アベルメクチンの例
R = CH2CH3: アベルメクチン B1a
R = CH3: アベルメクチン B1b
識別
CAS番号
65195-55-3(B1a)、65195-56-4(B1b)
アベルメクチン[1](Avermectin)は、16員環ラクトン(マクロライド)化合物の一群であり、駆虫活性および殺虫活性を有している[2][3]。土壌中の放線菌の一種Streptomyces avermitilis(英語版) の産生物である。4組8種の化合物が知られており、それぞれA1a、A1b、A2a、A2b、B1a、B1b、B2a、B2bと命名されている[1]。主産生物(A群)および副産生物(B群)の産生量の比は、8:2 - 9:1である[3]。このうちB1aとB1bの混合物がアバメクチン(Abamectin)である。アベルメクチンを基に合成された駆虫薬には、イベルメクチン、セラメクチン(英語版)、ドラメクチン(英語版)がある。2015年のノーベル生理学・医学賞は、アベルメクチンの発見を含む寄生虫感染症治療法の開発を評してウイリアム・キャンベルおよび大村智に、また、アルテミシニン発見を含むマラリア感染症治療を評して屠??に送られた[4]。 1979年、北里研究所により静岡県伊東市川奈の土壌から放線菌が分離された。その後放線菌は製薬企業の研究所に送られ、種々の培養液で慎重な環境制御下で培養され、マウスに寄生した寄生性線虫Nematospiroides dubius
開発の経緯
2002年、北里大学北里生命科学研究所および北里研究所が、ストレプトマイセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)からストレプトミセス属放線菌(ストレプトミセス・アベルメクチニウス、Streptomyces avermectinius) を分離することを提案した[6]。 一般に治療に際してはアベルメクチンは経口投与または局所(外用)投与される。蚤駆除の場合は感染部に滴下投与される。家畜の線形動物や節足動物感染症に300μg/kg以下で広範囲な有効性を示す。対してイベルメクチンはヒト、ウマ、愛玩動物等の多くの動物種に200μg/kgの投与量で用いられる。マクロライド系抗生物質やポリエン系抗真菌薬とは異なり、抗細菌作用や抗真菌作用は持たない[7]。 アベルメクチンは無脊椎動物に特有のグルタミン酸作動性塩化物イオンチャネル アベルメクチンへの耐性が報告され、使用量を減ずるべきであることが示唆された[13]。イベルメクチン・ピペラジン・ジクロルボスの併用療法でも毒性の可能性が指摘された[14]。アベルメクチンは腫瘍壊死因子、一酸化窒素、プロスタグランジンE2のリポ多糖誘導性分泌を遮断し、Ca2+の細胞内濃度を増加させる[15]。 副作用は多くの場合一過性であるが、過量投与で稀に重篤な昏睡、低血圧、呼吸不全を起こし死に至る可能性がある。特定の解毒療法はないが、症状を適切に管理すれば通常は予後良好である[16]。
齧歯動物毛皮へのダニ寄生に関するアベルメクチン治療
作用機序
毒性・副作用
アベルメクチンの生合成アベルメクチンの生合成経路