アミグダリン
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アミグダリン


IUPAC名

2-フェニル-2-[(2R,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-[[(2R,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-2-イル]オキシメチル]オキサン-2-イル]オキシアセトニトリル
識別情報
CAS登録番号29883-15-6
PubChem34751
MeSHAmygdalin
特性
化学式C20H27NO11
モル質量457.429 g/mol
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

アミグダリン (: amygdalin、C20H27NO11) またはレートリル (: laetrile)とは、ウメアンズモモビワなどのバラ科サクラ属植物の種子に多く含まれる青酸配糖体の一種であり、未成熟な果実、樹皮にも微量含まれる[1][2][3]

サプリメント等に配合され、俗に「がんに効く」などと言われているが、人を対象にした信頼性の高い研究で[4][5]がんの治療や改善、延命に対して効果はなく[6][7]、むしろ青酸中毒を引き起こす危険性がある[1][8]と分かっている。過去にアミグダリンをビタミンの一種とする主張があったが、生体の代謝に必須な栄養素ではなく、欠乏することもないため、現在では否定されている[9][10]アメリカ食品医薬品局(FDA)は、癌治療に何の効果も示さない非常に毒性の高い製品であり、本来の医療を拒否したり開始が遅れることにより命が失われていると指摘し、アメリカでの販売を禁止している[11][12]
解説

アミグダリン自体は無毒であるが、経口摂取することで、同じく植物中に含まれる酵素エムルシンや、ヒトの腸内細菌がもつ酵素β-グルコシダーゼによって体内で分解され、シアン化水素青酸)を発生させる[13][14]

シアン化水素はごく少量であれば安全に分解されるが、ある程度摂取すれば嘔吐、顔面紅潮、下痢、頭痛等の中毒症状を生じ、多量に摂取すれば意識混濁、昏睡などを生じ、死に至ることもある[9][15]

熟した果肉や加工品を通常量摂取する場合には、安全に食べることができる[1][16]。アミグダリンは果実の成熟に従い、植物中に含まれる酵素エムルシンによりシアン化水素青酸)、ベンズアルデヒド(アーモンドや杏仁、ビワ酒に共通する芳香成分)、グルコースに分解されて消失する。この時に発生する青酸も揮散や分解で消失していく[17]。また、加工によっても分解が促進される[1][13]

しかし、種子のアミグダリンは果肉に比べて高濃度であるため、成熟や加工によるアミグダリンの分解も果肉より時間がかかる[1]。種子がアミグダリンを持つのは自分自身を守るためにあると考えられ、外的ショックを受けてキズが入った種子には1000 - 2000ppmという高濃度のシアン化水素を含むものもある[1][13]。生の種子を粉末にした食品の中には、小さじ1杯程度の摂取量で安全に食べられるシアン化水素の量を超えるものある[18]。2017年に高濃度のシアン化合物(アミグダリンやプルナシン)が含まれたビワの種子の粉末が発見されたことにより、厚生労働省は天然にシアン化合物を含有する食品と加工品について、10ppmを超えたものは食品衛生法第6条の違反とすることを通知した[19][18][10]。海外ではアンズの種子を食べたことによる死亡例が報告されている[15]欧州食品安全機関(EFSA)は、アミグダリンの急性参照用量(ARfD)(毎日摂取しても健康に悪影響を示さない量)を20μg/kg体重と設定した。その量は小さなアンズの仁で小児は半分、成人は1 - 3個程度である[15]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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