アセチル化
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アセチル化(アセチルか、Acetylation)とは、有機化合物中にアセチル基が導入されることである。IUPAC命名法ではエタノイル化という。逆に、有機化合物からアセチル基が除かれる反応は脱アセチル化という。

具体的には、有機化合物中の活性化した水素原子がアセチル基で置き換わる反応である。水酸基の水素原子がアセチル基で置換されてエステル酢酸塩)を生じる反応もこの反応に含まれる。アセチル化剤としては、しばしば無水酢酸が使われる。この反応は例えば、アスピリンの合成などにも必須である。
タンパク質のアセチル化

細胞内で、タンパク質翻訳後修飾としてアセチル化が行われることがある。例えばヒストンチューブリンなどである。
N末端のアセチル化

真核生物のタンパク質のN末端にあるαアミノ酸はアセチル化されることが多い。実に酵母のタンパク質の40-50%、ヒトのタンパク質の80-90%がアセチル化されており、これは進化を通じて保存されている性質のようである。N末端のアセチル化は、N-α-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)の触媒作用によってアセチルCoAからアセチル基を転移させる。N-α-アセチルトランスフェラーゼは酵母で最も研究が進んでいるが、酵母では3つの複合体NatA/B/Cが存在する。これらは基質に特異的で、リボソームと協調してタンパク質の翻訳と同時にアセチル化を行っていると考えられている。

ヒトでは複合体はNatAの1つだけで、既に同定されている。NatA複合体のサブユニットは、β-カテニン経路などに関連したプロセスとも共役している。また甲状腺乳頭癌や神経芽細胞腫の患者ではこの酵素が過剰発現していることも発見された。

このように、進化の過程で保存され、生物間に広く分布した修飾様式ではあるが、タンパク質のN末端のアセチル化の生物学的な役割はまだ良く分かっていない。しかしトロポミオシンアクチンには、その機能の発現にアセチル化は不可欠で、アクチンはNatBのアセチル化を受けないとアクチンフィラメントを形成できないということなどが分かってきた。
ヒストンのアセチル化と脱アセチル化

ヒストンでは、N末端のリシン残基がアセチル化、脱アセチル化され、これが遺伝子発現の制御に関わっている。ヒストンが多数アセチル化されている染色体領域は、遺伝子の転写が活発に行われており、ヒストンのアセチル化は遺伝子の発現を活性化させ、脱アセチル化は遺伝子の発現を抑制していると考えられている[1][2]

これらの反応はヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAt)、ヒストン脱アセチル化酵素=ヒストンデアセチラーゼ(HDAc)によって触媒される。
チューブリンのアセチル化と脱アセチル化

チューブリンのアセチル化と脱アセチル化については、クラミドモナスを用いて詳細な研究が行われた。軸糸に局在するチューブリンアセチルトランスフェラーゼは、微小管を構成するα-チューブリンのサブユニットの特定のリシン残基をアセチル化する。微小管が分解されると、原形質に含まれるデアセチラーゼによってこのアセチル基は取り除かれる。このようにして、軸糸の微小管は原形質の微小管よりも長い寿命を持つ。
脚注^ “アーカイブされたコピー”. 2012年12月15日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2012年8月3日閲覧。
^ “アーカイブされたコピー”. 2012年7月20日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2012年8月3日閲覧。

関連項目

アセトキシ基

アシル化反応

有機合成化学










タンパク質一次構造翻訳後修飾
全般

タンパク質生合成

ペプチド結合

タンパク質分解

ラセミ化

N末端

アセチル化

ホルミル化

ミリストイル化

ピログルタミン酸

メチル化

糖化反応

C末端

アミド化

GPIアンカー

ユビキチン化

SUMO化

リシン

メチル化

アセチル化

アシル化

ヒドロキシル化

ユビキチン化

SUMO化

デスモシン

ADPリボース化

脱アミノ

酸化的脱アミノ


システイン

ジスルフィド結合

プレニル化

パルミトイル化

セリン/トレオニン

リン酸化

グリコシル化

チロシン

リン酸化

チロシン硫酸化

ポルフィリン環結合

リボフラビン結合

アスパラギン

脱アミド

グリコシル化

アスパラギン酸

スクシンイミド形成

リン酸化

グルタミン

アミノ基転移

グルタミン酸

カルボキシル化

ポリグルタミル化

ポリグリシル化

アルギニン

シトルリン化

メチル化

プロリン

ヒドロキシル化

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