アメリカ合衆国大統領就任宣誓
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ジョン・ロバーツ最高裁長官に対して宣誓を行うジョー・バイデン(2021年1月20日)

アメリカ合衆国大統領就任宣誓(アメリカがっしゅうこくだいとうりょうしゅうにんせんせい、英語: oath of office of the president of the United States)は、アメリカ合衆国大統領が就任の際に行う宣誓又は確約である。宣誓の文言はアメリカ合衆国憲法第2条(英語版)第1節第8項に規定されており、新大統領は、大統領としての権限(英語版)の行使・公務の執行の前にこの宣誓をしなければならない。この条項では、新大統領に対し「自身の能力の限りを尽くして、合衆国憲法を維持し、保護し、擁護する」ことを宣誓するよう求めている[1]

大統領就任宣誓の条項は、アメリカ合衆国憲法で定められている3つの宣誓条項のうちの1つであるが、実際の文言が指定されているのは大統領就任宣誓のみである。他の2つは、弾劾裁判に出席する上院議員に対する宣誓を求めた第1条第3項、および連邦議員、各州の議員、連邦・各州の行政官・司法官に対する宣誓を求めた第6条(英語版)第3項であるが、いずれも文言については規定されていない。
規定

原文.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}Before he enter on the Execution of his Office, he shall take the following Oath or Affirmation:?"I do solemnly swear (or affirm) that I will faithfully execute the Office of President of the United States, and will to the best of my Ability, preserve, protect and defend the Constitution of the United States."[2]

日本語訳大統領は、その職務の遂行を開始する前に、次のような宣誓又は確約をしなければならない。「私は合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、全力を尽して合衆国憲法を維持、保護、擁護することを厳粛に誓う(又は確約する)[3]
就任式

新たに選出された、または再選された大統領は、選挙の後の1月20日正午から4年間の任期を開始し[注釈 1]、任期開始日に行われる就任式で宣誓を行うのが伝統となっている[4]。1月20日が日曜日の場合、当日は非公開で宣誓し、翌1月21日に行われる就任式の場で再度宣誓する。

任期中の大統領が死亡または辞任した場合は、副大統領が速やかに就任宣誓を行い、大統領に就任する。過去に9人の副大統領が、この規定により大統領に昇格している[5]
宣誓の実施チャールズ・エヴァンズ・ヒューズ最高裁長官に対して宣誓を行うフランクリン・D・ルーズベルト(1933年3月4日、4回の大統領就任式のうち最初のもの)

憲法では、大統領就任宣誓を誰に対して行うかの規定はないが、ジョン・アダムズ以降の大統領(大統領の死亡による副大統領からの昇格を除く)は最高裁主席判事に対して宣誓を行っている。初代のジョージ・ワシントンは、1789年4月30日に行われた最初の就任式で、ニューヨーク州衡平法裁判所(英語版)長官のロバート・リビングストンに対して宣誓を行った[6][7]1850年7月10日、ザカリー・テイラー大統領の死に伴いミラード・フィルモア副大統領が大統領に就任した際は、巡回裁判所主任判事のウィリアム・クランチ(英語版)に対して宣誓を行った[8]1923年8月2日に遊説中のウォレン・ハーディング大統領が死亡したが、カルビン・クーリッジ副大統領はバーモント州プリマス・ノッチ(英語版)にある実家に帰っていたところだった。翌日未明に大統領の死が知らされ、そのまま実家にて、公証人である父ジョン・カルビン・クーリッジ・シニア(英語版)に対して就任宣誓を行った[9][10]。その後、直ちにワシントンD.C.に戻り、最高裁長官ウィリアム・タフトに対して改めて就任宣誓を行っている。1963年11月22日にジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された後、リンドン・ジョンソン副大統領は大統領専用機(エアフォース・ワン)でワシントンD.C.に向かう前に飛行機の中でサラ・T・ヒューズ(英語版)連邦判事に対して宣誓を行った。女性に対して大統領就任宣誓が行われたのは、これが唯一の例である。過去に大統領宣誓が行われた相手は、最高裁長官が15人(そのうち1人は元大統領でもあるウィリアム・タフト)、最高裁陪席判事が1人、連邦判事(英語版)が4人、ニューヨーク州判事が2人、公証人が1人である。
「確約する」という文言の使用

憲法では、宣誓の文言の「誓う」(swear)を「確約する」(affirm)としても良いとしている。この理由は文書化されていないが、クエーカーなどのキリスト教の一部の宗派が、新約聖書ヤコブの手紙の以下の文言を文字通りに厳格に適用していることと関連があるかもしれない。さて、わたしの兄弟たちよ。何はともあれ、誓いをしてはならない。天をさしても、地をさしても、あるいは、そのほかのどんな誓いによっても、いっさい誓ってはならない。むしろ、「しかり」を「しかり」とし、「否」を「否」としなさい。そうしないと、あなたがたは、さばきを受けることになる。—ヤコブの手紙 5:12(口語訳聖書による)

過去に就任宣誓で「確約する」という文言を使用したのは、フランクリン・ピアースのみである。この他、クエーカー教徒のハーバート・フーヴァーが「確約する」という文言を使ったとされることが多いが、宣誓の様子を撮影したニュースフィルムによれば、「誓う」という文言を使用していた[11]。同じくクエーカー教徒のリチャード・ニクソンも「誓う」と言っていた[12][13]
宣誓の形式

就任宣誓には2つの形式がある。

第1の形式は、現在では使われていないもので、司式者が憲法に規定される宣誓を、"Do you, George Washington, solemnly swear ..."(あなた、ジョージ・ワシントンは……を厳粛に誓いますか?)のように、一人称を二人称に変えた疑問形で述べ、宣誓者は"I do."(そうします)または"I swear."(誓います)のように肯定する。少なくとも20世紀初頭までは、この方法が一般的だったと考えられている。1881年の『ニューヨーク・タイムズ』の記事によれば、チェスター・A・アーサーはI will, so help me God(そうします。神に誓って)と答えたという[14]1929年の『タイム』誌は、ウィリアム・タフト最高裁長官が「あなた、ハーバート・フーヴァーは、……を厳粛に誓いますか?」と言い[15]、フーヴァーは簡潔にI do.と答えたと報じている[16]

現在行われている第2の形式では、司式者が憲法に規定されている通りの文言を一人称のままでフレーズごとに区切って読み上げ、宣誓者はその言葉を復唱する。1933年フランクリン・ルーズベルトの就任式では、チャールズ・エヴァンス・ヒューズ最高裁長官が宣誓文を読み上げた後、ルーズベルトが同じ文言を復唱した[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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