アセトン
IUPAC名
プロパノン、プロパン-2-オン(優先IUPAC名)
識別情報
CAS登録番号67-64-1
56.5 ℃[1]
水への溶解度任意に混和する
酸解離定数 pKa20(水中)
屈折率 (nD)1.3591 (20 ℃, D)[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
アセトン (acetone) は有機溶媒として広く用いられる有機化合物で、もっとも単純な構造のケトンである。IUPAC命名法では プロパン-2-オン (propan-2-one) [2]あるいは単にプロパノン。両親媒性の無色の液体で、水、アルコール類、クロロホルム、エーテル類によく溶け、ほとんどの油脂もよく溶かすことができる。蒸気圧が20 ℃において24.7 kPaと高いことから、常温で高い揮発性を有し、強い引火性がある。ジメチルケトンとも表記される[2]。 アセトンは、ブドウ糖の嫌気的発酵の一つであるアセトン-ブタノール-エタノール発酵によって生成するほか、人体でも正常な代謝プロセスの結果としてケトン体から自然に生成され排出される物質で、生殖毒性試験では生殖問題を起こす可能性が低いことが明らかになっている。実際に、エネルギー必要量が高く体内の脂肪の利用が高まるとアセトンの生成レベルも高くなることから、妊婦、授乳中の母親、および小児の体内アセトンのレベルは自然と上昇する。糖尿病患者が糖尿病性ケトアシドーシスに陥った時には大量に生成して、呼気がアセトン臭を呈する。難治性てんかんを患う乳児や小児のてんかん発作を減少させるため、体内のケトン体を増加させるケトン食療法が行われているが、アセトンの薬理効果を期待したものではない。 酢酸カルシウムの乾留や、クメン法によるフェノール製造の過程で、クメンヒドロペルオキシド (C6H5C(CH3)2OOH) の酸分解の段階において、アセトンが副生物として得られる。また、2-プロパノールを酸化亜鉛などの触媒存在下に脱水素、あるいは空気酸化して得られる酸化物を分解することによっても得られる。プロピンに水を付加することでも得られる。プロピレンをワッカー酸化によってアセトンとする方法も用いられる。 アセトンから出発する有機合成の需要は比較的少なく、クメン法などに伴い副生するアセトンの産量は過剰である。このため概して価格は安い。 合成アセトンの 2016年度日本国内生産量は 406,620 t、工業消費量は 146,709 t である[3]。 歴史的には、初期の製造法では木材を乾留して得られる木タールを蒸留して得ていたが、この方法では生産量が少なく、アセトンは高価な試薬であった。無煙火薬が発明されるとコルダイトを製造するための溶媒として大量に必要になり需要が激増した。
解説
関連法規
消防法により危険物第四類(第一石油類 危険等級2 水溶性)に指定されている。指定数量以上の貯蔵・取扱には市町村長等の許可が、指定数量の1/5以上指定数量未満の貯蔵・取扱には消防署への届出が必要で、指定数量以上の取り扱いには危険物取扱者乙四類か、甲種免許所持者でなければならない。
麻薬向精神薬原料対象物質
有機溶剤中毒予防規則により第二種有機溶剤に指定されている。
製造