アマテラスとスサノオの誓約
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小林永濯『鮮斎永濯画譜』初篇「須佐之男命天ニ昇リ天照大御神ト問答シ盟ツテ御子産玉フノ図」アマテラスとスサノヲの誓約(古事記に基づく) SVGで表示(対応ブラウザのみ)

アマテラスとスサノヲの誓約(アマテラスとスサノヲのうけい)とは、『古事記』や『日本書紀』に記される天照大神(アマテラス)と建速須佐之男命(スサノヲ、日本書紀では素戔嗚尊)が行った誓約占い)のこと。
あらすじ
古事記

伊邪那岐命(イザナギ)が建速須佐之男命(スサノヲ)に海原の支配を命じたところ、建速須佐之男命は伊邪那美命(イザナミ)がいる根の国黄泉の国)へ行きたいと泣き叫び、天地に甚大な被害を与えた。イザナギは怒って「それならばお前はこの国に住んではいけない」と彼を追放した。

スサノヲは、姉の天照大御神(アマテラス)に会ってから根の国へ行こうと思い、天へ昇ると、山川が響動し国土が皆震動した。アマテラスはスサノヲが国を奪いに来たと思い、みづらを結い武具を携えて彼を迎えた。スサノヲが異心がないことを述べると、アマテラスはそれをどうやって示すのかスサノヲに尋ねた。スサノヲは、それぞれ宇気比(うけひ)をして子を生もうと答えた。

二神は天の安河を挟んでうけいを行った。まず、アマテラスがスサノヲの身に付けていた十拳劔(とつかのつるぎ)を受け取って3つに折って天の真名井で濯いでから噛み砕き、吹き出した息の霧から以下の三柱の女神(宗像三女神)が生まれた。

多紀理毘売命(たきりびめのみこと)またの名は奥津島比売命(おきつしまひめのみこと) - 宗像大社奥津宮に祀られる。

市寸島比売命(いちきしまひめのみこと)またの名は狭依毘売命(さよりびめのみこと) - 宗像大社中津宮に祀られる。

多岐都比売命(たきつひめのみこと) - 宗像大社辺津宮に祀られる。

次に、スサノヲが、アマテラスが身に付けていた「八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠」を受け取って天の真名井で濯いでから噛み砕き、吹き出した息の霧から以下の五柱の男神が生まれた。

左のみづらに巻いている玉から:正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)

右のみづらに巻いている玉から:天之菩卑能命(あめのほひのみこと)

かづらに巻いている玉から:天津日子根命(あまつひこねのみこと)

左手に巻いている玉から:活津日子根命(いくつひこねのみこと)

右手に巻いている玉から:熊野久須毘命(くまのくすびのみこと)

アマテラスは「五柱の男神は物実(ものざね)が私の物によって成ったのだから、私の子である。先に生まれた三柱の女神は物実がお前の物によって成ったのだから、お前の子である。」と言った。

それに対してスサノヲは「我が心は清く明し。故に、我が生める子は、手弱女を得た。」と勝利を宣言した。[1]
日本書紀
第六段本文

素戔嗚尊(スサノヲ)は根の国へ行く前に、高天原の姉に会いたいと願い、(伊弉諾尊の)許しを得て天に昇ると、海は轟き山は鳴った。天照大神(アマテラス)はスサノヲが暴悪であるのを知っていたので、「弟は国を奪おうとしているのではないか」と言ってみづらを結い、男装し武装して、スサノヲに詰問した。

スサノヲは「私には邪心はなく、根の国に赴こうとしているだけです。どうして姉上に会えないまま去ることができましょうか。」と答えた。アマテラスは「ならばどうやってお前のきよい心を証明しようと言うのだ。」と言い、スサノヲは「姉上と共にうけいをしたい。誓約(うけひ)で子を生もう。私の子が女ならば悪心あり、男ならば清い心ありとしてくれ。」と言った。

アマテラスはスサノヲの十握剣を取って、3つに折り、天真名井(あまのまなゐ)で濯ぎ、噛み砕いて吹き出した息の霧から以下の三柱の女神を生んだ。

田心姫(たこりひめ)

湍津姫(たぎつひめ)

市杵嶋姫(いちきしまひめ)

スサノヲはアマテラスが髪や腕に巻いていた、八坂瓊之五百箇御統(やさかにのいほつのみすまる)を取って、天真名井で濯いで噛み砕いて吹き出した息の霧から以下の神々を生んだ。

正哉吾勝勝速日天忍穂耳命尊(まさかあかつかちはやひあまのおしほみみのみこと)

天穂日命(あまのほひのみこと) - 出雲臣土師連等の祖。

天津彦根命(あまつひこねのみこと) - 凡川内直山代直等の祖。

活津彦根命(いくつひこねのみこと)

熊野?樟日命(くまののくすびのみこと)

(スサノヲが事前に宣言した通り、)五柱の男神であった。

アマテラスは「その物根(ものざね)はといえば、八坂瓊之五百箇御統は私の物である。よって五柱の神は皆私の児である。」と言って取り養った。また「十握剣はスサノヲの物だから、三柱の女神はお前の児である。」と言って授けた。[2]
第六段一書(第一)

日神(ひのかみ)は、素戔嗚尊が上り来るのはきっと我が天原を奪おうとしているのだと思い、武装して待ち構えた。素戔嗚尊は「私に悪心はない。ただ姉上に会おうと思って来ただけだ。」と言った。日神は素戔嗚尊と向かい合って立ち、誓(うけ)ひて「もしお前の心が清らかで、奪い取ろうという意図がないならば、お前の生む子は、必ず男であろう」と言った。言い終わると、帯びていた剣を食べて以下の三柱の女神を生んだ。

十握劒(とつかのつるぎ):
瀛津嶋姫(おきつしまひめ)

九握劒(ここのつかのつるぎ):湍津姫(たぎつひめ)

八握劒(やつかのつるぎ):田心姫(たこりひめ)

そこで素戔嗚尊はその首にかけていた五百箇御統之瓊(いほつのみすまるのたま)を天渟名井(あまのまなゐ)またの名は去来之眞名井(いざのまなゐ)の水で濯いで食べて生まれた神が以下の五柱の男神である。

正哉吾勝勝速日天忍骨尊(まさかあかつかちはやひあまのおしほねのみこと)

天津彦根命(あまつひこねのみこと)

活津彦根命(いくつひこねのみこと)

天穂日命(あまのほひのみこと)

熊野忍蹈命(くまののおしほみのみこと)

素戔嗚尊は勝ちのしるしを得て、日神は素戔嗚尊に悪心のないことを知った。[3]


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