アルキメデスの大戦
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アルキメデスの大戦
ジャンル
架空戦記
漫画
作者三田紀房
出版社講談社
掲載誌ヤングマガジン
ヤンマガWeb
レーベルヤングマガジンKC
発表号ヤングマガジン:
2015年52号 - 2023年31号
ヤンマガWeb:
2023年7月6日 - 2023年9月21日
発表期間2015年11月21日[1] - 2023年9月21日
巻数全38巻
話数全378話
テンプレート - ノート
プロジェクト漫画映画
ポータル漫画映画

『アルキメデスの大戦』(アルキメデスのたいせん、英語: The Great War of Archimedes)は、三田紀房による日本漫画、およびそれを原作とした実写版映画。軍艦戦闘機など旧日本海軍兵器開発・製造について、当時の技術戦略と人間模様をテーマにしたフィクション作品となっている。

『ヤングマガジン』(講談社)にて2015年52号から2023年31号まで連載され[1]、2023年7月6日から同年9月21日までヤンマガWebに連載移籍され[2]、毎週木曜日更新となる。単行本3巻の帯には映画監督アニメーター庵野秀明が、6巻の帯には漫画家かわぐちかいじが、8巻の帯には漫画家の秋本治がそれぞれ推薦コメントを寄せている。

実写版映画は2019年7月に公開された[3][4]
執筆の経緯

三田によれば『ドラゴン桜』執筆以前に本作品の構想を練っていたが、諸事情でこれを断念し代案で提案したのが『ドラゴン桜』だったとのこと。その後『砂の栄冠』終了後の次作の構想を練っている中で国立霞ヶ丘競技場陸上競技場改修関連のニュースを聞き、「(改修費用の話題が出た時に)戦艦大和の建造時もこんなふうだったのだろう」という思いと共に本作品の構想を思い出し、そこからゴーサインが出たという[5]

作中に登場する軍隊用語や造船用語については、監修者のチェックが入っている。本作品のネームはこの監修作業のため、2、3話先行して作成されており、内容もコマ割りとセリフのみならずキャラまでコピー用紙に描くようにしている[注 1][5]

これらの専門用語を作中に出す理由について三田は「専門用語って、わけがわからなくても入ってるといいモノ。マンガの格が上がる。読者もそれを逐一理解しようと思ってはいないが、むしろ専門的なことをわいわい言う雰囲気にテンションが上がる感じだと思う」、「役に立たない情報をきちんと入れる手法は、マンガ業界におけるすごく大きなイノベーションだと思うんです」としている。また、この手法については野田サトルの『ゴールデンカムイ』(週刊ヤングジャンプ連載)から、大きく影響を受けたことを明かしている(野田は、北海道北広島市の出身)[注 2][5]
あらすじ

「これからの戦争は航空機が主体になり、巨大戦艦は不要になるであろう」と考えている山本五十六海軍少将は、平山忠道造船中将[注 3]が計画している無駄に大きい巨大戦艦の建造計画案ではなく、対航空機戦闘を考えた藤岡喜男の案に賛成する。一方、平山は不当に安い見積もりで、自らの巨大戦艦の建造案「大和」を新型戦艦造船会議で通したいと考えていた。平山の計画を阻止するために、山本は、元帝大生の櫂 直(かい ただし)を海軍主計少佐に抜擢する。

櫂少佐とその部下田中正二郎少尉は、特別会計監査課の課長として、平山案の見積もり金額の嘘を暴くために奔走し、その過程で日本の技術戦略にまつわる数々の矛盾に直面していくことになる。
登場人物.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この記事に雑多な内容を羅列した節があります。事項を箇条書きで列挙しただけの節は、本文として組み入れるか、または整理・除去する必要があります。(2020年8月)

※実在人物については各内部リンク先も併せて参照。
海軍
櫂 直(かい ただし)海軍
少佐→海軍中佐→海軍大佐[注 4]
本作品の主人公。元東京帝国大学数学科の学生。22歳。英語ドイツ語を含む複数の語学にも堪能な上、数学的な発想に優れた天才として周囲の期待を集めていた若者。尾崎財閥の令嬢の家庭教師をしていたが、令嬢とのスキャンダルを疑われて退学に追い込まれる。日本に嫌気が差し、アメリカに留学しようとした矢先に、平山中将の巨大戦艦建造計画を阻止するために、山本五十六から海軍に誘われる。最初は拒否したが渡米する直前に考えを変えて海軍に入省。山本より、主計少佐に任命され、海軍省経理局特別会計監査課の課長に就任。以後、日本の技術戦略に大きく関わる形で国防体系に大きな影響をおよぼす存在となっていく。数学が得意分野だが、実はその特性を生かせるあらゆる分野で卓越した実力を発揮しうる英才であり、政治的な洞察にも長け、優れた人心掌握能力で陸海のみならずあらゆる分野の俊才たちを惹き付ける人間的魅力を持つ。石原莞爾満州国建国の英雄として讃えているが東條英機の中国侵攻に対しては一貫して反対している[6]。数学専門のため合理的な考え方をしているが、自身の正義感にこだわりすぎるあまりそれに反感を抱いた人たちに裏切られることがある。東條英機は「正しければ何でも通ると思っている。そこが君の若く浅はかなところだ」[7]、丹原康介は「櫂少将は理屈一辺倒で、時々出る人の感情を無視する言動がこの人の弱みだ」[8]と評価している。海軍戦略の主軸として、戦艦に代わる距離攻撃手段としての航空機と無資源国日本にとって脅威となる通商破壊用兵器としての潜水艦の存在に目を向けるなど、当時としては破格な戦略眼の持ち主でもある。軍用機の開発と配備の陸海統合を目論み、まず、海軍の新型戦闘機競争試作に参入し、海軍航空廠の有志と共に艦上戦闘機の設計を開始。試作一号機(史実の三菱九試単座戦闘機試作二号機に近い機体)が試験飛行で失われると、試作二号機の改良に当たり、主翼接合部の剛性向上と軽量化を図るため、通し桁を用いて左右翼を一体製造する先進的な設計(史実の97式戦闘機で採用された構造)を考案し、さらに速度性向上策の一環としてプロペラ機構を恒速三翅式へ変更させるなど、より先進的な技術を盛り込み、史実に数年先んじた機体(九九式二〇ミリ機銃搭載の零戦20mmイスパノ型モーターカノン砲搭載の九六式艦上戦闘機の中間的機体)へと完成させ、三菱製戦闘機との競作に挑み、模擬空戦では源田大尉の誣告で失格させられたが、緊急手配させた空母への着艦試験で成功を収めることで、起死回生の逆転を果たす(これをきっかけに山本から懐刀として選ばれる。)。さらにドイツ側との技術情報交換の席上でドイツが研究中のガスタービンエンジン軸流式ジェットエンジン)の技術導入交渉を成功させ、正式な技術資料を用いた形での和製ジェットエンジンの開発を史実より7年以上早めたものの、それに浮かれること無くジェットエンジンの恐るべき可能性を考察し、苦労を重ねて採用にこぎつけた空技廠製戦闘機すら旧式機へと化しつつある現状と、航空先進国の戦闘機開発がすでに新たな次元へ踏み出すことによるジェットによる軍事体系の激変を確信し、もはや旧時代の兵器にも等しい巨大戦艦の建造計画を今度こそ叩き潰そうと決意を固める(しかし、艦載機のジェット化が巨大空母を必要とするところにまでは気付いていない様子である。)。後に呉の船渠拡大工事の情報で巨大戦艦建造計画の復活を察知すると、へ赴いて平山忠道中将と対決し、その言い分を聞いた上で、兵器開発は感情で進めてはならないと一蹴して平山たちの設計した大和の設計を駄作と切捨て、平山中将や小石川大尉に問われるままに航空戦が主流となる時代に必要な設計思想を盛り込んだ「世界最大最強の戦艦・大和」の具体案を示す。帰途に嶋田ら戦艦派の策謀に備えて高任中尉の策謀を回避し、山本に新型戦艦の図面を引き渡すことで戦艦派の動きを封じる策を万全なものにしたことで中佐への昇進が内定されたが、海軍省からの離職を申し出て、佳つ世と温泉旅行に出る。だが、そこで永田鉄山暗殺の知らせを受け、彼の死に乗じて愚昧な軍人たちが台頭していく情勢の行く手に熾烈で絶望的な日米戦争の未来を予感し、永田の遺志を受け継いで軍人として救国の人生を選択し、丹原康介と今後の展望について話し合うと、このままでは亡国の対米戦争が現実のものになることを知り、世界最大の工業国家であり、工業用原材料の主な輸入元でもあるアメリカとの関係冷却化を選びかねない日本の状況に一層危機感を深める。永田の死によって陸海戦闘機共同開発計画が頓挫したため、より画期的な航空戦用兵器の開発を検討しなければならなくなった時、逆に効果的な軍備体系に拘りすぎて、戦争防止というよりも開戦のための準備をしていた状況に気付き、これでは容易に戦争へ突入してしまうと考え、ならばと米国側の軍備計画を時間的にも費用的にも負担の過大なものへ誘導する罠として世界最大級の巨艦・大和の建造計画を利用しようとするが、まだ実用化にいたっていないガスタービンの採用問題で、平山と対立してしまう。しかし、平山を初めとする艦政本部の面々と対立してでも自分の考案した戦略に適した巨大戦艦・大和の建艦と運用の提案をして、海軍首脳部の支持を取り付けるが、江本を初めとする主要な造船設計者や艦政本部長の中村から協力を拒否されて孤立しかける。しかし、自分以上の天才児・桑野肇との知遇を得たことによって計画の画期的な進展の見込みを得る。中佐の階級を拝命すると同時にドイツへの一年近い出張任務を命じられ、日本大使館への暗号表輸送と新技術の導入指揮の任務を引き受け、死線をかいくぐるように任務を果たし、無事にドイツに到着。そこで同じく中佐へ昇進したシュヴァルツとの再会を果たすと同時に、稀代の梟雄となるアドルフ・ヒトラーと邂逅する。運んできた金塊で工作機械だけではなく、ガスタービンやロケットのようなハイテクエンジンや電気溶接真空管の製造技術などの日本の製造業の弱点を補うための技術導入のためにも運用しようと決意し、横井中佐と協力してシュヴァルツらのユダヤ人脈への接近を意図し、協力と引き換えに日本への亡命への協力を引き受けるとユダヤ人脈を利用した各種レアメタル資源6000トンの引渡しをシャハト経済相に提案して、取引を成功させる。正式な形でのドイツからの技術導入を進める一方、購入できない分は自ら動き回って、様々な産業技術や先端科学の研究を学び取り、膨大な最新の学術書の購入も進めることで、史実とは比較にならないほど膨大な最新技術の導入を成功させ、後に蔵相の高橋是清から「3倍の成果を上げた」と賞賛される。出発を間近に控えた状況でシュヴァルツから兄の亡命を依頼されて快諾し、監視の目を潜り抜けて亡命者たちを日本の鉄道車両に引き入れると秘密警察の追求を毅然とした姿勢で退けて日本への亡命を成功させた。帰国後は愛する女性との別離を噛み締めて仕事に邁進し、山本と語らって亡命者たちの中にいる5人の優秀な科学者や理工学者を新設の科学研究機関に迎え入れて新型軍艦建艦に必要な高度技術開発を担うよう手配させ、以後の様々な新兵器の開発速度を早める基盤を築く。高橋是清から日米戦争勃発による日本の経済的負担に関する問い合わせを受けて、史実の太平洋戦争の推移を見通すかのような正確な見通しを告げた上で、米英両国を満州の権益に巻き込んで対ソ防共の流れに引き込む形で日米の対立点を解消する策を提案するが、その直後に陸軍将校の反乱事件(二・二六事件)に巻き込まれて来襲した陸軍士官の凶弾から高橋を庇い、頭部に銃撃を受けて昏倒するも、九死に一生を得て、即日、職場に復帰し、立て続けの功績に加えてのとほうもない強運振りによって海軍省の面々から「不死身の男」として畏敬され始める。山本から戦争防止のための超技術戦艦として建造しようとした戦艦大和を日米戦争での優位のための空母機動部隊との連携によるハワイ攻略のための新型戦艦として再検討するよう命令され、自分の志が大きく捻じ曲げられたことを知るも、拒絶の道はないものと受諾し、前甲板に20インチ砲12門を搭載させた型に変更させる一方、日米戦争の開始はそのまま日本の滅亡になるとの確信から、己が命と名誉を捨ててでも日本を救う秘策として、あえて国家に対する背信行為になることを承知で、世界最先端のハイテク軍備となる誘導ロケット弾装備型の大和の技術情報を故意にアメリカ側にリークし、アメリカ側の対日開戦派に対する牽制とした上で日米相互不可侵条約と新たな軍縮条約の締結を新たな目標として見定めると、丹原康介からアメリカ側諜報関係者との接触に必要な情報を得て、尾崎家で邂逅した綾部マキコを米軍側のスパイと見抜き、アメリカに対する情報霍乱に利用しようとする。1936年3月17日に日本最初の長距離ロケット砲の実験を成功させ、建造計画中の大和をミサイル艦へ改装する許可を山本から得ると、ミサイルの将来性と発展形態を説明し、先にこれを開発することで圧倒的な優位に立てることを力説する。しかし、肝心のミサイル開発に当たって、微細な部品の量産をこなせない日本の基礎工業力の低さという最大級の壁に当たってしまい、せめてネジの規格統一だけでも進めるべく商工省の岸信介と会談し、その道筋をつけると、4月19日に横須賀航空本部で三菱の堀越と中島の小山と相談し、新型ロケットの技術をエサに新型航空機開発への参加と、工業規格改変のための合弁会社設立による部品供給体制の統合化を進める形で生産体制の効率化を承諾させ、8月から開始させることに成功する。綾部マキコをアメリカに対する情報操作の窓口として利用すべく、機密のロケット兵器の写真を餌に彼女のスパイ嫌疑を確たるものとした証拠を掴み、一気に追い詰めて、過去の恨みではなく希望ある未来のために死を覚悟した自分についてきて欲しいと口説いて味方につける。嶋田の横槍と艦政本部の非協力で呉の船渠が全て塞がって大和建造が阻害されてしまうが、そこで尾崎が横浜に完成させた第3造船船渠が開いた状態であることを知らされて横浜へ向かい、船渠の見学中に尾崎と対面すると、過去の行きがかりを捨てて深く謝罪することで尾崎の顔を立てて和解し、大和建造へと協力させる。しかし盧溝橋事件の勃発により始まった日中の軍事衝突について東条英機が戦線を拡大することを危惧する中で第二次上海事変が勃発し、陸軍に貸しを作ること無く海軍単独で事態の収拾を図ろうとするも海軍上層部の決断の遅れにより失敗。その後国民党軍の物資集積所を空爆することで撤退を成功させるが、その戦闘で坂巻を失う。だがその後に護衛戦闘機無しで行われた南京爆撃で多大な犠牲が出たことで嶋田に強硬に抗議したことから自宅謹慎の処分を受ける。そこで訪れた丹原と共に東条英機を説得すべく中国へと向かう。写真技術者として丹原および新聞記者と共に前線に向かうが、その途中で新聞を売ることしか考えず国民を戦争へとあおり立てる新聞記者たちに対しては「下衆で低俗な輩」と激しい嫌悪感を抱く。丹原と共に対面した東条から「日本によるアジア全域支配」という途方も無い野望を聞かされ「止めたいのなら私を殺せ」と銃を渡されるが「暴力ではなく論理を使う」と宣言して銃を返す。


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