アポロニウスの問題
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図1: アポロニウスの問題に対する解法。与円は黒で示されている。図2: アポロニウスの問題に対する解法である4つの相補的な円の対。与円は黒で示されている。

ユークリッド平面幾何学においてアポロニウスの問題(: Problem of Apollonius)とは、平面において与えられた3つの円に接する円を描く問題である(図 1)。ペルガのアポロニウス (ca. 262 BC ? ca. 190 BC)が彼の著作 「接触」 ?παφα? (Epaphai, "Tangencies")においてこの有名な問題を提起し、解決した。この著作「接触」は現在失われているが、アレキサンドリアのパップスによる、アポロニウスの成果がまとめられた4世紀のレポートは現存している。3つの与円[注釈 1]は一般的に、その3つの円に接する8つの相異なる円を持ち(図 2)、この円が3つの円を内部に持つか外部に持つかはそれぞれ異なる。すなわち、それぞれの円は、与えられた3つの円のうち一部を内部に持ち(残りの円は外部に持つ)、濃度が3の集合の部分集合は 23 = 8 つ存在するため、そのような円は8つ存在する。

16世紀にアドリアン・ファン・ルーメン(英語版)が交差する双曲線を用いてこの問題に解を与えたが、この解法は定規とコンパスのみを使った作図ではなかった。同じ解をフランソワ・ビエトはある種の極限(英語版)(三つの与円のどれでも、それを半径 0(つまり点)にまで縮めたり、半径無限大(つまり直線)にまで拡大したりできる)に相当することを示して、定規とコンパスのみを使った解法を与えた。より単純な極限化の操作によって、より複雑なケースに対して解法を与えるというビエトのアプローチは、アポロニウスの手法の妥当な再構成であると考えられている。ファン・ルーメンの手法はアイザック・ニュートンによって単純化された。ニュートンは、アポロニウスの問題は、ある点の既知の3つの点への距離の差から、その点の位置を探し出すことに等しいことを示した。これはLORANなどの位置測定システムやナビゲーションシステムに応用されている。

後世の数学者は代数学的な手法を導入した。これは幾何学の問題を代数方程式に置き換えるものである。これらの手法はアポロニウスの問題に備わる数学的な対称性を利用することによって単純化された。例えば、解円は一般に2つずつの対で生じ、この対のうち一方は与円を内部に持ち、他方は外側に持つ(図 2)。ジョセフ・ジェルゴンヌ(英語版) は定規とコンパスのみを使って描く、エレガントさで知られる解法を与えるために、この対称性を用いた。一方で、他の数学者は円に関する反転などの幾何学的変換を用いて、与円の配置を単純化した。これらの発展は、(リー球面幾何学(英語版)を使って)代数学的手法に幾何学的設定をもたらし、さらに33の本質的に異なる与円の配置に基づく解円の分類をもたらした。

アポロニウスの問題は更なる研究を刺激した。3次元への一般化(4つの与えられた球面に接する球面をつくる)や、より高い次元についても研究がなされている。3つの互いに接する円の配置も特別な関心を寄せられている。ルネ・デカルトは解円と与円の半径を結びつける公式を与え、この公式は現在ではデカルトの定理として知られている。繰り返しアポロニウスの問題を解くことは、この場合、アポロニウスのギャスケット をもたらす。アポロニウスのギャスケットは紙上で詳述された最初期のフラクタルのひとつであり、これはフォードの円やハーディ・リトルウッドの円分法(英語版)を通して、数論における重要な概念となっている。
アポロニウスの問題の言明

アポロニウスの問題の一般的言明は、ひとつあるいはそれ以上の円を、平面上に与えられた3つのオブジェクトに対して接するように描くというものである。オブジェクトは直線でもいいし、あるいは点や、円でもよい(この円の大きさは問わない)[1][2][3][4]。これらのオブジェクトはどのようにも配置されうるし、お互いに重なりあってしまうこともある。しかし、このオブジェクトは基本的には相異なるものとして扱われる(基本的にはオブジェクトが完全に一致してしまうことはない)。アポロニウスの問題に対する解は、時に「アポロニウスの円」と呼ばれる。ただし、アポロニウスの円という名前は、アポロニウスに関連した他のタイプの円に対しても使われる。

接するという性質については次のように定義されている。第一に、点、直線、円はそれ自身と接していると考える。これによって、仮に与円がすでに他の2つの与円に接していれば、その配置自体がアポロニウスの問題に対する解のひとつとしてカウントされる。2つの相異なる幾何学的オブジェクトは、もしこの2つのオブジェクトがある一点を共有していれば、これらの2つの相異なるオブジェクトは「交わっている」と言われる。ある一点が、円もしくは直線に交わっているなら、その点はその円あるいは直線と接していると定義する。なお、ここで「交わっている」というのはこの点が、この円上、または直線上にあるということでもある。このことから、2つの相異なる点は接することはできない。もし、交点における直線・円間の角度がゼロであるならば、このような直線・円は接しているとされる。この交点は接点(tangent point、あるいはpoint of tangency)と呼ばれる。なお、この「接触 tangent」という言葉はラテン語現在分詞tangensに由来し、「接触している touching」という意味である。実際には、2つの相異なる円が一点で交わっていれば、この2つの円は互いに接している、と考えればいいだろう。もし、この2つの円の交点がゼロ、あるいは交点が2つ存在するならば、この2つの円は接していない。同じことが一つの直線と一つの円の組み合わせの場合にも言える。2つの相異なる直線は平面上では接することができない。ただし、反転幾何学射影幾何学では2つの平行する直線は無限遠点で接しているとも考えられる。下記を参照[5][6]

解円は、与えられた3つの円それぞれに、内部にであれ、外部にであれ、接している。外接(external tangency)は、解円が与円に接する点において、2つの円のカーブがお互いに逆の方向を向いているものである。これらの2つの円は、その点における接線(英語版)の違う側に存在し、どちらかの円がもう一方の円を外部に持つ。この外接の場合、解円と与円の距離は、この2つの円の半径の和に等しい。これとは対照的に、内接(internal tangency)とは、解円と与円が、接している点において、円のカーブが同じ方向である場合を指す。この場合、この2つの円は、円の接線の同じ側に存在し、どちらかの円がもう一方の円を内部に持つ。この場合、この2つの円の中心同士の距離は、2つの円の半径の差に等しい。図解としては、図 1の(解である)ピンクの円が、内部で、右側の黒い中くらいの大きさの与円と接している。一方で、左側の一番小さな与円と一番大きな与円とは、外接している。


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