アタマース
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ミケーレ・A・ミリャリーニ画『アタマース』(1801年)。ローマアカデミア・ディ・サン・ルカ所蔵。

アタマース (古希: ?θ?μα?, Atham?s) は、ギリシア神話に登場するボイオーティア地方のオルコメノスの王である。長母音を省略してアタマスとも表記される。

アイオロスエナレテーの子。父アイオロスはアイオリス人の祖とされ、アタマースの兄弟はみなテッサリアー地方周辺の王ないしは都市創建者である。クレーテウスはテッサリアー王、シーシュポスコリントス(当初はエピュラー)の創建者、サルモーネウスエーリス地方のサルモニアの創建者、デーイオーンポーキス地方の王、マグネースセリーポスの創建者、ペリエーレースメッセーネー地方の王である。姉妹にカナケーアルキュオネーペイシディケーカリュケーペリメーデー

最初の妻ネペレーとの子にプリクソスヘレー、2番目の妻イーノーとの子にレアルコスメリケルテース[1][2][3]、3番目の妻テミストーとの間にレウコーン、エリュトリオス、スコイネウス、プトーオス[4]、スピンキオス、オルコメノス[2]、ポリュピリオーンの子供たちがある。
神話オルコメノスのアクロポリス。
イーノーの陰謀

アタマースはヘーラーの命によって[5]ネペレーと結婚し、プリクソスとヘレーをもうけた。しかしネペレーはアタマースを見下していたので、これに腹を立てていたアタマースは[5]カドモスハルモニアーの娘イーノーを呼び寄せた。イーノーはネペレーの子供たちに悪意を抱き、密かに土地の女たちに種麦を焙らせて作物が実らないように工作した。穀物が芽を出さないのを怪しんだアタマースは、デルポイ神託を仰ぐことにして使者を送った。イーノーはこの使者を買収し、プリクソスをゼウスの生け贄に捧げるよう神託があったといわせた。アタマースがプリクソスを山頂に引き立てたとき、ネペレーはプリクソスを救い出し、逃がれることができるように金毛の羊を授けた。こうしてプリクソスは妹のヘレーとともに金毛の羊の背に乗ってボイオーティアより逃れた。2人が乗った牡羊は「金羊毛」として後のイアーソーンアルゴナウタイの冒険につながる[1]
ヘーラーの怒り

ネペレーはヘーラーにアタマースを死罪にするよう訴えた[6]。ヘーラーは、ゼウスがセメレーに生ませたディオニューソスをイーノーが娘として匿い、アタマースがこれを黙認したことにも腹を立てていたので、アタマース(イーノーもともにともいう)に狂気を吹き込んだ。アタマースが白い鹿を見つけて矢を射たところ、殺したのはイーノーとの息子レアルコスだった。狂気に駆られたアタマースはレアルコスの体を八つ裂きにした。イーノーはもう1人の息子メリケルテースを抱いて逃げたが、アタマースに追いつめられ、母子ともに海に身を投げた。ゼウスはディオニューソスを育てた恩義に報いてイーノーを女神レウコテアーとし、メリケルテースは海神パライモーンとなった[4]
放浪

この事件によってアタマースはボイオーティアから追放された。行き所を失ったアタマースが神託を伺ったところ、「野獣がおまえを饗応してくれる場所に住め」というお告げがあった。アタマースが北に向かってさまよい歩くうち、荒野で狼の群れが羊の群れをむさぼり食っているところへ出くわした。狼たちはアタマースとその配下たちを見て逃げ、腹を空かせていたアタマースの配下は羊の肉を食べた[7]。アタマースは神託にしたがってこの地をアロスと呼び、都市を創建した。のちのアタマニア(アタマンティアーとも)である。アタマースはこの地でテミストーと結婚した[4]
異説

一説によるとプリクソスは美しい若者で、クレーテウス(アタマースの兄弟)の妃ビアディケーに求愛された。プリクソスがこれをはねつけところ、ビアディケーは恨んでクレーテウスにプリクソスが自分を襲おうとしたと讒言した。そこでクレーテウスは妻を思う心から、アタマースにプリクソスを殺すよう説得した。このためアタマースはプリクソスを生け贄にせざるを得なくなったが[8]ヘーラクレースがプリクソスを救った[9]

アタマースの狂気についてもまったく別の話がある。山中でイーノーが大山猫に襲われたとき、バッコスの狂乱がイーノーに取り憑き、イーノーは大山猫を引き裂いて殺し[10]、そのままパルナッソス山マイナスたちの酒宴に加わった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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