アミロイドβ
[Wikipedia|▼Menu]

Amyloid beta peptide (beta-APP)
水溶液環境で部分的にフォールディングしたアミロイドβ (1?40) の構造[1]PDB: 2lfm​
識別子
略号APP
PfamPF03494
InterProIPR013803
SCOP ⇒2lfm
SUPERFAMILY ⇒2lfm
TCDB ⇒1.C.50
OPM superfamily304
OPM protein2y3k
Membranome ⇒45

利用可能な蛋白質構造:
Pfamstructures
PDBRCSB PDB; ⇒PDBe; PDBj
PDBsum ⇒structure summary

テンプレートを表示

amyloid beta (A4) precursor protein (peptidase nexin-II, Alzheimer disease)
アミロイド前駆体タンパク質 (APP) のプロセシング
識別子
略号APP
他の略号AD1
Entrez(英語版)351
HUGO620
OMIM104760
RefSeqNM_000484
UniProtP05067
他のデータ
遺伝子座Chr. 21 q21.2
テンプレートを表示

アミロイドβ(アミロイドベータ、: Amyloid beta、略称: Aβ)は、アルツハイマー病患者のに見られるアミロイド斑の主成分として、アルツハイマー病に重大な関与を行う36?43アミノ酸ペプチドである[2]。このペプチドはアミロイド前駆体タンパク質 (amyloid precursor protein, APP) に由来し、β-セクレターゼγ-セクレターゼによる切断によって産生される。Aβ分子は凝集し、いくつかの形態の柔軟な可溶性のオリゴマーを形成する。現在では、特定の誤ったフォールディング(ミスフォールディング)をしたオリゴマー(「シード」として知られる)が他のAβ分子のミスフォールドを誘導し、プリオンの感染と類似した連鎖反応が引き起こされると考えられている。このオリゴマーは神経細胞に対する毒性がある[3]。アルツハイマー病への関与が示唆される他のタンパク質であるタウタンパク質も同様にプリオン様のミスフォールドオリゴマーを形成し、ミスフォールドしたAβがタウのミスフォールドを誘導するという証拠も存在する[4][5]

近年の研究は、APPとそのアミロイド形成能の歴史は古く、初期の後口動物にまで遡ることを示唆している[6]
正常な機能

Aβの正常な機能はあまり解明されていない[7]。いくつかの動物での研究において、Aβの不在は明確な生理学的機能の喪失を引き起こさないことが示されている[8][9]。一方で、キナーゼの活性化[10][11]酸化ストレスからの保護[12][13]コレステロールの輸送の調節[14][15]転写因子としての機能[16][17]、抗菌活性(Aβの炎症促進活性と関連している可能性)[18][19][20] など、いくつかの活性を有する可能性が発見されている。

グリンパティック系(英語版)は哺乳類の脳から代謝廃棄物、特にAβを除去する[21]。除去の速度は睡眠中に大きく増加する[22]。しかし、アルツハイマー病に関して、グリンパティック系によるAβの除去の重要性は不明である[23]
疾患との関連

Aβはアミロイド斑(アルツハイマー病の患者の脳に見つかる細胞外沈着物)の主要な構成要素である[24]。同様の斑はいくつかのレビー小体病封入体筋炎においても出現する。また脳アミロイド血管症では、Aβは脳の血管を覆う凝集体を形成する。アミロイド斑はアミロイド線維と呼ばれる規則的に並んだ線維状凝集体から構成され[25]、そのフォールドは、タンパク質ミスフォールディング病と関連するプリオンなどの他のペプチドと共通している。
アルツハイマー病

可溶性オリゴマー状態のペプチドがアルツハイマー病の発症の原因因子である可能性が、研究からは示唆されており[26][27]、Aβのオリゴマーが最も毒性が高いと一般的には考えられている[28]。イオンチャネル仮説(英語版)では、可溶性で非線維型のAβが膜でイオンチャネルを形成して神経細胞への無秩序なカルシウムの流入を引き起こし[29]、このことがアルツハイマー病で見られるカルシウムイオンの恒常性の破綻とアポトーシスの根底にあると想定されている[30][31]。また計算機による研究においても、Aβのペプチドは主にヘリックス型の形状で膜へ埋め込まれてオリゴマー化すること[32]、そして最終的にはチャネルを形成し、その安定性とコンフォメーションはコレステロールの存在と配置に敏感に関連するものであることが示されている[33]。遺伝学、細胞生物学、生化学、動物を用いた多数の研究によって、Aβがアルツハイマー病の病理に中心的な役割を果たすという概念は支持されている[34][35]

脳のAβは孤発性アルツハイマー病の患者で上昇している。Aβは脳実質と脳血管のアミロイドの主要な構成要素であり、脳血管の病変に寄与し、神経毒性がある[34][35][36][37]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:96 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef