アラワク語族
[Wikipedia|▼Menu]

アラワク語族
話される地域
カリブ海地域および南アメリカ
言語系統アラワク語族
Glottologaraw1281[1]

アラワク語族(アラワクごぞく、: Arawakan family)またはアラワク諸語(アラワクしょご、: Arawakan languages)とは、いわゆる新世界において最大の規模を誇る語族である。中南米の広域にわたって分布し、この言語群の中ではワユ語が最も大きく、ガリフナ語がこれに続く[2]。場合によってはマイプレ諸語(マイプレしょご、: Maipurean, Maipuran)という括りが用いられることもある。
分布

既に死語となったものも含めればアラワク諸語の話される地域はグアテマラベリーズホンジュラスニカラグアアンティル諸島仏領ギアナスリナムガイアナベネズエラコロンビアブラジルパラグアイアルゼンチンボリビアペルーと非常に広域にわたる[2]
歴史

アラワクという語は16世紀の探検記に現れる[3]大アンティル諸島小アンティル諸島北部などに暮らしていたタイノ族(島嶼アラワク)の祖先は紀元前後の数百年の間にオリノコ川河口からカリブ海の島々に移住したと考えられている[4]が、アラワクという集団全体の歴史的な起源や移動に関しての定説はまだ確立されていない[3]。アラワクという集団は通常地理的な観点から内陸アラワクと島嶼アラワクとに区別されるが、言語的な観点からしてもこの二者同士の差は大きい[3]

アラワク系、その中でも特にマイプレ系とされた言語に関する記録自体は18世紀後半から行われてきたものの、その大半は語彙の一覧表レベルにとどまり、個別言語について緻密な言語学的分析に基づいた研究が出るまでには1960年代を待たねばならなかった[5]。やがて1972年にはエスター・マッテソン(Esther Matteson)が17の言語からアラワク祖語(: proto-Arawakan)の再構を試みるようになる(Matteson 1972)。しかしテランス・カウフマン(英語版)はこれに対し、アラワク語族ではないアラワ語族(英語版)やハラクムブット語(英語版)を含むことでようやく同源語や再構形が成り立っている点やパレシ語(英語版)、ワユ語、ガリフナ語のデータからの引用が含まれる点、ごく一部の言語において以外は証明されていない分節音(英語版)や形態の合成による再構が行われている点、また認められていない超分節的屈折接頭辞が扱われている点を挙げ、マッテソンの研究内容を痛烈に批判している[2]。カウフマンはその一方でデイヴィッド・ペイン(David Payne)の研究については当時現存していたマイプレ諸語のほぼ全てを集めて音韻の再構を行い、分岐の道筋を追っていると紹介した上で、Payne (1990) で祖語由来と考えられる語彙に基づいた分類を行ったことは、「アラワク系の比較研究におけるきわめて大きなステップである」と評している[2]
分類

分類は諸説あり、Noble (1965) で提案されて以来語族には Arawakan、語派には Maipuran を用いることが多くの研究者によって受容されている[5]。Kaufman (1994) は、現存するアラワク諸語はマイプレ言語系(: Maipurean stock)としてすでに定着している言語も含めて、全て下位分類を見直す必要性があるのではないかとし、「マイプレ」と「アラワク」という標識の区分は当時の比較研究の段階では限界があるとしている。

ここでは Hammarstrom (2016) をベースとする。ラテン文字表記は特に脚注がない限り Hammarstrom (2016) や Lewis et al. (2015) に、日本語名は細川(1988)やカウフマン(2000)などによる。†は死語であることを表す。

西部マイプレ語派(Western Maipuran)

アムエシャ語(英語版)(Amuesha; 別名: アモエシャ語 (Amoesha[2])、Yanesha'語)

チャミクロ=モリケ諸語(Chamicuro-Morike)

チャミクロ語(Chamikuro[2], Chamicuro)

モリケ語(英語版)(Morike)[6]




中央マイプレ語派(Central Maipuran)

クステナウ語(英語版)(Custenau[5], Kustenau)

パレシ=サラヴェカ=サルマ諸語(Paresi-Saraveca-Saluma)

サラヴェカ語(英語版)(Saraveca; 別名: サラベ語 (Sarave)[2])†

サルマ語(英語版)(Saluma; 別名: サルマン語 (Saluman)[2]、Enawene-Nawe語)

パレシ語(英語版)(Paresi; 別名: Parecis語)


ヤワラピティ語(英語版)(Yawalapiti; 別名: ヤウラピティ語 (Yaulapiti)[5]

ワウラ=メイナク諸語(Waura-Mehinaku)

メイナク語(英語版)(Mehinacu[5], Mehinaku, Meinaku[7]

ワウラ語(英語版)(Waura)[7]




東部マイプレ語派(Eastern Maipuran)

パリクール語(英語版)(Palikur[2], Palikur)

マラワン語(英語版)(Marawan)†



北部マイプレ語派(Northern Maipuran)

Alto Orinoco諸語

Maipure-Avane諸語

バニバ語(英語版)(Baniva; 別名: Abane語)

マイプレ語(英語版)(Maipure)†


Pareni諸語

ヤビテロ語(英語版)(別名: ヤビテーロ語[5])†[8]

ワレケナ語(英語版)(Warekena; 別名: グアレケナ[2] (Guarequena))



アポリスタ語(英語版)[5](Apolista; 別名: ラパチュ語 (Lapachu)[6])†

Caribbean諸語

アイランド・カリブ=ガリフナ諸語(Island Carib-Garifuna)

アイランド・カリブ語(英語版)(Island Carib; 別名: カリフォナ語 (Kalhiphona)[2])†

ガリフナ語(Garifuna, Garifuna)


アラワク語(Arawak; 別名: ロコノ語 (Lokono))

グァヒロ=パラウハノ諸語(Guajiro-Paraujano)

パラウハノ語(英語版)(Paraujano; 別名: パラオハン語 (Paraujan)[5]

ワユ語(Wayuu, Wayu, Wayuu; 別名: ゴアヒロ語[5] (Goajiro)、グァヒロ語[5] (Guajiro)、ワヒロ語[2] (Wahiro))


タイノ語(Taino, Taino)†


Inland Northern Maipuran諸語

Alto Negro諸語

アナウヤ語(英語版)(Anauya)

ギナオ語(英語版)(Ginao[2], Guinau)†

バレ語(英語版)(Bare; 別名: Barawana語)

ヤバーナ語(英語版)(Yabaana[5], Yabaana; 別名: ヤバアナ語 (Yabaana)[2])†


ジャプラ=コロンビア諸語(Japura-Colombia)

カイウィシャナ語(英語版)(Kaiwishana[2], Kaishana)†


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:67 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef