アレルギー性紫斑病(アレルギーせいしはんびょう)とは、アレルギー性機序により血管が障害を受け、四肢末梢の紫斑を主としたさまざまな症状を呈する疾患である。好発年齢は4 - 7歳であり、男女差はみられない。別名として、「アナフィラクトイド紫斑病」「血管性紫斑病」「IgA血管炎」「ヘノッホ・シェーンライン(Henoch-Schonlein)紫斑病」等がある。目次 詳細な原因は不明ながら、種々のウイルス感染症や細菌感染症に続発することが多い。特に、A群β溶血性連鎖球菌(GAS)感染症に続発するものはよく知られており、上気道感染が先行することがある。また、胆石[1]、薬剤や食物などとの関連が示唆されることもある。 下肢から臀部を中心に、左右対称性に特有の紫斑が出現する。血小板減少性紫斑病とは異なり、若干膨隆して触知可能な紫斑(palpable purpura)が特徴的である。皮疹は新旧が混在し、色調は赤色調から青紫、形状も点状から不整形な紫斑と多様である。 血管壁が脆弱となるために、機械的刺激を受けた部分で小血管が破綻し、皮下に出血することで紫斑が出現する。このため機械的刺激を受けやすい四肢末梢や、関節付近の皮膚に多く紫斑ができ、体幹や顔面には少ない。血圧計のマンシェットなどで静脈の還流を阻害(駆血)すると、駆血した部分より末梢に多数の紫斑が出現する(ルンペル・レーデ試験)。 腸管の血管透過性亢進のために、腸管壁が浮腫を来すことが腹痛の主な原因と考えられる。時に激痛であり、紫斑が出現する前に腹痛が出現した場合など、虫垂炎を疑われる場合もある。また、腸重積を合併する例もときに見られる。 血管透過性の亢進のために、局所的に細胞外液の量が増加し、浮腫(むくみ)を来たす。このような局所的な浮腫は、血管性浮腫あるいはクインケの浮腫[2]とも呼ばれる(クインケの浮腫の原因は、アレルギー性紫斑病に限らない)。 紫斑病性腎炎は20?60%に合併するとされる。このため、アレルギー性紫斑病では定期的に尿検査を行う必要がある。血尿単独では重大な合併症とはならないが、蛋白尿が持続する例、高血圧となる例などでは腎炎としての治療が必要となる。腎の病理組織所見は、IgA腎症とほぼ同じであり、アレルギー性紫斑病自体をIgA腎症と同一スペクトラムの疾患と考える意見や、IgA腎症をアレルギー性紫斑病の症状が腎に限局された症例と考える意見もある。 下肢、特に膝の関節痛がしばしばみられる。しかし、関節炎とは異なり、関節が腫脹することは少ない。機能障害や関節の変形は起こらない。 紫斑が出現する他の疾患、すなわち特発性血小板減少性紫斑病、血友病、白血病などの鑑別が必要となる。また、腹痛が先行する例では虫垂炎、腸重積などの鑑別が必要である。 おおむね正常であることがこの疾患の特徴である。すなわち、血小板減少はなく(白血病、血小板減少性紫斑病との鑑別)、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長も示さない(血友病との鑑別)。出血時間は正常。毛細血管抵抗試験(ルンペル・レーデ試験)陽性。凝固第XIII因子の活性低下を認めることがあるが、一般的な検査項目ではない。また、A群β溶血性連鎖球菌感染症後では、抗ストレプトリシンO(ASLO)抗体、抗ストレプトキナーゼ(ASK)抗体の上昇を認める。 しばしば、肉眼的血尿を伴うが、蛋白尿を伴うことは比較的少ない。ミオグロビン尿は認めない。 腹痛を伴う例、腹痛が先行する例では重要な検査である。虫垂の粘膜肥厚・腫脹(虫垂炎)がないことを確認する。腸管の浮腫を認めることが多く、ときに腸重積、腸閉塞を合併しているため、こちらの検索も重要である。
1 原因
2 病態生理
3 主要徴候
3.1 発疹
3.2 腹痛
3.3 浮腫
3.4 腎炎
3.5 関節痛
4 検査
4.1 血液所見
4.2 尿所見
4.3 腹部超音波所見
4.4 細菌検査
5 治療
6 脚注
7 関連項目
8 外部リンク
原因
病態生理の検出などが報告されており、発症にIgAの免疫複合体が関与していることが疑われる。組織学的には糸球体血管壁にIgA、補体C3の沈着、皮膚毛細血管では好中球浸潤が見られ、紫斑部位では好中球破砕性血管炎が特徴的である。以上のことから、先行感染や食物、薬剤などに対して異常な免疫応答によりIgA抗体の産生が亢進し、IgA免疫複合体を形成したのち、この免疫複合体が血管壁に付着し、局所でのサイトカイン等の産生が増加した結果、血管透過性の亢進や血管壁の脆弱化を伴う血管炎が起こり、紫斑、浮腫などを来たすと考えられている。
主要徴候
発疹
腹痛
浮腫
腎炎
関節痛
検査
血液所見
尿所見
腹部超音波所見
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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