アクロマート(Achromat)とは、2色に対して色収差を補正したアプラナートを言う。
眼視で使用する場合、C線とF線について軸上色収差を補正し、d線で球面収差とコマ収差を最小にするC-d-F補正が普通である[1]が、天体望遠鏡では暗い対象を見ることが多いのでe線球面収差とコマ収差を最小にするC-e-F補正が合理的である[1]。
通常の写真乾板は肉眼と比較して青色から紫色に敏感であったので、以前の写真用レンズは、d線とg線について軸上色収差を補正しF線で球面収差とコマ収差を最小にするd-F-g補正が普通であった[1]。こうすると肉眼で決めたピント位置そのままで撮影できる[1]。
写真星図ほか天文学に使用する天体写真撮影の場合は、1989年時点でも通常の写真乾板が多用されていたため、数が多い青白い星に合わせ、F線とh線について軸上色収差を補正し、g線で球面収差とコマ収差を最小にするF-g-h補正としており、これを「天体写真色消し」という[1]。 1827年オーストリア[1]ウィーン天文台所長だった天文学者ヨーゼフ・ヨハン・フォン・リトロー[1](Joseph Johann von Littrow ヨゼフ・フォン・フラウンホーファーが発明したフラウンホーファー型対物レンズはアクロマートである[1]。大型の屈折望遠鏡に一番広く使われており、クラウン系凸レンズとフリント系凹レンズを組み合わせるのはリトロー型と同じであるが、4面の曲率が全て異なり、球面収差とともにコマ収差も補正でき、F値を明るくでき、ガラス材料が少なくて済む利点がある[1]。リトロー型F20と、フラウンホーファー型F15の収差曲線を比較すると、軸上色収差はほとんど同じ程度になる[1]。 フラウンホーファーの時代にはガラス全般、特にフリントガラスの大口径材料を得るのは困難で、三角関数対数表による演算だけでレンズ設計をしていたが、フラウンホーファーは三角追跡法を繰り返して設計した[1]。 1904年にフォクトレンダーのハンス・ハルティング(Hans Harting )によりハルティングの公式が発明され、16本の式を順次計算すれば薄肉のフラウンホーファー型対物レンズの各面曲率半径が得られるようになった[1]。
望遠鏡
リトロー型対物レンズ
フラウンホーファー型対物レンズ
出典[脚注の使い方]^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 『天文アマチュアのための望遠鏡光学・屈折編』pp.161-200「対物レンズ」。
関連項目
異常分散レンズ
アポクロマート
参考文献
吉田正太郎『天文アマチュアのための望遠鏡光学・屈折編』誠文堂新光社 ISBN 4-416-28908-1