この項目では、魚類について説明しています。麻雀用語の「暗刻」については「面子 (麻雀)#刻子」を、「アンコー」の愛称で知られるアナウンサーについては「斉藤安弘」をご覧ください。
4属25種
アンコウ属 Lophiomus
キアンコウ属 Lophius
ヒメアンコウ属 Lophiodes
ダルマアンコウ属 Sladenia
本文参照
生きた「キアンコウ」はアクアワールド・茨城県大洗水族館「深海の海ゾーン」などで見る事が出来る。
アンコウ(鮟鱇[1]、華臍魚)とは、第1義には、アンコウ目中の、アンコウ科に分類される魚の日本語における総称である。しかし、アンコウ目全体をも指す。また、アンコウ科の中でも特に食用とするものだけを指す場合もある[注 1]。※本項は、古来の日本語でいう「あんこう」と、分類上の「アンコウ科」について解説する。
「アンコウ科」と結果的同義と言える英語としては goosefish と monkfish があり、日本語「アンコウ」の第1義とも同義と言える。英語には anglerfish という語もあるが、こちらはより広く「アンコウ目」および日本語最広義の「アンコウ」と同義と言える。
分類
門:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
綱:条鰭綱 Actinopterygii
目:アンコウ目 Lophiiformes
科:アンコウ科 Lophiidae
属:アンコウ属 Lophiomus
T. N. Gill, 1883
種:アンコウ(クツアンコウ)
L. setigerus
学名
Lophiomus setigerus
Vahl, 1797
和名
アンコウ(クツアンコウ)
英名
Blackmouth angler
アンコウ類はタラ類の近縁にあたる[2]。アンコウ目は16科300種ほどであるが漁業資源となるのはアンコウ科に属するものだけである[3]。アンコウ科には25種ほどが含まれ、すべてが海水魚で、そのほとんどが深海魚である。以下は主に食用にされるアンコウ類。
キアンコウ(ホンアンコウ) Lophius litulon
メスは尾びれの根元までの体長 1.0mから1.5m程。オスは50cm前後太平洋北西部(日本、朝鮮半島、東シナ海)の水深500m程までの深海に生息。なお、一般にはキアンコウの別称として「アンコウ」あるいは「ホンアンコウ」と呼ばれることがある[4]。
アンコウ(クツアンコウ) Lophiomus setigerus
全長40cm前後。インド洋、太平洋の全域の水深500m程までの深海に生息。キアンコウの口中は白っぽいのに対して、クツアンコウの口中は黒地に黄白色の水玉模様という特徴がある[4][5]。
ヨーロッパで主に食べられるアンコウはアングラー、北アメリカで食べられるアンコウは、アメリカンアングラーと呼ばれ、いずれもキアンコウと同じキアンコウ属 ( Lophius ) に含まれる種である。 日本では、キアンコウ(ホンアンコウ)とアンコウ(クツアンコウ)が主な食用の種である。両種は別の属に分類されているが、外見は良く似ている。そのため、一般に市場では区別されていない[4][5]。外見的な特徴は頭部が大きく幅が広いこと。体は暗褐色から黒色で、やわらかく平たい。 北極海、太平洋、インド洋、大西洋、地中海に生息する。 アンコウは水深30m-500mの砂泥状の海底に生息する[5]。手足のように変形したヒレで海底を移動する。このことから、アンコウ目の魚類全体に対して底生生活のイメージが持たれているが、アンコウ目のうちチョウチンアンコウなどは深海域の150m-2500mの中層域に生息し[6]、ハナオコゼのように表層に分布するものもある[6]。「アンコウ目」も参照 擬餌状体という誘引突起による待ち伏せ型の摂餌法をとる魚である[5]。肉食性で、口が大きく、歯が発達している。海底に潜んで他の魚を襲うのに適するため、口はやや上を向いている。頭には2本のアンテナ状の突起があり、長い方には皮がついている。アンコウは泳ぎが下手なため、泳ぎの上手な魚を追い回しても逃げられてしまう。そこで、海底の砂に潜り、その突起の皮を水面で揺らし、これをエサだと思って寄ってきた魚を、丸呑みにして捕食する。突起の皮は擬餌針のような働きをする。 アンコウは主に小魚やプランクトンを捕食するが、種によっては小さなサメ、スルメイカ、カレイ、蟹、ウニ、貝などを捕食するものもある。さらに、たまに水面に出て海鳥を襲うこともあり、食べるために解体したら胃の中にカモメやウミガラス、ペンギンなどが入っていたという報告もある。 体長は大きなもので2m近く、重さも60kg近い種(ニシアンコウ)もある。 アンコウ目の魚類には雌雄差がある[7]。アンコウのメスはオスよりも早く成長し体が大きく寿命も長い[8]。チョウチンアンコウ科に属するチョウチンアンコウではメスの体長が60cm程度なのに対してオスの体長は4cmに満たない。ただ、アンコウ科に属するアンコウは雌雄ともに大きくなる[6](東シナ海のキアンコウのオスは8歳にもなると全長55cm・体重2kgにも達する[8])。また、アンコウ目のうちヒレナガチョウチンアンコウ科、ミツクリエナガチョウチンアンコウ科、オニアンコウ科など一部ではオスがメスに寄生する習性を持つ[6]。なおキアンコウなどアンコウ科に属する種はそのような習性は見られない[9][6](ちなみにチョウチンアンコウ科に属するチョウチンアンコウもメスに寄生しない[6])。また産卵時期などにオスのキアンコウがメスに捕食されるケースがある。 名古屋港水族館でキアンコウの産卵シーン撮影が成功している[10]。 「あんこう」の語源については「あんぐり」の語に由来するとの説や「赤魚」の意味であるとする説など諸説ある[11]。岩穴にじっとしている様子を「安居」と称したとも、「顎」「暗愚」が転訛したなどととも言われる。ただ、『大和本草』に「國俗鮟鱇ト称ス未見出處恐可為妄称」とあり、江戸時代より不明である。 漢字表記はその音に「安康」のそれぞれの字に魚偏を付けた字(鮟・鱇)を当てたものである[11]。「鮟」は古く中国でナマズを意味する「?」の異体字「?[魚(日/女)]」の誤字として見られる。一方の「鱇」は日本で形声で生み出された国字とされている[12]。漢語では「華臍魚」「綬魚」「琵琶魚」「老婆魚」などというが、現代中国語では日本語を輸入し「鮟鱇」「鮟鱇魚」と呼ぶ。 「あんこう」が初めて文献に登場するのは室町時代で、文明以前成立の『精進魚類物語』においてである。『精進魚類物語』は擬人化させた魚鳥を戦わせる『平家物語』のパロディーで、作中に「あむかうの彌太郎」が登場する。 慶長年間成立の『日葡辞書』に「Anc? l, ang?」とあり、当時「あんこう」「あんごう」どちらの読み方も存在した。 『文明本節用集』に「有足魚也 心気良薬」、『日葡辞書』にも「川魚の一種で、足のある魚」とあることから、当時はサンショウウオを意味したとする説がある。現在でも兵庫県や岡山県の一部でオオサンショウウオを「あんこう」と呼ぶ。更に房州弁では「あんごう」はヒキガエルを指す言葉として残っている。 日本の場合、いくつかの産地があり、底曳網 茨城県では、特に、ひたちなか市の那珂湊漁港および、日立市の久慈浜漁港、北茨城市の平潟は、底曳網漁が盛んなため(大量の他魚種と共に混獲されるため)、水揚げ量が多い。(※主語不明)アンコウの水揚げ量は、昭和30年代(1955-1964年中)には約749トンという記録が残っているが、2000年代は数十トン程度である。アンコウの水揚げ量は、比較的短い周期で局地的な増減があり、2000年代の茨城県内の水揚げ量は増加傾向にある。また、2000年代には日本各地で漁獲されるようになり、2010年代においては下関市が水揚げ量日本一とされる。東日本では青森県の水揚げ量が一番多い。その青森県内で2番目の水揚げ量を誇る風間浦村[注 2]は、生きたままの漁獲が常時可能という稀な地域特性を活かし、2010年(平成22年)に[13]ブランド「風間浦鮟鱇」を立ち上げて市場の開拓に成功した[15]。延縄漁と刺網漁のいずれかで漁獲した良質の生きたキアンコウを活け締めにし、最新の保冷技術で高い鮮度を保ったまま全国に出荷するというものである[15][13]。なお、アンコウの地域団体商標登録はこれが史上初であった[15](2014年登録)。風間浦はアンコウを村外に出荷するだけでなく、12月?翌年3月頃を「風間浦鮟鱇まつり」として下風呂温泉への誘客にも活用している[16]。 山口県の下関港(下関市)はアンコウ水揚げ量が628トン(2016年)と全国最多(2位は島根県浜田市の浜田港で、175トン)。主に関西地方へ出荷され、地元ではフグほどに食べる習慣はなかったが[17]、2003年に「下関漁港沖合底びき網漁業ブランド化協議会」を設立して、ブランド化に乗り出した。 下関市、風間浦村、北茨城市、日立市、宮城県加美町、山形県鶴岡市、石川県珠洲市などは2014年以降「全国あんこうサミット」を開いている[18]。
アングラー(ニシアンコウ) Lophius piscatorius
体長2m、体重60kg近くになる。大西洋東岸(バレンツ海西南部からジブラルタル海峡まで)、地中海、黒海の水深1000mまでの深海に分布。
アメリカンアングラー(アメリカアンコウ) Lophius americanus
全長1.2m、体重20kg。大西洋西岸(カナダ、ケベック州から米国フロリダ州まで)の水深100mまでの海底に分布。
特徴
分布
生態
語源
利用
漁獲肝とともに市場で売られるニシアンコウ/ノルウェーのベルゲンの魚市場にて。