この項目では、ダニエル・キイスの小説およびそれを原作とした派生作品について説明しています。
2002年の日本のテレビドラマについては「アルジャーノンに花束を (2002年のテレビドラマ)」をご覧ください。
2015年の日本のテレビドラマについては「アルジャーノンに花束を (2015年のテレビドラマ)」をご覧ください。
アルジャーノンに花束を
Flowers for Algernon
著者ダニエル・キイス
訳者稲葉由紀(中編版)
小尾芙佐(長編版)
発行日中編版1959年4月、1961年2月(日本語訳)
長編版1966年3月、1978年(日本語訳)
発行元Harcourt, Brace & World
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『アルジャーノンに花束を』(アルジャーノンにはなたばを、Flowers for Algernon)は、アメリカ合衆国の作家ダニエル・キイスによるSF小説。1959年に中編小説[注釈 1]として発表され、翌年ヒューゴー賞短編小説部門を受賞[1]。1966年に長編小説として改作されて発表され、翌年ネビュラ賞を受賞した[2][3]。 それまでのSF小説が宇宙や未来社会などを舞台とした作品であったのに対して、本作は知能指数を高める手術とそれに付随する事柄という限定した範囲を前提にSFとして成立させている[4]。ジュディス・メリルは、本作をSFの多様性をあらわす作品のひとつとして位置づけている[4]。 中編版は、日本のSFファンがオールタイム・ベストを選ぶ企画で海外短編SFランキングの上位に選出されている。S-Fマガジンが調査したSF小説のオールタイム・ベストにおける海外短編部門での順位は次の通りである。 短編『エルモにおまかせ』を発表後、次作のアイディアを考えていたダニエル・キイスは、自身がブルックリンカレッジ在学中に書きなぐっていたメモを見つけ、そこから創作の構想を膨らませていった[9][10]。 その学生時代のメモには、「ぼくの教養は、ぼくとぼくの愛するひとたち――ぼくの両親――のあいだに楔を打ちこむ」「もし人間の知能を人工的に高めることができたら、いったいどういうことになるか」と書き留められていた[9][10]。 小説を書き上げると、まず友人フィル・クラス(SF作家・ウィリアム・テン)に見せ、「これはまちがいなく古典になる」と言われた。その言葉に自信を得て、『ギャラクシイ』誌に持っていったが手直しを迫られ、暗い結末をハッピーエンドに書き変えれば掲載すると言われてしまう。友人フィルは、結末は変えるなとキイスに強く忠言した。そのままの作品を『ファンタジイ・アンド・サイエンス・フィクション』が受け入れ、1959年4月号に掲載された[3]。 ドラマ化や映画化の話が持ち上がり成功をおさめたものの、キイスの頭には作品の主人公チャーリーがたえず顔を出し、もっと書いてと訴えていた。キイスは「彼の心と過去を深く探っていくうちに、彼の感情の発達を形成していくさまざまな経験を理解する必要がある」と長編を書く必要性を感じた[3]。 この長編もまたハッピーエンドを求める編集者に拒絶され、別の出版社からも拒絶された。しかし、その後に、ハーコート・ブレイス&ワールド社 主人公・チャーリイ・ゴードン自身の視点による一人称で書かれており、主に「経過報告」として綴られる。序盤は幼児が書いたように誤綴りだらけで文法的にも破綻が多く、ごく簡単な言葉や単純な視点でのみ、彼の周囲の事柄が描かれている。やがて主人公の知能の上昇に伴い、文章のスタイルは高度で複雑なものへと変わっていき、思考の対象もより抽象的で複雑な内面の描写へと変化していく。 (長編版に準ずる) 知的障害を持つ青年チャーリイは、かしこくなって、周りの友達と同じになりたいと願っていた。他人を疑うことを知らず、周囲に笑顔をふりまき、誰にでも親切であろうとする、大きな体に小さな子供の心を持った優しい性格の青年だった。 彼は叔父の知り合いが営むパン屋で働くかたわら、知的障害者専門の学習クラスに通っていた。ある日、クラスの担任である大学教授・アリスから、開発されたばかりの脳手術を受けるよう勧められる。先に動物実験で対象となったハツカネズミの「アルジャーノン」は、驚くべき記憶・思考力を発揮し、チャーリイと難関の迷路実験で対決し、彼に勝ってしまう。彼は手術を受けることを快諾し、この手術の人間に対する臨床試験の被験者第1号に選ばれたのだった。 手術は成功し、チャーリイのIQは68から徐々に上昇し、数か月でIQ185の知能を持つ天才となった。チャーリイは大学で学生に混じって勉強することを許され、知識を得る喜び・難しい問題を考える楽しみを満たしていく。だが、頭が良くなるにつれ、これまで友達だと信じていた仕事仲間にだまされいじめられていたこと、自分の知能の低さが理由で母親に捨てられたことなど、知りたくもない事実を理解するようになる。 また、高い知能に反してチャーリイの感情は幼いままだった。突然に急成長を果たした天才的な知能とのバランスが取れず、妥協を知らないまま正義感を振り回し、自尊心が高まり、知らず知らず他人を見下すようになっていく。周囲の人間が離れていく中で、チャーリイは手術前には抱いたことも無い孤独感を抱くのだった。さらに、忘れていた記憶の未整理な奔流もチャーリイを苦悩の日々へと追い込んでいく。 そんなある日、自分より先に脳手術を受け、彼が世話をしていたアルジャーノンに異変が起こる。チャーリイは自分でアルジャーノンの異変について調査を始め、手術は一時的に知能を発達させるものの、性格の発達がそれに追いつかず社会性が損なわれること、そしてピークに達した知能は、やがて失われ元よりも下降してしまうという欠陥を突き止める。彼は失われ行く知能の中で、退行を引き止める手段を模索するが、知能の退行を止めることはできず、チャーリイは元の知能の知的障害者に戻ってしまう。自身のゆく末と、知的障害者の立場を知ってしまったチャーリイは、自らの意思で障害者収容施設へと向かう。 彼は経過報告日誌の最後に、正気を失ったまま寿命が尽きてしまったアルジャーノンの死を悼み、これを読むであろう大学教授に向けたメッセージ(「ついしん」)として、「どうかついでがあったら、うらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください」と締め括る。 長編版に準ずる。フェイ・リルマンやチャーリイの家族など、一部人物は長編版のみの登場となる。
概要
1989年 5位[5]
1998年 3位[6]
2006年 4位[7]
2014年 5位[8]
作品背景・発表経過
作品内容
形式・文体
あらすじ
登場人物
チャーリイ・ゴードン(Charlie Gordon)
主人公。32歳だが、知能は6歳児並みの知的障害者。母・ローズとの確執が元で自分の知能にコンプレックスを抱いており、頭が良くなりたいと強く願っている。脳手術を受けて天才となるが、精神は幼いままでバランスが取れず苦悩することとなる。
アルジャーノン(Algernon)
チャーリイの前に同じ脳手術を受け、天才的な知能を得たハツカネズミ。教授たちの扱いに腹を立てたチャーリイとともに研究室から逃亡するが、手術の副作用で狂暴化し、死亡する。
アリス・キニアン(Alice Kinnian)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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