アニメ雑誌
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アニメ雑誌(アニメざっし)は、アニメを中心とした情報を提供する雑誌
概説
発刊ブームと盛衰

アニメ雑誌の歴史は、購読者であるアニメファンの人口や嗜好の変化を反映している。特に社会的話題となったアニメ作品の盛衰と雑誌の販売部数とがはっきりと関係しており、アニメブームの時期には新たな雑誌が発刊され、またブームが去ると休刊・廃刊するといった動きが顕著である。

1970年代前半、アニメがまだ「テレビまんが」と呼ばれていた頃、これを扱っていたのは漫画誌の『冒険王』や児童向けテレビ雑誌の『テレビランド』『テレビマガジン』だった。

1975年、『宇宙戦艦ヤマト』の再放送を口火にアニメファンが急増する。この人気に出版界が反応し、1977年サブカルチャー雑誌『月刊OUT』がヤマト特集を掲載し、読者の反響の高さから程なくアニメ主体へと誌面造りの舵を切る。1978年には大手出版社初のアニメ総合誌『アニメージュ』が創刊された。『機動戦士ガンダム』へと続くアニメブーム期に他の出版社も参入し、1980年代前半には多誌競合時代を迎えた。その後OVA作品のリリースラッシュによりOVA専門誌が登場する。

1986年?1987年頃はアニメ雑誌の低迷期にあたり、アニメ雑誌の休刊が相次いだ。理由としてはテレビアニメに原作が存在しない「アニメオリジナル作品」が減少し、権利上の関係から、関連記事を掲載できるページ数に制限があるとされる漫画原作物が主流となったことや、アニメファン層の変化、編集側の努力不足などが指摘されている[1]

1990年代中頃に起こった声優ブームにあやかり、1994年に声優専門誌が誕生する。

1990年代後半には『新世紀エヴァンゲリオン』の社会現象的ヒットにより、総合誌の創刊・休刊という淘汰のサイクルが再現された。また、エヴァンゲリオンや『もののけ姫』の影響で、作品論を語るアニメ評論誌も登場した。

2000年代には美少女・美少年キャラクターの人気にあやかり、キャラクター専門誌の創刊が続いている。

近年の出版不況下では、アニメ雑誌の部数も全般的に減少傾向にある。インターネットが普及して以来、アニメポータルサイトや番組公式サイトが提供する情報や、ファン個人がウェブサイトブログなどで行う論評活動に比べ、アニメ雑誌が速報性や情報密度の点で不利になったという面もある。
分類
総合誌

人気作品の記事を中心に、放送スケジュール、イベント予定などアニメ界の最新情報・動向を総合的にカバーする月刊誌。A4版や変形A4版サイズの誌面にアニメ制作スタッフ描き下ろしの版権イラストを多用するなど、グラビアを多用した構成が特徴。関連商品や関連企業の広告ページも多い。毎号付録のアイデアに工夫を凝らしている。メインターゲットは10代から20代の男女だが、30代以上の愛読者もいる。

このジャンルはアニメブーム期に淘汰が繰り返された結果、三大誌(もしくは三強、御三家)と言われる『アニメージュ』『アニメディア』『月刊ニュータイプ』の寡占状態となっている。これらは毎月10日発売であることから10日売りアニメ雑誌とも総称され、アニメ業界ではその発売日に合わせ、新作などの情報解禁日を毎月10日に設定する事が多い。逆に言うと、10日発売以外のアニメ雑誌は速報性の面で不利な立場にある。
特定分野誌

総合誌の増刊・分冊という形で派生したジャンル専門誌。美少女キャラクター(萌え)や美少年キャラクター(乙女系)、SFメカなどファンの嗜好性を反映しており、購読者はテーマや性別ごとに分かれる。大判イラスト(ピンナップ)や声優へのインタビュー、マニアックな解説などが充実しており、漫画・ライトノベル・ゲーム・特撮などの別メディアも並列的に取り上げている。
批評・研究誌

映像文化、もしくはオタク学的な見地から、アニメの歴史や作品論(作家論)、表現技法を検証する雑誌。監督・脚本家へのインタビュー記事、デザイナーやアニメーターの画稿を多く掲載する。総合誌が扱わない趣味的な作品や、地味な佳作も取り上げている。

この分野はアニメブーム以前の同人活動期から続いている。近年はアニメファンの年齢層の広がりにより「大人向け」を謳う企画が増えているが、定着できず少数号で休刊になるケースも目立つ。
アニメ雑誌が扱う対象

アニメ雑誌が中心に扱うアニメ作品は、一般の人気を集める高視聴率な作品とは限らない。その理由としてはまず、アニメ雑誌の購買層は主に10代のティーン層が中心であり、この層が好む作品と視聴率で高い数字を出す作品とは必ずしも一致しないという点が挙げられる。対して、アニメ番組で高い視聴率を叩き出すものは、主に子供向けアニメファミリー・一般向けアニメが多くを占める。

また、他の出版社から原作が刊行されているテレビアニメは、権利関係上、誌面に割けるページ数や記事内容、提供される誌面用素材について何らかの制限がついて回ることが少なくなく、相対的に自誌で自由に扱いやすいオリジナルアニメ作品をプッシュしがちになる傾向もある。

その他、メディアミックス展開でアニメ雑誌の出版元がアニメ作品の製作元・有力出資者の一つになるなど、特定の作品と密接な資本関係・利害関係を有する場合もある。この際にはアニメ雑誌が主たる広告宣伝媒体としての役割を果たし、その雑誌で優先的に最新情報が発表されたり、競合誌には提供されないイラストや設定資料などの素材の提供を受けて独占掲載などが行われることとなる。『アニメージュ』とスタジオジブリ作品の関係が典型的な例である。アニメと漫画の親和性は高いため漫画を連載するアニメ雑誌も多く、右綴じ(右開き)・縦書き(縦組)の形態をとるものがほとんどである。これら漫画作品は大半が企画当初からメディアミックス展開が行われる事を前提とした、アニメファンに対する訴求力を最重視した作品作りがなされており、『ファイブスター物語』『魔法少女リリカルなのは』『びんちょうタン』など誌面の枠を超えて著名になった作品もいくつか存在する。

趣味専門誌全般におおむね共通して言えることではあるものの、とりわけアニメ雑誌で特徴的なこととして、アニメ関連企業から有利な条件で情報や広告、雑誌掲載用の番組素材を得ているほか、アニメ雑誌の出版元自体がアニメ作品の製作費を出資していたり、原作の漫画や小説の出版元であるなど密接な利害関係が絡んでいたりすることも珍しくない。過去には『日刊サイゾー』が「サンライズがバンダイ傘下になって以降、版権を盾にアニメ雑誌の記事を厳しく管理する様になっている」と記している[2][3]ことに代表されるように、誌面用素材の確保の都合からも制作プロダクションや各種権利関係者の意向に沿った誌面内容にせざるを得ない面がある。作品やアニメ業界・制作プロダクション・アニメ番組のスポンサー企業に対しての批判的な記事は載せにくく、結局は宣伝用の提灯記事ばかりが誌面に並ぶ傾向がある。

同じ趣味専門誌であっても、鉄道航空などの分野では起き得る、多数の犠牲者が発生した大きな事件事故のように、趣味専門誌がその分野に特化したマスコミとしてジャーナリズムの姿勢を前面に押し出さなければならなかった出来事が過去に少ないジャンルである。誌面に用いる情報・素材の入手の利便性や、大量に素材の提供を受け続けなければ誌面を構成できない雑誌の特性もあって、アニメ雑誌の編集部とマスコミとして取材対象となったりアニメ雑誌に広告を出稿したりしている業界の各社・関係者との関係は得てして緊密なものになりがちで、適度な距離感・緊張感を保つことができない業界体質がある。このようなジャーナリズムの普遍的な中立性・公平性・独立性を保つことが難しいアニメ雑誌業界の事情もあって「アニメ雑誌にジャーナリズムなし」と言われることもある。
クリエイターへの注目

アニメ雑誌の登場は制作側にも影響を及ぼした。アニメ雑誌が登場する以前には、アニメを制作するクリエイターの存在が、受け手である視聴者の側にほとんど認識されていなかった。「テレビまんが」とも呼ばれて、原作を提供した漫画家が一人でアニメを作っているなどという誤解も存在していたほどである。

そんな時代にあって、匿名の存在に近かったクリエイターにスポットライトを当てたのがアニメ雑誌である。同人誌などで活動していた学生をアルバイトのライターとして雇い、彼らがファン活動を通じて既に目をつけていたクリエイターを誌面で紹介した。そうした特集を通じて、スター的存在になったアニメーターやキャラクターデザイナーが登場し、演出家では宮崎駿押井守がアニメ雑誌のバックアップを受ける形で世に出て行った存在である。また、制作会社の間での技術的・人的な交流も少なかったのが、アニメ雑誌が業界誌的な役割を果たしたことが証言されている。

近年ではアニメソングJ-POP市場でも無視出来ない存在となりつつある事から、アニメソング専門雑誌も登場している。
ファンの交流・人材輩出

パソコン通信インターネットが登場する以前、日本全国で流通するアニメ雑誌はアニメファン同士の横の繋がりを拡げる場でもあった。読者投稿ページではサークルのメンバー募集や自主イベントの告知、作品への意見交換などが積極的に行われた。読者投稿中心の雑誌では『月刊OUT』の「アウシタン」、『ファンロード』の「ローディスト」といった愛読者の通称が自発的に生まれ、独自のコミュニティーを形成していった。

誌面作りに関わったアルバイトの編集者・ライター・イラストレーターの中には、アマチュアからプロの道へ進んだものも多い。フリーライターでは池田憲章氷川竜介原口正宏あさのまさひこ、漫画家ではゆうきまさみらがいる。


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