アサ
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、植物のアサ(麻)について説明しています。姓については「麻 (姓)」を、花椒の味については「麻辣味」を、その他の用法については「アサ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

アサ
アサ Cannabis
分類

:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 Angiosperms
階級なし:真正双子葉類 Eudicots
階級なし:バラ類 Rosids
:バラ目 Rosales
:アサ科 Cannabaceae
:アサ属 Cannabis

学名
Cannabis L.
和名
アサ
英名
Cannabis
Hemp



アサ C. sativa L.

C. indica Ram.

C. ruderalis Janisch.

アサ(麻、Cannabis sativa)は、中央アジア原産[1]とされるアサ科アサ属の一年生の草本であり雌雄異株である。大麻草(たいまそう)とも呼ばれる[2][3]

茎の皮の植物繊維は、木綿合成繊維が普及するまで麻繊維麻布、として主に用いられていた。大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)並びに大麻草の種子及びその製品を除いた、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品は大麻取締法で禁止されており、2022年時点では主におお麻として神道における神具向けなどが生産が許可されている[4][5]。戦前までは麻といえば、おお麻(ヘンプ)を意味したが、2010年代には「麻」と言えば、亜麻(あま、リネン)と苧麻(ちょま、ラミー)を指す。 家庭用品品質表示法で、「麻」と表示することが認められているのは、衣服やシーツの素材として使われている亜麻と苧麻の2種類だけで、おお麻(ヘンプ)は“指定外繊維”となっている[5]。麻の実(種子)は古くは5つの主食のヒトツ・現在は七味唐辛子として、麻の実油は食用や燃料に用いられる[6]
概要

伊勢神宮の神札の大麻と呼ぶ由来となった植物であり、三草のひとつに数えられ、米と並んで主要作物として盛んに栽培されてきた。第二次世界大戦中に農林省が日本原麻を設立した日本でも[7]、終戦後にGHQの指令により規制したが[8]、繊維用の麻まで強く規制され伝統継承の問題が生じされたため、解放後に産業利用と伝統工芸利用を認める改正がされている[9]。20世紀半ばより国際的に薬用の大麻が規制されたが、21世紀初頭には医療大麻、違法かつ非犯罪化という緩い規制への変化、米国首都での嗜好大麻の合法化など例外も増えてきた[10]

大麻として、1961年の麻薬に関する単一条約で国際統制されるのは、繊維や種子や園芸以外を目的とした花や果実のついた枝端である[11][12]。一方、日本では大麻取締法の大麻として、カンナビス・サティバ・エルの繊維型の品種も葉と花穂が規制されており[2]、種子や茎を除外している。葉や花には向精神性のテトラヒドロカンナビノール (THC) が多く摂取すると陶酔する。薬用型あるいは「マリファナ」と呼ばれる[13]。薬用型の代表的な品種ではTHCの含有量は15%を超える[14]。一方、神道における大麻(おおぬさ、あるいは、たいま)は、神に捧げられた布(ヌサ)の多くが麻であったことから麻の字が当てられ、これを形式化した祓い具である[15]

ヘンプ (hemp) は、繊維型とされ、繊維利用のために品種改良した麻の呼称で、繊維利用の研究が進んだ欧米諸国でそう呼ばれ、規制法で表記される植物名のカンナビスと区別している。ディーゼルエンジンなどに使用できる化石燃料よりも低公害の油をとることもでき[16]、近年その茎から採れる丈夫な麻繊維はエコロジーの観点から再認識されている。産業用ヘンプのTHC含有量は0.3%未満であり、摂取しても陶酔作用はない[2]

2016年前後の産業用ヘンプの生産面積(単位:ヘクタール)[14]カナダ34000
アメリカ合衆国3905
ドイツ1501
フランス14500
オランダ2443
スペイン300
イタリア2300
ロシア3800
中国26800
日本6

広義には、アサは麻繊維を採る植物の総称であり、亜麻苧麻(カラムシ)、黄麻(ジュート)、マニラ麻サイザル麻を指すことがあるが、本項目とは別の植物である。
大麻の形態学による違い麻の葉

真の野生の大麻は失われており、人間が栽培した種に起源をもつ[13]。現在の分類体系では、単一の種 Cannabis sativa、あるいは sativa サティバだけでなく、亜種インディカ indica との2種、またルデラリス ruderalis を加えて3種として言及される[17][18]。かつてクワ科とされていたが、DNAの類似性からアサ科にまとめられる。形態的にも、托葉が相互に合着しない、種子胚乳がある等の点でクワ科と区別できる。CannabisCannabis sativa L.C. sativa subsp. sativaC. sativa subsp. sativa var. sativaC. sativa subsp. sativa var. spontaneaC. sativa subsp. indicaC. sativa subsp. indica var. indicaC. sativa subsp. indica var. kafiristanicaC. sativa subsp. ruderalis

カンナビス・サティバ Cannabis sativa は、フックスが1542年の草本誌で最初に用い、欧州の麻(hemp)が描かれていた[13]。1753年の『植物の種』(Species Plantarum)でリンネが、単一型として割り当てたが、しばらくするとラマルクは短く精神作用のあるインディカ indica をインド亜大陸の形態学的に異なるものだと説明した[13]。シュルテス(英語版)や Anderson は、形態学的に Cannabis sativa L.(高く育ち、繊維、種子、精神作用に使われる)、Cannabis indica Lam.(短く、ハシシがとれる)、Cannabis ruderalis Jan.(短く、枝分かれがない)の3種を推定した。

2003年の短い反復配列によるDNA指標は、繊維型と薬物型を明確に区別しなかった[13][19]。繊維型と薬用型の区別は、THCの量によって決定されており、形態的な区別はできない[17]

2004年、 Karl Hillig と Paul Mahlberg は157種の麻の体系的な化学分類を行い、現在のカザフスタンにおけるサティバ sativa の起源的な発生地、西ヒマラヤを起源とするインディカ indica の地図を描き、また中央アジアの ruderalis は第三の遺伝子プールが推定される[13]。サティバとインディカの分裂は人間の介入に先行している可能性があった[13]。カンナビノイドの合成につながる遺伝的な起源は、インディカにあるようである[13]。2005年の研究も断片長多型がこれを裏付ける[13]。また、8か国53の大麻から、ルテオリン-C-グリクロニドはサティバから検出されるが、インディカからの検出はまれであり遺伝子流動が制限されている[13]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:137 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef