アミノ酸
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グリシンの構造式。最も構造が単純なアミノ酸トリプトファンの構造式。最も構造が複雑なアミノ酸の1つ。

アミノ酸(アミノさん、: amino acid)とは、広義には(特に化学の分野では)、アミノ基カルボキシ基の両方の官能基を持つ有機化合物の総称である。一方、狭義には(特に生化学の分野やその他より一般的な場合には)、生体のタンパク質の構成ユニットとなる「α-アミノ酸」を指す。分子生物学など、生体分子をあつかう生命科学分野においては、遺伝暗号表に含まれるプロリンイミノ酸に分類される)を、便宜上アミノ酸に含めることが多い[1][2]

天然には約500種類ほどのアミノ酸が見つかっている[3]が、宇宙由来のものとしても1969年に見つかったマーチソン隕石からグリシンアラニングルタミン酸β-アラニンが確認されている[3]。全アミノ酸のうち22種がタンパク質の構成要素であり、真核生物では21種から、ヒトでは20種から構成される。動物が体内で合成できないアミノ酸を、その種にとっての必須アミノ酸と呼び、動物種によって異なるが[4]、ヒトでは9種類のアミノ酸は食事により摂取しなければならない。

必須でないアミノ酸(可欠アミノ酸)も、摂取バランスによっては代謝異常や欠乏を起こすことがある。非天然のアミノ酸はキラルビルディングブロック(光学活性化合物から有用な生化合物を合成する手法)、複雑な分子の構造解析、分子スキャフォールド(細胞培養における基質のことで「足場」の意味)、さらには人工タンパク質の合成などにも利用されている。

有毒な種類のアミノ酸もあり、例えば毒キノコに含まれている場合がある。毒性のあるアミノ酸の場合、神経毒としての作用を発揮する。

必須アミノ酸とタンパク質が密接に関わっているため、便宜的に(必須)アミノ酸を三大栄養素のタンパク質の代わりとすることもある。
構造α-アミノ酸の一般構造式アミノ酸の構造(左)と双性イオン(右)

α-アミノ酸とは、カルボキシ基が結合している炭素α炭素)にアミノ基も結合しているアミノ酸であり、RCH(NH2)COOH という構造を持つ。Rが水素 (H) であるグリシン以外のα-アミノ酸では、α炭素へのアミノ基やカルボキシ基などの結合様式が立体的に2通り可能で、それぞれ、D型、L型の光学異性体として区別される。生体のタンパク質はα-アミノ酸のポリマーであるが、基本的にL型のものだけが構成成分となっている。D型は天然では細菌の細胞壁の構成成分や老化組織、ある種の神経細胞などに存在が見出されている。生体のタンパク質はほとんどの場合、Rで表記した側鎖の違いによる20種類のアミノ酸からなる。個々のアミノ酸はこの側鎖の性質によって、親水性疎水性塩基性酸性などの性質が異なる。
分類
側鎖による分類
分枝鎖アミノ酸芳香族アミノ酸含硫アミノ酸
代謝物による分類
糖原性アミノ酸ケト原性アミノ酸
アミノ基の位置による分類
α-アミノ酸 例:アラニンβ-アミノ酸 例:β-アラニンγ-アミノ酸 例:γ-アミノ酪酸δ-アミノ酸 例: ⇒δ-アミノ吉草酸
光学異性による分類
D-アミノ酸、L-アミノ酸
栄養学上の分類
2005年米国医学研究所発行の書籍によれば以下のように分類している。[5]
必須アミノ酸
ヒスチジンイソロイシンロイシンリシンメチオニンフェニルアラニントレオニントリプトファンバリン
条件付き必須アミノ酸
体内の代謝だけでは必要量を十分には賄えないことがあるアミノ酸。アルギニンシステイングルタミングリシンプロリンチロシン
非必須アミノ酸
アラニンアスパラギン酸アスパラギングルタミン酸セリン
タンパク質を構成するもの詳細は「タンパク質を構成するアミノ酸」を参照

一部の特殊なものを除き、ヒトのタンパク質は5種類の元素 (炭素、水素、酸素、窒素、硫黄) から構成される20種類のアミノ酸が結合して作られている。これらのアミノ酸にはそれぞれ一文字表記、または三文字表記のアルファベットからなる略号が付与されており、一次構造の記述に使用される。

それぞれのアミノ酸は、構造によって異なる酸・塩基性を持つ。構造内に2つのカルボキシル基を持つアミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸)は酸性を、2つ以上のアミノ基を持つアミノ酸(リシンアルギニンヒスチジン)は塩基性を、その他のアミノ酸はほぼ中性を示す。また、それぞれのアミノ酸は等電点が実験的に決定されており、電気泳動などの分離時に意味を持つ。

中性アミノ酸は、カルボキシル基およびアミノ基以外に持つ特徴的な基によって、幾つかに分類される。主に、アルキル鎖を持つグリシンアラニンバリンロイシンイソロイシン、ヒドロキシ基を持つセリントレオニン、硫黄を含むシステインメチオニンアミド基を持つアスパラギングルタミン、イミノ基を持つプロリン、芳香族基を持つフェニルアラニンチロシントリプトファンに分類され、タンパク質の持つ疎水性や立体配座はこれらの分類を考慮しながら考察される。

アミノ酸三文字表記一文字表記構造式コドン

(IUPAC 表記) 分子量等電点ファンデルワールス半径タンパク質の豊富(%)[6]
アラニンAlaAGCN89.096.00678.76
アルギニンArgRMGN, CGY

(時々CGN、AGR)174.2010.761485.78
アスパラギンAsnNAAY132.125.41963.93
アスパラギン酸AspDGAY133.102.77915.49
システインCysCUGY121.165.05861.38
グルタミンGlnQCAR146.155.651143.9
グルタミン酸GluEGAR147.133.221096.32
グリシンGlyGGGN75.075.97487.03
ヒスチジンHisHCAY155.157.591182.26
イソロイシンIleIAUH131.176.051245.49
ロイシンLeuLYUR, CUY


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