アメダス
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「アメダス」のその他の用法については「アメダス (曖昧さ回避)」をご覧ください。
運用中アメダス(石川県小松市愛・地球博会場に設置されていた万博アメダス(気象庁が設置するものとは異なる)

アメダス(AMeDAS:Automated Meteorological Data Acquisition System:自動気象データ収集システム)は、日本国内約1,300か所の気象観測所で構成される気象庁の無人観測施設「地域気象観測システム」の通称である。
概要

日本国内約1,300か所に設置される地域気象観測所(通称アメダス観測所)で気象観測している。観測網の密度は降水量が約17キロメートル(キロ)(=17キロ四方の正方形につき1か所)、4要素の観測点は約20キロで、おおむねメソβスケール(20キロ - 200キロ規模)の現象把握が可能で、都府県単位の気象現象の把握に効果を発揮する。近年需要が高い集中豪雨突風など、より狭い範囲の局地現象は把握が難しく、対応には観測点を数十倍に増やす必要がある。局地現象は気象レーダーが効率的で、近年設置が増強されている。

降水量気温日照時間風向風速の4気象要素を観測している地点が多く、おもに豪雪地帯は積雪の深さも観測している。観測で得られたデータはISDN携帯電話回線[注釈 1]などを通じて気象庁内の地域気象観測センター(通称アメダスセンター)へ10分ごとに集信され、データの品質チェックを経たのち全国に配信される。

アメダスのデータは、気象庁ウェブサイトの地図・表形式で観測値や数値予報の入力データとして用いる。

通常の観測網に加えて、地震や火山噴火など大規模災害発災時に、地盤の緩みや火山噴出物の堆積など、通常よりも弱い気象現象で災害が発生する危険性が長期的に継続する場合および観測所自体が被災した場合は、アメダスの臨時観測点が設けられる。過去に雲仙普賢岳兵庫県南部地震2000年有珠山および三宅島の噴火、2008年岩手・宮城内陸地震2021年熱海市伊豆山土石流災害[2]、それぞれで運用された。現在運用される観測所のほかに、観測所移設や臨時観測所設置など、観測所となった地点数は通算2,000か所を超える。
歴史

1960年代から1970年代前半まで日本国内の公的な気象観測地点は、おおむね100キロ間隔に配置された気象官署気象レーダー、有人気象通報拠点の気象通報所、委託式気象観測所の区内観測所、で構成した。旧来の区内観測所は、観測点数で現在のアメダス観測所の総数を超えていたが、担当官が観測するためデータの報告速度や誤差などの難点があった。

各地域の天候記録や気象予報の強化には、大雨突風大雪など気象状況の詳細で迅速な把握を要する。観測を自動、無人化して報告速度を、詳細気象観測は気象官署に限定してデータの精密さを、それぞれ向上させることなどを目的に新たにアメダスを開発した。

運用開始は1974年11月1日で、1979年3月に国内1,316地点で観測所の整備を完了する。積雪深計は1977年12月1日に秋田県内で試験運用を始め、1979年11月1日に正式運用を開始する。1993年2月に10分毎の臨時配信を開始し、現在は第4世代のアメダスを運用する。2006年3月18日から空港出張所、航空測候所、航空地方気象台の観測値もアメダスに取り込む。
新アメダス

2007年度から無人観測所の685か所で改良し、2008年3月26日にアメダスデータ等統合処理システム(新アメダス)の運用を開始した。従来は10分間隔で観測した気温や風速は、気温は10秒間隔で、加えて最大瞬間風速の観測を開始した。開始当初は気象台・測候所・特別地域気象観測所の計154か所とアメダス観測所230か所を合わせて384か所が接続された。残りの地点は2008年度以降、順次接続している[3]
名称

「地域気象観測システム」の英語訳は当初 "Automatic Meteorological Data Acquisition System" で、略称は頭文字のAMDASではなく、アクロニムでAMeDAS(雨出す)としたほうがおもしろいとの提案[4]が採用され、略称を "AMeDAS"、読みを「アメダス」とした。のちに英語訳は "Automated Meteorological Data Acquisition System に変更されたが、略称は変更の要がなく継続して用いる[5]
課題

アメダス観測は、観測精度の観点から観測所付近の環境保守管理が必須でその維持が課題となる。

近年は、2010年9月に京都府京田辺市にあるアメダスの温度計を含む通風筒につる植物が巻きついていたとする報道[6]を受け、気象庁がアメダス全1,277か所を緊急点検し、京田辺は気温・雨量、ほか14か所は雨量観測に不適切な環境で、京田辺を含む7か所で実際に観測結果に影響があったとして、気象庁の統計に用いないこととした事例がある[7][注釈 2]
アメダス観測所の詳細
観測気象要素
降水量

0.5
ミリメートル(ミリ)単位で観測する。統計値は1ミリ単位、2008年3月26日から0.5ミリ単位で扱う。

雪・あられなどは溶解後に雨と合わせて計測する。

転倒ます型雨量計で計測する。

気温

摂氏0.1度単位で観測する。

温度変化による白金電気抵抗変化を応用した電気式温度計で計測する。

日照時間

太陽光が照射した時間を2分単位で観測する。アメダスデータ等統合処理システムへ移行された地点は1分単位、統計値は0.1時間単位で扱う。

日照計測は測器が変更された。変更時期は地点により異なる。

観測開始 - 太陽電池式日照計(旧型)

1985年10月 - 太陽電池式日照計(新型)

2005年10月 - 回転式日照計

気象官署は測器が異なり、1996年1月までは回転式日照計、2月以降は太陽追尾式日照計を用いる。

過去の統計は、太陽電池式日照計(旧型)の観測値は統計を切断し、平年値に用いる観測値は補正を施す。

回転式日照計へ変更した地点は、統計を継続して平年値に用いる観測値は補正を施す。

2021年3月2日13時、日照計による観測から、気象衛星観測データを用いた「推定気象分布(日照時間)」から得られる推定値となる
[8]


風向風速

風の吹いてくる方向を、北、北北東、北東、東北東、東、東南東、南東、南南東、南、南南西、南西、西南西、西、西北西、北西、北北西の
16方位で表す。

風の速さを1m/s単位で観測する。アメダスデータ等統合処理システムへ移行した地点は0.1m/s単位で扱う。

発表値は観測時刻までの10分間平均値。

風車型風向風速計で計測する。

積雪

地面からの積雪高を1
センチメートル単位で観測する。

おもに雪の多い地域で、10分毎は観測せず1時間毎に観測する。

積雪面からの超音波反射時間を測定する超音波式積雪計で計測する。レーザーを用いた光電式積雪計を使用する事例も見られる。

機器配置と環境

観測される気象データをより精密なものとするために、アメダス観測所や観測所内の機器の設置環境に配慮する。

観測機器を集めて設置する直下の地面は30m2以上の芝生を配し、地面からの反射日射と雨粒の跳ね返りを減じている。

一部を除く観測所は、周囲に風通りを妨げないを設置し、外部から小動物などの侵入を防いでいる。周囲は極力開けた場所とし、樹木や建物など日射や風通しの影響を排除している。

盆地内で風の測定に影響がある雲仙岳特別地域気象観測所など、近くの山頂に測風塔のみ移設して風を観測する事例がある。

積雪計は日本海側や山岳地の豪雪地帯、北・東日本、西日本の一部に設置され、ほかの地域も各都府県毎気象台に1か所ずつ設置する。積雪が非常にまれな沖縄県は、気象台を含めて1か所も設置していない。

気象業務法第9条、観測を行う機器は気象測器検定に合格したものでなければならない。同37条、観測機器を故意に壊した者は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の刑に処せられる。

観測所の詳細な所在地(地番)は公開していない。かつて「アメダス観測所を設置している機関に直接電話や訪問などが多々行われた」(引用)事例に配慮した[9]施策である。


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