アリピプラゾール
IUPAC命名法による物質名
IUPAC名
7-[4-[4-(2,3-dichlorophenyl) piperazin-1-yl] butoxy]- 3,4-dihydro- 1H-quinolin- 2-one
臨床データ
ライセンスEMA:リンク
アリピプラゾール(英語: Aripiprazole、APZ)は、非定型抗精神病薬の一つである。大塚製薬が開発した。2002年7月にメキシコで製造承認され、その後60以上の国家と地域で承認された。日本では2006年1月に商品名エビリファイ (Abilify) で承認され、同年6月に薬価基準に収載された[1]。アメリカ合衆国でのアリピプラゾール(meiji)の特許切れに伴い、後継のブレクスピプラゾール (Brexpiprazole) が商品名レキサルティ (Rexulti) で承認された[2]。 統合失調症に効能・効果がある[3]。日本では2012年に、双極性障害における躁症状の改善が追加された[1]。2013年に、うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)が追加された[1]。2016年に、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性[注 2]の効能・効果が追加された[1]。副作用は72.7%に認められ、特に多かったのは傾眠が48.9%であった[1]。なお、6歳未満と18歳以上では有効性・安全性が確立されていない[1]。2017年6月、後発医薬品が発売され当初の適応は統合失調症のみであった[4]。 日本の添付文書の警告枠では糖尿病に関する警告があり、使用上の注意において自閉スペクトラム症では漫然と長期投与しないこと。アメリカ食品医薬品局 (FDA) は2015年に、アリピプラゾールが自動調節器のように働いていると主張するためには、そのようなデータの提出が必要であると警告した[5]。2016年にFDAは、衝動制御における副作用についての警告を追加した[6]。 フェニルシクロヘキシルピペリジン (PCP) 同様のドーパミンD2受容体パーシャルアゴニスト作用を有している[1]。ARPのD2受容体結合親和性Ki値は0.34nM濃度であり[1]、PCPのKi値2.7nMよりも高い親和性を有している[7][8]。ARPはNMDA受容体の発現増加が示されており[9]、NMDA受容体アンタゴニストの影響を相殺することから[9]、NMDA受容体機能的拮抗作用を有する。高用量[注 3]では鎮痛作用と筋弛緩作用がある[1]。 先発品の添付文書に記載された用法は以下である。2021年1月現在、後発品は、すべての適応が取れていない。 2013年の厚生労働省による認知症の周辺症状へのガイドラインでは、第一選択は非薬物介入が原則であり処方時には患者・保護者に承諾を取るべきである[10]。日本医師会、日本老年医学会による高齢者向けガイドラインでは、必要最小限の使用が推奨される[11]。知的障害での暴力などの行動に対しては、世界精神医学会は環境調整を推奨しているが、副作用のある抗精神病薬が使われている例があるため、ガイドラインの整備が求められている[12]。
概要
適応
統合失調症
成人は1日6から12mgを開始用量として、1日6から24mgを維持量とする。1回または2回に分けて経口投与し、1日30mgを超えないようにする。年齢や症状に応じて適宜減量する。効果を発揮するまでに約2週間必要なため、2週間以内に増量しないことが望まれる。
双極性障害における躁症状の改善
成人は1日12から24mgを1日1回経口投与。1日量は30mgを超えないこと。
うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
SSRIやSNRIに追加して併用する。成人は1日3mgを1日1回経口投与。1日量は15mgを超えないこと。
小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
通常、開始用量は1日1mg、維持用量は1日1から15mg、1日1回経口投与する[1]。症状により適宜増減するが、増量幅は1日量で最大3mgとし、1日量は15mgを超えないこと、漫然と長期投与しないこと[1]。
ガイドライン「無駄な医療#Choosing Wisely キャンペーン」も参照
剤形および規格
錠剤(素錠): 1mg、3mg、6mg、12mg - 12mgは2007年に発売。
口腔内崩壊錠: 3mg、6mg、12mg、24mg - 2012年5月発売。
内用液0.1%(分包): 1mL、3mL、6mL、12mL - 2009年4月発売。飲みやすいようにオレンジ味である[13]。
散剤: 1%
持続性水懸筋注用: 300mg、400mg(バイアル、シリンジ)