Amyloid beta peptide (beta-APP)
水溶液環境で部分的にフォールディングしたアミロイドβ (1?40) の構造[1]。PDB: 2lfm
利用可能な蛋白質構造:
Pfam ⇒structures
PDB ⇒RCSB PDB; ⇒PDBe; PDBj
PDBsum ⇒structure summary
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amyloid beta (A4) precursor protein (peptidase nexin-II, Alzheimer disease)
アミロイド前駆体タンパク質 (APP) のプロセシング
識別子
略号APP
他の略号AD1
Entrez(英語版)351
HUGO620
OMIM104760
RefSeqNM_000484
UniProtP05067
他のデータ
遺伝子座Chr. 21 q21.2
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アミロイドβ(アミロイドベータ、英: Amyloid beta、略称: Aβ)は、アルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイド斑の主成分として、アルツハイマー病に重大な関与を行う36?43アミノ酸のペプチドである[2]。このペプチドはアミロイド前駆体タンパク質 (amyloid precursor protein, APP) に由来し、β-セクレターゼとγ-セクレターゼによる切断によって産生される。Aβ分子は凝集し、いくつかの形態の柔軟な可溶性のオリゴマーを形成する。現在では、特定の誤ったフォールディング(ミスフォールディング)をしたオリゴマー(「シード」として知られる)が他のAβ分子のミスフォールドを誘導し、プリオンの感染と類似した連鎖反応が引き起こされると考えられている。このオリゴマーは神経細胞に対する毒性がある[3]。アルツハイマー病への関与が示唆される他のタンパク質であるタウタンパク質も同様にプリオン様のミスフォールドオリゴマーを形成し、ミスフォールドしたAβがタウのミスフォールドを誘導するという証拠も存在する[4][5]。
近年の研究は、APPとそのアミロイド形成能の歴史は古く、初期の後口動物にまで遡ることを示唆している[6]。 Aβの正常な機能はあまり解明されていない[7]。いくつかの動物での研究において、Aβの不在は明確な生理学的機能の喪失を引き起こさないことが示されている[8][9]。一方で、キナーゼの活性化[10][11]、酸化ストレスからの保護[12][13]、コレステロールの輸送の調節[14][15]、転写因子としての機能[16][17]、抗菌活性(Aβの炎症促進活性と関連している可能性)[18][19][20] など、いくつかの活性を有する可能性が発見されている。 グリンパティック系 Aβはアミロイド斑(アルツハイマー病の患者の脳に見つかる細胞外沈着物)の主要な構成要素である[24]。同様の斑はいくつかのレビー小体病や封入体筋炎においても出現する。また脳アミロイド血管症では、Aβは脳の血管を覆う凝集体を形成する。アミロイド斑はアミロイド線維と呼ばれる規則的に並んだ線維状凝集体から構成され[25]、そのフォールドは、タンパク質ミスフォールディング病と関連するプリオンなどの他のペプチドと共通している。 可溶性オリゴマー状態のペプチドがアルツハイマー病の発症の原因因子である可能性が、研究からは示唆されており[26][27]、Aβのオリゴマーが最も毒性が高いと一般的には考えられている[28]。イオンチャネル仮説
正常な機能
疾患との関連
アルツハイマー病
脳のAβは孤発性アルツハイマー病の患者で上昇している。Aβは脳実質と脳血管のアミロイドの主要な構成要素であり、脳血管の病変に寄与し、神経毒性がある[34][35][36][37]。Aβがどのように中枢神経系に蓄積し、その後どのように細胞の病変が開始されるかについては解明されていない。一部の研究者は、Aβのオリゴマーがインスリン受容体の結合部位に関してインスリンと競合することで脳のグルコース代謝が損なわれ、アルツハイマー病の症状の一部が引き起こされることを発見した[38]。前駆体タンパク質APPからAβを作り出すタンパク質分解酵素であるγ-セクレターゼやβ-セクレターゼなど、Aβの産生を担う機構に関しては集中的にかなりの労力が注がれてきた[39][40][41][42]。Aβは主に可溶性のAβ40の形態で脳脊髄液や脳間質液などの体液中を循環する[34][43]。老人斑はAβ40とAβ42の双方を含み[44]、脳血管のアミロイドは主に短いAβ40からなるが、どちらの病変においても複数種類の配列のAβが見つかる[45][46][47]。中枢神経系におけるAβの生成は神経細胞の軸索の膜において、APPによって媒介されてβ-セクレターゼとプレセニリン1 (PS1) が軸索へ輸送された後に起こる[48]。
Aβの総量、またはAβ40とAβ42の相対的濃度[前者は脳血管の斑に、後者はneuritic plaque(周囲に神経突起を伴う老人斑)に濃縮されている]のいずれかの増加と[49]、家族性・孤発性アルツハイマー病の病理との関係が示唆されている。Aβ42はより疎水的であるため、最もアミロイド形成能の高い形態のペプチドである。中央部に存在する配列KLVFFAEがアミロイドを形成することが知られており[50]、おそらく線維の核を形成している。ある研究では、脳内のAβ42のレベルはアルツハイマー病の発症だけでなく脳脊髄液圧の低下とも相関しており、Aβ42断片の蓄積または除去不能が病理に関与している可能性が示唆されている[51]。
アミロイド斑がアルツハイマー病の病因であるとする「アミロイド仮説」は大多数の研究者に受け入れられているが、決定的に確立されているわけではない。代替的な仮説では、アミロイド斑よりもむしろアミロイドのオリゴマーが病気の原因となっているとされる[28][52]。オリゴマーを形成するがアミロイド斑を形成しないような遺伝子改変 (APPE693Q) がなされたマウスは、病気を発症する。さらにオリゴマーをアミロイド斑へ変換する改変がなされたマウス (APPE693Q X PS1ΔE9) は、オリゴマーだけを発現するマウスよりも症状が悪化することはない[53]。アルツハイマー病ではタウタンパク質の細胞内の蓄積も見られ、α-シヌクレインの凝集と同様に、これが疾患に関与している可能性もある。 Aβはがんの発生への関与が示唆されており、その影響の解明のためにさまざまながんで研究が行われているが、その結果はほとんど決定的ではない。食道がん、大腸がん、肺がん、肝がんなどの生存者はアルツハイマー病の発症リスクが低下することが観察されており、多数のがんでAβのレベルが測定されている。すべてのがん、特に肝がんでAβのレベル上昇と正の関連があることが示された[54]。しかし、この関連の方向性はまだ確立されていない。ヒトの乳がんの細胞株に焦点を当てた研究では、これらのがん細胞株ではアミロイド前駆体タンパク質の発現レベルが上昇していることが示された[55]。 ダウン症候群の成人では、認知機能、記憶、微細運動、実行機能、視空間技能の低下などのアルツハイマー病の証拠と関連して、アミロイドの蓄積がみられた[56]。 Aβは、機能未知の膜貫通型糖タンパク質であるAPPの連続的な切断によって形成される。APPはタンパク質分解酵素であるα-セクレターゼ、β-セクレターゼ、γ-セクレターゼによって切断されるが、Aβはβ-セクレターゼとγ-セクレターゼの連続的な作用によって生成される。AβペプチドのC末端を作り出すγ-セクレターゼはAPPの膜貫通領域の内部を切断し、30?51アミノ酸長の多数のアイソフォームが生み出される[57]。
がん
ダウン症候群
形成
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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