アンダーグラウンド
Underground
監督エミール・クストリッツァ
脚本デュシャン・コヴァチェヴィッチ
『アンダーグラウンド』(Underground, セルビア語: Подзем?е)は1995年のフランス・ドイツ・ハンガリー・ユーゴスラビア・ブルガリアの歴史コメディドラマ映画。監督はエミール・クストリッツァ。カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞(同監督の受賞は1985年の『パパは、出張中!』に続き2度目である)した。ベオグラードを舞台に、第二次世界大戦からユーゴ内戦まで、ユーゴスラビアの激動の歴史をブラックユーモアを交えて描いている。
劇場公開時のバージョンは163分。本作は『Once Upon a Country』(Била ?едном ?една зем?а, Bila jednom jedna zemlja)というタイトルでも知られ、これはセルビア国営放送で5時間のミニシリーズとして放送したロングバージョンのタイトルである。劇場公開にあたり、クストリッツァは共同製作者から、320超分から大幅なカットを強いられたとインタビューで述べている。 1941年4月、ナチス進攻下のベオグラードでは、パルチザンの義賊・詩人にして共産党員のマルコが元電気工のクロ(ペタル・ポパラ)を党に入党させ、めきめきと闇社会で頭角を表していく。4月6日、ベオグラードはナチスの本格的な爆撃を受け、都市は焼け野原となり、マルコの弟・イヴァンが飼育係を勤める動物園も爆撃により多くの動物が死傷した。ナチスによる共産党員・パルチザン狩りが進むなか、マルコはクロを含む一族郎党を丸め込み、地下室(アンダーグラウンド)に退避させ武器の密造を行わせる。 マルコとクロの両者が恋焦がれる女優ナタリアは、障害者の弟・バタと自分の身の保身のためにナチス将校・フランツの恋人となるが、クロの奇策により奪還される。しかし船上でのクロとの結婚式の最中にフランツ率いるナチス部隊の襲撃を受け、ナタリアは再びフランツの下へ、クロは捕縛されパルチザンの情報を引き出すために拷問を受ける身となる。マルコは医師に変装しフランツを暗殺、ナタリアとクロを奪還するが、その際のトラブルによりクロは大怪我をし地下室の住人となる。 マルコはその後も仲間を地下に幽閉しながらパルチザンの英雄として祖国解放戦争を勝ち抜き、チトー大統領の側近となる。しかし地下室の住人には「まだナチとの戦争は続いている」と嘘をつきつづけ、武器の密造を続けさせ自分の利益とした。そしてナタリアも自分の妻としてクロから奪うことに成功する。 祖国解放により、ユーゴ共産党政府の重要人物となったマルコとその妻ナタリア。しかしマルコは地下に幽閉したまま武器の密造をさせているクロたちの事が気がかりだった。マルコはクロの事を「祖国解放戦争で英雄的な死をとげた」とし、銅像を立て記念映画の製作にまで踏み切る。 地下世界では多くの人々が武器製造に従事しており、マルコが毎晩主題歌『リリー・マルレーン』とともに流す偽物のドイツ軍ベオグラード放送のおかげで、いまだに第二次大戦が続いていると信じていた。地上で映画撮影が進むころ、地下世界ではクロの息子・ヨヴァンとエレナの結婚式の最中、欺瞞に耐え切れないナタリアが酒に酔い、マルコとの関係をクロに知られてしまう。クロに問い詰められたマルコは自殺のふりをし、自分の脚を銃で撃つ。そんな中、イヴァンの親友であるサルのソニが地下で製造された戦車に乗り込み、偶然に主砲を発射してしまう。血気にはやるクロは、息子のヨヴァンを連れ、戦車の砲弾によって出来た穴から地上に撃って出る。しかし彼らが目にしたのはマルコが企画した「国家英雄クロ」のプロパガンダ映画の撮影班だった。ナチス兵に扮するエキストラやフランツに扮する俳優を本物だと思い込んだクロとヨヴァンは映画撮影班を血祭りにあげてしまう。 ドナウ河で生まれて初めて太陽の光を見るヨヴァン。クロはヨヴァンに泳ぎ方を教えるなどして父親として息子への愛を示すが、その最中に映画撮影班虐殺事件の犯人追跡に現れたヘリコプターの銃撃を受ける。一人で上手く泳げず河に沈んだヨヴァンは水中で新婦のエレナと幻想的な再会を果たし、ドナウ河の中に消えていく。クロは息子を探し河底にもぐりこむが、猟師の網にかかって浮き上がれなくなってしまう。 欺瞞への苦しみ、政治の混迷に耐えられなくなったマルコとナタリアは、ついに自宅を爆破し失踪、政界からも姿を消す。
ストーリー
第一章「戦争 (Deo Rat)」
第二章「冷戦 (Deo Hladni Rat)」