アミノレブリン酸
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アミノレブリン酸
IUPAC命名法による物質名
IUPAC名

5-アミノ-4-オキソ-ペンタン酸

識別
CAS番号
106-60-5
ATCコードL01XD04 (WHO)
PubChemCID: 137
DrugBankAPRD00793
KEGGC00430
化学的データ
化学式C5H9NO3
分子量131.13 g/mol
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5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid、5-ALA)またはδ-アミノレブリン酸(dALA, δALA)は、ポルフィリン合成経路の最初の生成物である。
生物種によって異なる合成経路

ポルフィリン合成経路の出発物質であるアミノレブリン酸の合成経路には2種類があり、生物の系統によってどちらを用いているかは異なる。
Shemin経路
グリシンスクシニルCoAを縮合させて合成する。αプロテオバクテリアと、真核生物のミトコンドリアで利用されている。
C5経路
tRNAにチャージされているグルタミン酸を還元的に切り離し、アミノ基転移を経て合成する。大部分の原核生物と、真核生物の色素体で利用されている。

2種類の経路を両方もつ生物は稀である。色素体を持つ真核生物はミトコンドリアも持っているが、通常どちらか一方のみが用いられる。例えば緑色植物紅藻珪藻では色素体のC5経路のみが利用されShemin経路はそもそも存在しない。両方の経路を利用している生物としてはミドリムシが挙げられる。
動物における合成経路

動物においてはグリシンおよびスクシニルCoAからアミノレブリン酸合成酵素EC 2.3.1.37)の作用で合成される。

5-アミノレブリン酸は、動物においてはポルフォビリノーゲンシンターゼによってポルフォビリノーゲンEC 4.2.1.24)に代謝され、さらにヒドロキシメチルビランウロポルフィリノーゲンIIIコプロポルフィリノーゲンIIIプロトポルフィリノーゲンIXプロトポルフィリンIXとなる。プロトポルフィリンはイオンを配位することで、血液中のヘモグロビンや薬物代謝酵素であるP450を構成するヘムとなる。δ-アミノレブリン酸からプロトポルフィリンIXまでの生合成経路
合成阻害

無機は、SH基と結合することにより、5-アミノレブリン酸脱水酵素と、ヘム合成酵素を阻害するため、尿中には5-アミノレブリン酸とコプロポルフィリンが排泄される。これらの異常値は症状が無くても認められるため、鉛曝露の指標として有用である。さらに、鉛のヘムの分解の促進と合成の阻害により、ヘムの量は著しく減少し、ヘモグロビンだけでなく、ヘム蛋白質であるP450も減少する。症状としては、貧血と鉛仙痛が挙げられる。
用途
医薬

医療分野においては光増感剤として、光線性角化症やニキビの治療薬(光線力学的療法、PDT)に用いられており、近年ではレーザー照射と組み合わせて脳腫瘍の術中診断(光線力学的診断法、PDD)に用いられる。また、皮膚癌等のの治療も試みられている[1]。また、2018年には、京都大学の和田敬仁准教授らが、難病の一つATR-X症候群の治療薬としての可能性を示唆する論文を発表している[2]

アミノレブリン酸塩酸塩は製品名「アラグリオ[3]」として、青色光線(400?410nm)を用いた光力学診断を併用した経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)に用いられる。詳細は「アラグリオ」を参照

2021年2月9日、長崎大学の北潔教授によると、5-アミノレブリン酸を試験管内で一定量以上投与すると、SARS CoV-2の増殖を阻害・抑制することが確認された[4][5]。2月4日からヒトへの臨床試験も開始されている。
がんリスク評価《Noah》

尿中のがん細胞由来代謝物と酸化物質を調べることで、がんのリスク評価を行うものである。注射や痛みを伴わない非侵襲性の評価方法となっている。リスク評価には健康食品区分のALAカプセルを利用する。米国(シカゴ)にて開催されたASCO 2020、米国癌治療学会議(American Society of Clinical Oncology Annual Meeting)において、ALA-PDSの肺がん患者を対象とした解析研究結果が、帝京大学医学部附属病院、山内良兼医師らにより報告されている。成果は、5-アミノレブリン酸を用いた簡易的がんリスク評価法の検討試験(倫理審査委員会承認番号:17-138、研究実施責任者:山内良兼医師)として行われた医師主導臨床研究の成果の一部である[6]同報告において、肺がん患者群では健常ボランティア群に比べ、尿中ポルフィリン代謝物が有意に上昇していること、ステージ0又はステージIの早期肺がん患者群においても上昇することが示されたこと、PET-CTが陰性であった肺がん患者群でも上昇が確認されたことから、非侵襲性で簡便なリスク評価指標、あるいは診断補助指標として同手法が優れていることを示すエビデンスとなっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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