アラビア語文学
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アラビア語文学(アラビアごぶんがく、アラビア語: ????? ??????、al-Adab al-?Arab? )とは、アラビア語文芸、及びそれらの作品や作家研究する学問を指す。
歴史
イスラーム以前

イスラーム以前を表すジャーヒリーヤ時代から、アラブの遊牧諸部族には多くの優れた詩人が活躍した。詩人たちは慕情、旅の苦労、名誉や事績の称賛、部族間の戦い、敵への誹謗などを題材とし、優れた詩は口承によって伝えられた。

6世紀には詩人(アル=)ムハルヒル(英語版)によりカスィーダ体(英語版)という詩形が創られて盛況となった。押韻を強調する文体であるサジュウ体(英語版)も、この時代に原型があるとされる。

のちに記録され文字となった古詩は、詩人、部族、階級などを基準にまとめられた。その中でも有名な名詩選に、七大詩人の長詩をまとめたムアッラカートやムファッダリーヤート(英語版)がある。押韻の韻律は十六種類あるとされる[1]
イスラーム以降「イスラーム文学」も参照

イスラームの広まりにより、クルアーンはアラビア語面においても優れた聖典として読まれ、さまざまな民族がアラビア語を使うようになった。また、クルアーンを正しく読解するためにバスラクーファではアラビア語の研究も行われた。正統カリフウマイヤ朝の時代を通じてアラビア語圏はペルシアエジプトにも拡大し、アフリカへと浸透する。ウマイヤ朝の時代は遊牧民時代の表現を守っていたが、アッバース朝になると都市化がすすみ、詩をはじめとして文芸のジャンルが増加した。散文の世界には諷刺的な観察眼をもつ(アル=)ジャーヒズが登場し、博物誌的な大著から『けちんぼどもの書』のような批評まで旺盛に執筆した[2]。また、コルドバのウマイヤ朝によってイベリア半島でもアラビア語の文芸が活発になり、アンダルスと呼ばれた地域ではイブン・ザイドゥーンなどが活躍した。
詩歌

アラビア語は語彙や音楽的な抑揚が韻を踏むのに適しており、早くから韻律が発達し、ジャーヒリーヤ時代からも多くを受け継いでいる。古典アラビア語詩は、数十行やときには百行を超える多数の行からなり、各行は前半と後半に分かれて対句をなす。各句は開音節と閉音節で構成され、その組み合わせで基本型が定められ、やがて応用型も生まれて発展していった。詩のジャンルには、悲歌(リサー)、諷刺詩(ヒジャー)、賞賛詩(マディーフ)、武勇詩(ハマーサ)、恋愛抒情詩(ナスィーブ)、恋愛詩(ガザル[3]、叙景詩(ワスフ)、酒楽詩(ハムリーヤート)などがある[4]

ウマイヤ朝を代表する詩人としては、メッカ生まれで恋愛詩を創造したウマル・イブン・アビー・ラビーア(英語版)のほか、慕情詩で名高い(アル=)ファラズダク(英語版)、諷刺詩人のジャリール(英語版)、キリスト教徒のアル=アフタルの三大詩人がいる[5]

アッバース朝になると、当時は世界最大級の都市だったバグダードを中心に多数の詩人が活動し、アブー・ヌワース[6]アブー・アル=アターヒヤ、(アル=)ムタナッビーなどの大詩人が現れた。こうして生みだされる膨大な詩を編纂する者もまた多く、文人(アッ=)サアーリビーは、注目すべき詩人とその詩風を『ヤティーマト・アッ=ダフル』で紹介し、詩や会話に出てくる故事や伝説を『心の果実』にまとめた。また、アブー・アル=ファラジュ・アル=イスファハーニーは詩や歌謡、音楽にまつわる大著『歌の書(英語版)』を残した。これらの文献により、10世紀までの詩や詩人たちが記録されている[7]

アンダルスの詩人としては、イブン・アブドラッビヒ(英語版)、ワッラーダとの間に多くの相聞歌を残した宮廷詩人イブン・ザイドゥーン、諸国を放浪した詩人イブン・クズマーン(英語版)、恋愛論の名著『鳩の頸飾り』を残した法学者イブン・ハズムなどが知られる[8]。アンダルスのアラビア語文芸はヘブライ語にも影響を与え、アラビア語詩の韻律を取り入れたドゥーナシュ・ベン・ラブラート(英語版)や、アラビア語を参考にしてヘブライ語の叙事詩を再興したシュムエル・イブン・ナグレーラ、『ハザールの書』でも知られるイェフダ・ハレヴィらが活動した[9]

アンダルスでは、古典アラビア語詩をもとにしたムワッシャハ(英語版)という詩形も生まれた。この名はアラビア語で「飾り輪」や「飾り帯」を指すウィシャーフに由来しており、それまで単一の韻律だった詩を連節に分解してリフレインで構成した。詩形を指すムワッシャハは、やがて音楽や舞踏をともなう表現を意味するようになり、その歌い手はキヤーンと呼ばれた。バグダードの音楽家マウスィリー(英語版)に破門された歌手のズィルヤーブ(英語版)は、アンダルスに東方の音楽を伝え、さらに独自の音楽文化を編み出した。ウードの弦を4弦から5弦に変え、のちのリュートの原型ともなっている[9]

近代以降の詩人としては、アラビア語詩に影響を受けつつアメリカへ移住したハリール・ジブラーン(ハリール・ジュブラーン)[10]、イラクで自由詩運動を唱えたナーズィク・アル=マラーイカ(英語版)、パレスチナを代表する詩人マフムード・ダルウィーシュ、シリア出身でレバノンやフランスでも活動するアドニス(アドーニース)などが知られる。


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