アトラハシス
[Wikipedia|▼Menu]

アトラ・ハシースまたはアトラハシス / アトラ・ハーシス < Atra-Hasis > は、紀元前18世紀に3枚の粘土版アッカド語で記された叙事詩(邦訳例『アトラ・ハシース神話』、或いは『アトラ・ハシース叙事詩』)の主人公[1]。いわゆる『大洪水伝説』に登場する、『旧約聖書』の「創世記」6章以降に収録されている『ノアの方舟』の主人公ノアに当たる人物[2]
呼称

アトラ・ハシースはアッカド語で「賢き者[3]」「最高の賢者[2]」の意で新語系であり、元来はアトラム・ハシース < Atra-m-hasis > と呼ばれた[4]。『アトラ・ハシース叙事詩』以外にも各神話や伝承に名前を変えて登場するが、以下に示す者は基本的に同一人物として描かれる。

例として、『ギルガメシュ叙事詩』における彼は古バビロニア語のウタナピシュティム < Uta-napistiim >(「生命を見た者」の意[5])の変形名と解されたウトナピシュティム(英語版) < Ut-napishtim >と述べられている他、シュメール語の大洪水伝説では「永遠の生命[6]」「永続する生命[5]」の意であるジウスドラまたはジウスドゥラ < Ziusu-dra >と呼ばれた。なお、ジウスドゥラについては近年、「ジウドスラ」と読むべきであるとの説が出されている[6]

ヘレニズム時代にはベロッソス著ギリシア語版『バビロニア史』において、ジウスドゥラのギリシア語化であるクシストロスの名で伝わった[7]
概要

アッシリア版:
アッシュールバニパルの図書館ニネヴェ)から発見。

ウガリットからアトラ・ハシース叙事詩の断片が発見。

エンリルは、意地悪い、気まぐれな性格に描かれ、エンキは優しく助けになる性格と描かれる。

年表

1876年、
ジョージ・スミスのThe Chaldean Account of Genesis[8]によって最初に翻訳。

1899年、Heinrich Zimmern により主人公の名前がAtra-Hasisとなる。

1991年、ステファニー・ダリー (Stephanie Dalley) は、アトラ・ハシースとギリシャ神話の洪水を起すデウカリオーンの父プロメーテウスとの名前の類似を指摘[9]

1965年、W. G. Lambert と、A. R. Millard[10]は、古バビロニア版(紀元前1650年記述)を含む資料を発表[11]

1992年、ヴァルター・ブルケルト[12]は、ホメロスの叙事詩『イリアス』との関連性を論じる。

あらすじ楔形文字粘土版英国博物館

上述の粘土板3枚について。
粘土版 1

アヌ(天)、エンリル(風)、エンキ(水)による宇宙の創造(創造神話

エンリルは、下位の神々に農業、治水を命じる[注 1]。40年後、下位の神々は反乱を起こす。エンキは、人間をつくって農業と治水を行わせることを提案。 

母神ニンフルサグ(マミ)は、死んだ知恵の神ゲシュトウーエ (Geshtu-e) の肉と血を混ぜた粘土で人間をつくる[注 2]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:29 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef