アルコール依存症
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アルコール依存症

『アルコール王とその宰相』(1820年)。横に「貧困、悲惨、犯罪、死」とあり、「宰相」は死神
概要
診療科精神医学, 医学毒性学[*], 心理学, 職業リハビリテーション, 麻薬学[*]
分類および外部参照情報
ICD-10F10.2
ICD-9-CM303
MedlinePlusalcoholism
MeSHD000437
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世界の疾病負荷(WHO, 2019年)[1]順位疾病DALYs (万)DALYs(%)DALYs
(10万人当たり)
1新生児疾患20,182.18.02,618
2虚血性心疾患18,084.77.12,346
3脳卒中13,942.95.51,809
4下気道感染症10,565.24.21,371
5下痢性疾患7,931.13.11,029
6交通事故7,911.63.11,026
7COPD7,398.12.9960
8糖尿病7,041.12.8913
9結核6,602.42.6857
10先天異常5,179.72.0672
11背中と首の痛み4,653.21.8604
12うつ病性障害4,635.91.8601
13肝硬変4,279.81.7555
14気管、気管支、肺がん4,137.81.6537
15腎臓病4,057.11.6526
16HIV / AIDS4,014.71.6521
17その他の難聴3,947.71.6512
18墜死3,821.61.5496
19マラリア3,339.81.3433
20裸眼の屈折異常3,198.11.3415

アルコール依存症(アルコールいそんしょう、アルコールいぞんしょう、: Alcoholism)、アルコール使用障害(Alcohol use disorder、AUD)とは、主に飲酒によるアルコール摂取で引き起こされる薬物依存症の一種。飲酒によって得られる精神的、肉体的な薬理作用に強く囚われ、自らの意思で飲酒行動をコントロールできなくなり、強迫的に飲酒行為を繰り返す精神障害である[2][3]。以前は慢性アルコール中毒(アル中)、慢性酒精中毒などと呼ばれていたこともある[4]が、振戦譫妄のような中毒症状が出てから診断が付いたのでは手遅れであり、かといって中毒症状が出ていない段階で「アルコール中毒」と診断が付いたのでは患者の反感を買う、という理由で「アルコール依存症」という名称に変更されたという歴史がある[5]。人体に対するアルコールの影響について最初に体系化されたのは1849年で、スウェーデンの医師マグヌス・フス(スウェーデン語版)による。

症状は精神的依存身体的依存から成り立っており、飲酒が自分の意志でコントロールできなくなる症状を精神的依存、振戦せん妄などの退薬症状(アルコール離脱症候群、リバウンドともいう)を身体的依存と言う[4]。患者は、アルコールによって自らの身体を壊してしまうのを始め、家族に迷惑をかけたり、様々な事件や事故・問題を引き起こしたりして社会的・人間的信用を失ったりすることがある(アルコール乱用[3][6]

かつては、このような状態になってしまうのは本人の意志が弱く、道徳観念や人間性が欠けているからだとの考え方で済まされて納得されてきていたが、最近では社会的な必要性からも医学のカバーする範囲がより拡大されていくことに伴って、医学的見地から精神障害の一つとして治療を促す対象と考えられている[4]

世界保健機関(WHO)は、アルコール乱用・依存の未治療率は78.1%であると推定している(2004年[7])。精神疾患の中でも罹患率が高く、各人の性格や意志にかかわらず誰でもかかる可能性がある病気であるとも言える。日本の飲酒人口は6,000万人程度と言われているが、このうちアルコール依存症の患者は230万人程度であると言われている。なお、この230万人という人数はWHOの算出方法により割り出されたものである。

治療法や支援法については「アルコール依存症#管理」を参照。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
症状「薬物依存症#診断基準」も参照

疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)の診断基準においては、渇望、セルフコントロール喪失、離脱症状耐性、飲酒中心の生活が挙げられている[8]
目が覚めている間、常にアルコールに対する強い渇望感が生じる。
強迫的飲酒が進んでくると、常にアルコールに酔った状態・体内にアルコールがある状態を求め、調子が出ないと思ったりして、目が覚めている間、飲んではいけない時(勤務中や医者から止められている時など)であろうとずっと飲酒を続けるという「連続飲酒発作」がしばしば起こることがある[8]。会社員など、昼間に人目のつく場所で飲酒ができない場合、トイレなどで隠れて飲酒をする例がある。さらに症状が進むと身体的限界が来るまで常に「連続飲酒」を続けるようになり、体がアルコールを受け付けなくなるとしばらく断酒し、回復するとまた連続飲酒を続けるというパターンを繰り返す「山型飲酒サイクル」に移行することがある。ここまで症状が進むとかなりの重度である。
飲酒を自分の意志でコントロールできない。
”人がアルコールを含む飲み物を切望し、その飲酒を制御することができない慢性疾患”(ICD-9[9])「強迫的飲酒」とは以下のような状態である。少量のアルコールの摂取によっても脳が麻痺してしまい、飲み始めたら、その後の飲酒の制御がほぼ不可能となるような状態である[8]。アルコール依存症の人も、適量のアルコールで済ませておこうとか、今日は飲まずにいようかと考えていることは多い。しかし、飲み始めてしまうとアルコールの作用の方を選んでしまう[8]。また、アルコールを長期的に飲まないことの利益は多いが、アルコールの影響で誤った思考や判断となったり、目先の快感の方を選択してしまう。このように繰り返されることで、状況が悪化し症状も進行するとは思っていないため、必要性を見出せず、明確な禁酒の意志を持つことができず、アルコールによる快感を選択してしまう。そして、飲み始めたら酩酊するまで飲んでしまう[8]
飲酒で様々なトラブルを起こし後で激しく後悔するも、それを忘れようとまた飲酒を続ける。
”社会的または職業的機能に深刻な障害を引き起こす、飲酒パターンを特徴とする障害”(ICD-9[9])飲酒量が極端に増えると、やがて自分の体を壊したり(内臓疾患など)、社会的・経済的問題を引き起こしたり、ドメスティック・バイオレンスなど家族とのトラブルを起こしたりするようになる。それでさらにストレスを感じたり、激しく後悔したりするものの、その精神的苦痛を和らげようとさらに飲酒を繰り返す。このように自分にとっての損失が強くなっているにもかかわらず飲酒し続ける行動を「への抵抗」と呼ぶ。振戦せん妄 (DT)
離脱症状(退薬・禁断症状)が出る。
アルコール摂取を中断した際、様々な症状が生じる。軽いものであれば、頭痛、不眠、イライラ感、発汗、手指や全身の震え(振戦)、眩暈、吐き気などがあるが、重度になってくると「誰かに狙われている」といった妄想や振戦せん妄、痙攣発作(アルコール誘発性てんかん)なども起こるようになる[8][10]


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