アルデヒドデヒドロゲナーゼ
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アルデヒドデヒドロゲナーゼ
NAD+の空間充填モデル活性部位に入れたヒトALDH2[1]
識別子
EC番号1.2.1.3
CAS登録番号9028-86-8
データベース
IntEnzIntEnz view
BRENDABRENDA entry
ExPASyNiceZyme view
KEGGKEGG entry
MetaCycmetabolic pathway
PRIAMprofile
PDB構造RCSB PDB PDBj PDBe PDBsum
遺伝子オントロジーAmiGO / QuickGO

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アルデヒドデヒドロゲナーゼ (アルデヒド脱水素酵素、Aldehyde dehydrogenase, ALDH; EC 1.2.1.3)はアルデヒドからカルボン酸への酸化反応触媒する酵素群およびそれをコードする遺伝子群である[2][3]。生物一般に存在し、基質である有害なアルデヒドを代謝することで多くの生理的機能を持つ[3][4]

現在までにヒトゲノム中には19個のALDH遺伝子が存在することが知られており、ヒトにおけるALDH遺伝子の欠損はアルコール(エタノール)の摂取によるフラッシング反応や、シェーグレン・ラルソン症候群(英語版)などの先天性異常を引き起こすこと、様々な疾患のリスクを増減させることが知られている。
酵素活性

アルデヒドデヒドロゲナーゼとして触媒する化学反応は以下のとおりである。

R − CHO + NAD ( P ) + + H 2 O ⟶ R − COOH + NAD ( P ) H + H + {\displaystyle {\ce {R-CHO + NAD(P)+ + H2O -> R-COOH + NAD(P)H + H+}}}

この酵素反応は以下のアシル化と脱アシル化の2つのステップに分けられる[5]
アシル化
活性部位のシステインがアルデヒドのカルボニル炭素に求核攻撃し、チオヘミアセタール中間体を形成する。次いで、水素化物イオンがアルデヒドからNAD+またはNADP+のニコチンアミド環のC4原子に移動し、チオヘミアセタールがチオエステル中間体へ遷移する。
脱アシル化
活性化された水分子によりチオエステル加水分解され、カルボン酸が生成される。ALDHのアルデヒドデの酸化反応における触媒作用機構
構造ヒトALDH3A1の活性部位

ホモ四量体またはホモ二量体の構造をとる[6]

アルデヒドデヒドロゲナーゼ反応において、アルデヒドはALDHの表面から突出したチャネル部分から活性部位へ入り、補因子であるNAD(P)+と反応して酸化される[7]。そのため、このチャネル部分の大きさや形が基質となる物質の選択に影響を与えていると考えられており、実際に脊椎動物のALDH1はレチナールを、ALDH2はアセトアルデヒドを主な基質とする[8]。活性部位はロスマンフォールドを含んでおり、それを構成するシステインとグルタミン酸が補因子と直接結合している[5][7]
生理的機能

内因性のアルデヒドは主にアミノ酸炭水化物脂肪酸などの代謝によって生産される[3]。外因性のアルデヒドは多くの薬や環境中の物質が生体内で変換され、アルデヒドとなる[3]。アルデヒドは一般的に活性の高い物質であり、生体にとって有害となるため、ALDHは多くの場合有害なアルデヒドを酸化により効果的に無毒化する役割を担っている[3]
その他の酵素活性および生理的機能

また、上述のNAD(P)+依存的なアルデヒド酸化反応だけでなく、ALDHファミリーに属する酵素はそれぞれ様々な機能を持つことがわかっている[3]。酵素としてエステルの加水分解反応や、硝酸還元反応を触媒するものもある[3]。さらに酵素としての働き以外にもアンドロゲンアセトアミノフェンなどの内因性および外因性の化学物質と結合能を持つものが含まれている。さらに、NADPH、NADHの産生によって細胞内の酸化還元バランスの維持に寄与していることも知られている[3]
進化と分類

ALDHは細菌から菌類植物動物まで生物一般に広く保存されている[3]。これまでに発見されているALDHはそのアミノ酸配列から24のファミリーに分類され、それぞれ属するファミリーに応じた名前がつけられている[9]

チンパンジーオランウータンのゲノムには18種類のALDH遺伝子が含まれており、それぞれヒトの19種類のALDH遺伝子と対応しているが、それよりも遠いマカクコモンマーモセットはそれぞれ20、16種類のALDHを持っている[10]。ヒトのALDH遺伝子のオルソログマウスラットでも保存されているが、げっ歯類ではALDH1A1、ALDH3B2の相同遺伝子がそれぞれ遺伝子重複を起こしており、全部で21種類のALDH遺伝子が存在する[10]ウシキンカチョウニワトリゼブラフィッシュのゲノムにおいてはヒトに存在するALDH遺伝子がそれぞれいくつか失われており、またいくつかは遺伝子重複が起こっている[10]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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