アトランティス
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、伝説の大陸について説明しています。その他の用法については「アトランティス (曖昧さ回避)」をご覧ください。
大西洋の中央にアトランティスが描かれたアタナシウス・キルヒャーによる地図。南が上のため、右側がアメリカ、左側がアフリカである。1699年 アムステルダムで出版

アトランティス(古代ギリシア語: Ατλαντ??)は、古代ギリシア哲学者プラトンの著書『ティマイオス[† 1]及び『クリティアス[† 2]の中で記述された伝説上の広大な、及びそこに繁栄したとされる帝国。プラトンの時代の9000年前に海中に没したと記述されている[1]
概要プラトンティマイオスラテン語の翻訳(15世紀)

プラトンの対話篇ティマイオス』および『クリティアス』では、次のように語られている。ジブラルタル海峡のすぐ外側、大西洋に巨大なアトランティス島があった。資源の宝庫で、そこにある帝国は豊かであり、強い軍事力を持ち、大西洋を中心に地中海西部を含んだ広大な領土を支配していた[2]

王家はポセイドンの末裔であったが[2]、人間が混じるにつれ堕落し、物質主義に走って領土の拡大を目指し、帝国は荒廃した[2]アテナイは近隣諸国と連合し侵略者であるアトランティス帝国と戦い、辛くも勝利したが[2]、その直後アトランティス島は海中に沈み、滅亡したとされている。これは神々の罰であるという。

16-17世紀の西洋世界では、南北アメリカ大陸というキリスト教の世界観に収まらない新天地の発見により、その先住民の起源と大陸が生まれた経緯を説明するために、さまざまな理論が考案され、アトランティスもその説明に用いられた[3]

16世紀の学者にはアトランティス大陸の存在を疑う人もいたが、世間から尊敬を集める人々の多くは信じており、彼らが世間から怪しく思われることもなかった[4]フランシス・ベーコンは、ユートピア小説『ニュー・アトランティス』(1601年、未完)でアメリカをアトランティスの残骸とする説を寓話として紹介し、広く普及させたが、これには批判もある[5]

アトランティスについては、もっぱら伝統的な古典教育を受けた教養人と著述家の間で議論されていたが、1870年フランスの人気作家ジュール・ヴェルヌがSF小説『海底二万里』で海中に没したアトランティスの姿を描き、欧米の大衆文化にアトランティスという概念を広め、大衆におけるアトランティスブームの先駆けとなった[6]

さらに1882年、アメリカの政治家イグネイシャス・ロヨーラ・ドネリー(英語版)が著書『アトランティス―大洪水前の世界』[† 3]を発表し、「謎の大陸伝説」[注 1]として一大ブームとなった。今日から見るとドネリーの学説には多くの欠陥があるが、当時においてはそれなりの説得力があり、彼によって近代のアトランティス学・アトランティス神話の基盤が作られ[9]、民衆文化におけるアトランティス熱に火をつけ、更にオカルトと結びつくことで多くの派生研究を生んだ。

彼以降のアトランティスに関する著作家たちは、ドネリーを上回る、さらに美化した極論を展開した[9]

ドネリーの著作と同時期にオカルティストたちも関心を持つようになり、アトランティスを始めとする失われた大陸をめぐる疑似歴史に、様々な想像や夢物語を付け加えていった。神智学協会を作ったヘレナ・P・ブラヴァツキーに始まり、ルドルフ・シュタイナー人智学、さらにシュタイナーの弟子を通じて薔薇十字思想などに受け継がれ、模倣され、広まっていった。

アトランティスはアーリアン学説とも結びついており、オカルト思想や疑似歴史・疑似科学の教義を説く集団と密接に関係していたナチスは、その壮大な疑似歴史体系の重要な一要素として、アトランティスをアーリア民族の故郷であると主張し、この説を立証しようと資金と頭脳を投入した[10]

大戦後には、冷戦を背景に核戦争への危機感と相まって、オカルト的・疑似歴史的アトランティスが再びブームとなり、フィクションの魅力的なテーマとしてたびたび用いられた[11]

プレートテクトニクス理論によって大西洋にかつて大きな陸塊が存在した可能性が否定されるなど[12]、近年の研究によってドネリーの主張は時代遅れとなり[9]、アトランティス実在説やアトランティス学は、疑似歴史として扱われるようになり、まともな学問とはみなされなくなった[13]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:124 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef