アマノリ
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アマノリ類
1. Porphyra umbilicalis
分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
:植物界 Plantae (アーケプラスチダ Archaeplastida)
:紅色植物門 Rhodophyta
:ウシケノリ綱 Bangiophyceae
:ウシケノリ目 Bangiales
:ウシケノリ科 Bangiaceae
階級なし:アマノリ類 (非単系統群)

英名
foliose Bangiales, nori, laver
下位分類


マクレアマノリ属 Boreophyllum

クリメネ属 Clymene

フシフォリウム属 Fuscifolium

リシテア属 Lysithea

アカネグモノリ属 Neomiuraea

オニアマノリ属 Neoporphyra

アマノリ属 Neopyropia

ネオテミス属 Neothemis

ミナミアマノリ属 Phycocalidia

ポルフィラ属 Porphyra

ポルフィレラ属 Porphyrella

ウップルイノリ属 Pyropia

オオノノリ属 Uedaea

ベニタサ属 Wildemania

アマノリ(甘海苔)は、紅藻ウシケノリ綱ウシケノリ目ウシケノリ科に属する海藻のうち、膜状の体をもつ種の総称であり、アサクサノリスサビノリウップルイノリなどが含まれる。このような膜状の体は葉状体とよばれ、1層(まれに2層)の細胞層からなり、生活環における配偶体染色体を1セットもち配偶子をつくる体)である。葉状体が放出した果胞子は発芽して微小な胞子体(染色体を2セットもち胞子をつくる体)になり、ふつう貝殻などに穿孔する(糸状体とよばれる)。日本など東アジアでは古くから食用とされ、現在では大規模に養殖されている。またイギリスハワイなど世界各地でも採取され食材とされている。

日本におけるアマノリ類に対する漢字表記としては、古くは漢名の「神仙菜」や「紫菜」が用いられていた[1]鎌倉時代以降は「甘海苔」が使われるようになり、さらに江戸時代には単に「海苔」と記すようになった[1]。ただし公文書では大宝律令(701年)以降、明治時代まで「紫菜」が使われていた[1]。また「海苔」(ノリ)という語は、アオノリカワノリハバノリスイゼンジノリなど遠縁の食用藻類を含む広い意味で用いられることも多い。

2020年現在世界中で160種以上が知られ、日本からは約30種が報告されている。2011年まではこのような藻類は全てポルフィラ属(Porphyra; 和名ではアマノリ属とよばれていた)にまとめられることが多かった。しかし分子系統学的研究の結果、この意味でのポルフィラ属は単系統群ではないことが示され(多列糸状であるウシケノリ類と分けられない)、多数の属に細分されることになった。2020年現在では、アマノリ類はおよそ14属に分けられている。この過程で和名のアマノリ属に充てる学名は Porphyra、Pyropia、Neopyropia と変遷している[2]
特徴
形態と生活環

基本的に巨視的な配偶体 (葉状体) と微細な胞子体 (糸状体) の間で世代交代を行う[3][4][5][6](図3)。生活環における世代交代の時期は種によって異なり(#生態参照)、水温や日長で調整されている。2. Porphyra umbilicalis の葉状体 (配偶体).拡大
Clip 3. アマノリの生活環: 1. 配偶体 (葉状体), 2. 造精器 (精子嚢), 3. 不動精子, 4. 造果器, 5. 受精した造果器, 6. 果胞子嚢 (接合胞子嚢), 7. 果胞子 (接合胞子), 8-9. 胞子体 (糸状体), 10. 殻胞子嚢, 11. 殻胞子, 12. 配偶体の幼体.

配偶体は薄い葉状(膜状)の体をもち、葉状体ともよばれる[3][7](図1, 2)。葉状体の形は円形から披針形、長さ数センチメートル (cm) から 30 cm ほどのものが多いが、まれに1メートル (m) 以上になるものもいる[7][8]。葉状体はふつう1層の細胞層からなり厚さはふつう20-70マイクロメートル (μm) ほどであるが、ベニタサ属は2層の細胞層からなり厚さ 150 μmに達するものもいる[7]。葉状体は仮根で岩や杭、貝殻や他の海藻などの基質に着生している[9]。葉状体の細胞中央には、1個の星形の葉緑体が存在する(一部の種は2個の星形葉緑体が細胞中にならんでいる)[7][10]。星形葉緑体の中央にはピレノイドが存在する。周縁チラコイド(色素体膜の内側に位置し、他のチラコイドを囲んでいるチラコイド)をもたない。細胞壁の繊維多糖としてキシランやマンナンをもつ[11]。配偶体の一部の細胞は造果器 (carpogonium) または造精器(精子嚢, antheridium, spermatangium)になる。同じ個体に造果器と造精器をつけるもの(雌雄同株)と、どちらか一方のみを付けるもの(雌雄異株)がある[7]。雌雄同株の場合、雌雄が左右など明らかに分離して形成される種と、混在して形成される種がある[7]。造果器は雌性配偶子嚢であり、葉状体の片側または両側に突起(受精突起, trichogyne, protrichogyne)をもつが、不明瞭なこともある[7][12](図3-(4))。造精器は細胞分裂をして多数の不動精子(精子, spermatium)を形成する(図3-(2, 3))。不動精子は放出され、造果器に付着して受精する(図3-(5))。受精した造果器は細胞分裂を行い、果胞子 [接合胞子 (zygotospore) ともよばれる[12]] を形成する(図3-(6))。果胞子は直径 15 μm ほどである[3]。不動精子や果胞子の形成において、縦横高さの細胞数がそれぞれ種によってほぼ決まっており、分類形質とされる[7]

果胞子は貝殻など石灰質基質上で発芽し、微小な分枝糸状体である胞子体 (糸状体) になる[3](図3-(8, 9))。糸状体は細くふつう直径 2-5 μmほどであり、貝殻中では直線的に伸び、対生状に分枝する[3][13][14]。糸状体は貝殻など石灰質基質中に穿孔するが、ゲノム情報からは炭酸脱水酵素を分泌することによって炭酸カルシウムを溶かしていることが示唆されている[15]。おそらくこの反応によって、糸状体は光合成のための二酸化炭素を得ている[15]。また石灰質基質に穿孔していることで、糸状体は紫外線を含む強光や乾燥から保護されている[16]。この糸状体は古くは別の藻類と考えられ、Conchocelisという属名が与えられていたため、現在ではコンコセリス期とよばれることもある[4]。葉状体は特定の分裂細胞をもたないが、糸状体は頂端に分裂細胞をもつ先端成長を行う。糸状体を構成する細胞は1個から数個の側膜性葉緑体をもち、葉緑体中には1個から2個のピレノイドが存在する[10]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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