アメリカ炭疽菌事件
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アメリカ炭疽菌事件
2001 anthrax attacks
NBCニュースに送りつけられた封筒(第一波)
場所 アメリカ合衆国
ニューヨーク州ニューヨーク
フロリダ州ボカラトン
ワシントンD.C.
日付2001年9月18日10月9日[注 1]
標的アメリカン・メディア、NBCニュースABCニュースCBSニュースニューヨーク・ポストトム・ダシュルパトリック・リーヒ
攻撃手段炭疽菌送付
死亡者5人
負傷者17人
犯人ブルース・イビンズ
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アメリカ炭疽菌事件(アメリカたんそきんじけん、: 2001 anthrax attacks、FBIファイル名:Amerithrax)は、2001年9月18日10月9日[注 1]の二度にわたり、アメリカ合衆国の大手テレビ局出版社上院議員に対し、炭疽菌が封入された容器の入った封筒が送りつけられたバイオテロ事件である。

この炭疽菌の感染により、5名が肺炭疽を発症し死亡[1]、17名が負傷した。

同時多発テロ事件の7日後に発生したこの事件はアメリカ全土を震撼させ、事件の捜査はFBI曰く「アメリカの司法史上最も大規模かつ複雑なもののひとつ」となった[2]
標的上院議員であるトム・ダシュルに送られた炭疽菌入りの封筒。この封筒を配達した郵便局員2名が死亡している(第二波)

内訳はテレビ局3社と出版社2社、及び民主党上院議員2名である。

アメリカン・メディア社(ナショナル・エンクゥワイヤー誌)

NBCニュース

ABCニュース

CBSニュース

ニューヨーク・ポスト(出版社)

トム・ダシュル(上院議員)

パトリック・リーヒ(上院議員)

事件概要

この炭疽菌テロ攻撃は二波に分かれて行われており、第一波はトレントン局管内のポストから投函され、2001年9月18日付の消印が押された5通の封筒であった。このうち4通はその後ニューヨーク、モルガン局を経由しニューヨークを本社とするテレビ局、NBCニュース、ABCニュース、CBSニュースと出版社であるニューヨーク・ポストへと配達された。残りの1通はフロリダ州ウエストパーム局を経由し、同州ボカラトンを本社とするアメリカン・メディア社(ナショナル・エンクゥワイヤー誌宛)へと送付されている。このアメリカン・メディア社に届けられた封筒により同社従業員であり、スーパーマーケットタブロイド紙「サン[注 2]」の写真編集員であるロバート・スティーブンスが2001年10月6日に死亡し最初の犠牲となった。スティーブンスはフロリダ病院へ訪れた4日後に原因不明の嘔吐と息切れを起こし倒れ、その後死亡している[3]

ニューヨークポストとNBCニュースに送りつけられた封筒は発見され[4]その他の3通は開封者が炭疽菌に感染した事で同一の郵便物である可能性が発覚した。解析作業にあたった科学者はニューヨークポストに送付された封筒から発見された炭疽菌はドッグフードの様な粗い茶色の粒状材料であった事が報告されている[5]

第二波は第一波の3週間後、10月9日付の同じくトレントンの消印が押された物であった。宛先はサウスダコタ州、民主党上院議員トム・ダシュルとバーモント州、パトリック・リーヒ同上院議員宛となっており、当時ダシュルは上院多数党院内総務、リーヒは上院司法委員会委員長であった。ダシュル宛ての封筒は10月15日側近により開封されたことにより、その後の政府向けの郵便サービスは直ちに中止の措置が取られた。リーヒ宛ての封筒は開封されておらず、11月16日に封筒が混入しているメールバックが発見され、バックごと押収されている。リーヒ宛ての封筒はZIPコードが間違えて書かれていた為、そのZIPコードが示すバージニア州、スターリングにある「別館」に配達されており、配達した郵便局員であるデビッド・ホースが炭疽菌を吸入している。

第一波の攻撃は非常に効果的であった。また、上院議員宛の封筒には、高度に洗練されたシリカ状のほぼ純粋な炭疽菌胞子約1グラムが封入されていた。この結果から使用された炭疽菌は「兵器化域」の細菌粉末であると初期の報告がなされており、これは炭疽菌へ精通し、かつ、専門の研究施設などでなければ生産ができない域の物であることを意味し、アメリカ陸軍感染症医学研究所の科学者達はこの認識が欠如していたと考えられる[6]。しかし、2002年初頭に行われたサンディア国立研究所によるテストでは、この粉末は「兵器化」された域の物ではなかった事が報告されている[7][8]

少なくとも22名が感染症を発症し、このうち11名は生命に危険を及ぼす様な呼吸器症状はないとされた。5名が肺炭疽を発症し死亡。内訳は前述した出版社従業員であるロバート・スティーブンス(63歳)、ワシントンD.C.にあるブレントウッド郵便局の従業員であるトーマス・モリス・ジュニア(55歳)、ジョセフ・クルッセン(47歳)の3名、感染源が特定できていないベトナム移民でありニューヨーク・ブロンクス区在住のキャシー・グエン(61歳)とコネチカット州オックスフォード在住のオッティリー・ラングレン(94歳)の2名である。

その他、犯人特定まで長い年月が掛かったため、1978年から1995年まで調査が行われたユナボマー攻撃に例えられた[9]
手紙

全ての手紙複写機でコピーされたものであり、原文は見つかっていない。それぞれ僅かにサイズが違う用紙が用いられており、メディアに送付された手紙には句読点カンマピリオド)が使用されていないが、上院議員宛ての手紙には使用されている。第一、第二波共に封筒には手書きでの宛先表示がされており、上院議員へ送られた物と比べ、メディアに送付された物の筆跡は2倍の大きさであった。
原文と邦訳

ニューヨーク・ポストとNBCニュースあてに送られてきた手紙(第一の手紙)の内容。

09-11-01THIS IS NEXTTAKE PENACILIN NOWDEATH TO AMERICADEATH TO ISRAELALLAH IS GREAT

2001年9月11日次はお前だすぐペニシリン[注 3]を用意しろアメリカに死をイスラエルに死をアラーは偉大なり


この手紙の後にトム・ダシュルとパトリック・リーイ両上院議員あてに送られた手紙(第二の手紙)の内容。

09-11-01YOU CAN NOT STOP US.WE HAVE THIS ANTHRAX.YOU DIE NOW.ARE YOU AFRAID?DEATH TO AMERICA.DEATH TO ISRAEL.ALLAH IS GREAT.

2001年9月11日我々を止めることはできない我々は炭疽菌を(まだ)持っているお前は死ぬ怖いか?アメリカに死をイスラエルに死をアラーは偉大なり

第2の手紙



差出人

両上院議員に送付された封筒の差出人の住所表示は次の様に書かれていた。4th GradeGreendale SchoolFranklin Park NJ 08852

この宛先は架空の住所であり、ペンシルベニア州にフランクリンという地名は存在したものの、 ZIPコード「08852」はニュージャージー州モンマス・ジャンクション近郊を示し、サウス・ブランスウィック・タウンシップ・ニュージャージー近辺および モンマス・ジャンクションにグリーンブック小学校はあったが、フランクリン・パークまたはモンマス・ジャンクションにグリーンデール小学校なるものは存在していなかった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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