・クラブ(Norwegian Book Club)が選定した「世界文学最高の100冊」(en:The 100 Best Books of All Time)に選ばれ、2007年刊行の『トップテン 作家が選ぶ愛読書』“The Top Ten: Writers Pick Their Favorite Books”[17]の首位(en:List of novels considered the greatest of all time)を占めた。
日本語訳複数の訳で重版されており以下は現行版、いずれも「アンナ・カレーニナ」でタイトル統一されている。

中村融訳 「アンナ・カレーニナ」 岩波文庫(上中下)、改版1989年

木村浩訳 「アンナ・カレーニナ」 新潮文庫(上中下)、再改版2012年

望月哲男訳 「アンナ・カレーニナ」 光文社古典新訳文庫(全4巻)、2008年

北御門二郎訳 「アンナ・カレーニナ」 東海大学出版会(上下)、新版2000年

派生作品M・ヴルーベリによる挿絵 『息子と再会するアンナ・カレーニナ』 (1878年)
映画

この作品は何度も映画・テレビ化されている。

アンナ・カレニナ (Love):1927年製作。サイレント映画。グレタ・ガルボジョン・ギルバート主演

アンナ・カレニナ:1935年製作。グレタ・ガルボ、フレドリック・マーチ主演

アンナ・カレニナ:1948年製作。ヴィヴィアン・リー主演

アンナ・カレーニナ:1967年製作。ソ連

アンナ・カレーニナ:1975年製作。ソ連。M・プリセツカヤ主演

アンナ・カレーニナ:1997年製作。イギリス・アメリカ合作。ソフィー・マルソーショーン・ビーン出演

アンナ・カレーニナ:2012年製作。イギリス・フランス・アメリカ合作。キーラ・ナイトレイジュード・ロウアーロン・ジョンソン出演

アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語:2017年公開のロシア映画(日本公開は2018年)。エリザベータ・ボヤルスカヤ、マクシム・マトベーエフ、ビタリー・キシュチェンコ出演

バレエ

ボリショイ・バレエ団の3幕物バレエ作品。


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