『アレクサンドロス東征記』(Anabasis Alexandri、ギリシア語: ?λεξ?νδρου ?ν?βασι? Alexandrou anabasis)は、2世紀にアッリアノスにより書かれた、アレクサンドロス3世(アレクサンドロス大王)の東征の記録である。
ギリシャ語 anabasis
は、海辺から内陸までの遠征を指すので(これに対し katabasis は「内陸から海辺への旅」を意味する)、原題の字義通りの意味は『アレクサンドロスの内陸への遠征』である。著者アッリアノスは、アレクサンドロス3世の軍の指揮官で彼の後継者の一人であるプトレマイオス1世の書いたアレクサンドロス3世の伝記『アレクサンドロス大王伝』などの資料をもとに本書を記した。本書は、アレクサンドロス3世の遠征に関して現存する数少ない完全な報告書の一つであり、アレクサンドロス3世に関する評伝の中で最も重要なものと評されている。ただし、本書は軍事的記述を中心とする歴史書であり、アレクサンドロスの私生活やギリシャの政治における彼の役割などに関してはほとんど記載されていない。
構成Alexandri anabasis(1575年)
全7巻から成るが、ほとんどの写本で、第8巻・補巻・別巻といった位置付けで『インド誌』(希: Ινδικ? ξυγγραφ?)が付属されている[1]。
第1巻 - 前336年秋-前333年春
序言・史料
アレクサンドロス3世の即位(前336年)。コリントス同盟の盟主権継承。
北方遠征
トリバッロイ人制圧。イストロス川(ドナウ川)を越えてゲタイ人を追う。
イリュリア諸族の蜂起。ペッリオン砦の戦闘。
テーバイの蜂起に対する南下と鎮圧。アテナイ使節による対応工作。
マケドニアの首都ペッラに一時帰還。旧都アイガイでオリュンピア競技祭を開催。
東征開始(前334年)。ヘッレスポントス(ダーダネルス海峡)越えとトロイア詣で。
(第二序文 - 『東征記』執筆の動機)
グラニコス河畔の戦い
サルディス占領。トロアス地方制圧。エペソス解放。
ミレトス攻略戦
ハリカルナッソス攻略戦
東征一年目の越冬。ゴルディオンでの全軍再集結。
第2巻 - 前333年春-前332年秋
メムノンおよびその後継者指揮のペルシア艦隊によるエーゲ海奪回作戦。
「ゴルディアスの結び目」に関するエピソード。
キリキア門通過、タルソスへ。
イッソス攻略戦。逃走するダレイオス3世を追ってダマスコス占領。
シリア、ポイニキアへ。
テュロス包囲戦
ガザ攻略戦
第3巻 - 前332年秋-前329年夏
エジプト無血征服。アレクサンドレイア(アレクサンドリア)市の建設に着手。
エーゲ海におけるペルシア艦隊制圧完了の報告。
シリア、ポイニキアへ回帰。
ガウガメラの戦い
バビュロン、スーサを占領。
ペルシス門通過、ペルセポリス占領、王宮焼き払い。
エクバタナへ進出。ダレイオス3世の横死。
タプリア、マルディア地方(エルブルス山中)制圧。
アレイア地方、ドランギアナ地方へ侵攻。
ピロタスの陰謀と処刑。パルメニオンの暗殺。
カウカソス山(ヒンドゥークシュ山脈)越え。
バクトリア、ソグディアナ侵攻。オクソス川(アムダリヤ川)越え。ベッソスの引き渡し。
ヤクサルテス川(シルダリヤ川)に関する考察。
第4巻 - 前329年夏-前326年春
スキュタイ使者との交渉。
ヤクサルテス川(シルダリヤ川)河畔に、アレクサンドレイア・エスカテ(最果てのアレクサンドリア)建設。
ソグディアナ人・バクトリア人の連帯蜂起。マラカンダへ援軍送る。
ヤクサルテス川の戦い
ザリアスパでの冬営。ベッソス処刑。クレイトスを刺殺。
カッリステネスと跪拝礼。
スキュタイとコラスミアからの使者。
オクソス川(アムダリヤ川)を越え、ソグディアナ再侵攻。スピタメネスの反攻と死。