アクアポリン
アクアポリン1(AQP1)の結晶構造を描いた3次元図。
識別子
略号AQP
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アクアポリン(Aquaporin、AQP)とは細胞膜に存在する細孔(pore)を持ったタンパク質である。MIP(major intrinsic proteins)ファミリーに属する膜内在タンパク質の一種である[1]。
細胞への水の取り込みに関係しており、水分子のみを選択的に通過させることができる。
アクアポリン遺伝子の異常によって起こる疾患がいくつか存在する[2][3]。ピーター・アグレ(Peter Agre)はアクアポリンの発見により、2003年のノーベル化学賞を受賞した[4]。この時、ロデリック・マキノン(Roderick MacKinnon)もカリウムチャネルの構造とメカニズムの研究により共同で受賞した[5]。 アクアポリンは水分子を選択的に透過させるが、イオンや他の物質は透過させない水チャネル(water channel)と呼ばれている[6]。水分子はこのチャネルの細孔を通過する。この水チャネルが働くことで水の細胞膜透過性が上がっている。 人間の多くの細胞、ある種のバクテリア、さらに植物のような有機生命体にとってこのような水分子を輸送するシステムが不可欠である[7]。 大部分の細胞では、水は細胞膜の脂質を通ることで細胞に出入りする。しかし、いくつかの上皮細胞では水の透過性が高かったため、何か別の機構で水が出入りすることが予想されていた。その後、最初にアクアポリンの「アクアポリン1(aquaporin-1)」(当初はCHIPと呼ばれていた)が当時ジョンズ・ホプキンス大学にいたアグレによって発見された。この最初のアクアポリンの発見は1992年のことであった[8]。 この画期的な発見と水チャネルの研究により、アグレと共同研究者は2003年のノーベル化学賞を授与された[5]。1999年に他の研究チームと共同で、アクアポリン1の三次元構造を詳しく解析することにも成功した[9]。さらにスーパーコンピュータを用いたシミュレーションにより、どのようにして細孔に水分子だけを通しているのかを解析した[10]。 アクアポリンは6個の右向きの膜貫通αヘリックス構造を含んでおり、N末端とC末端は細胞質側の細胞膜表面に突き出している[6][11]。N末端側とC末端側の半分の配列は類似しており、繰り返し配列が存在している。この繰り返し部分は進化の初期段階に半分のサイズの遺伝子が重複したものではないかと考える研究者もいる。 ヘリックス間には5個のループ構造(A-E)が存在し、細胞外と細胞内の連絡をしている。ループBとEは疎水性であり、Asn-Pro-Ala(NPA)モチーフと呼ばれる構造を含んでいる。 NPAモチーフは脂質二重層内部で重なっており、3次元の漏斗状の構造をしている。この部分が水分子を通過させる。この重なった2つの部分のうち1つはペプチドのチャネル締め付けサイト(channel constriction site)と呼ばれる。もう1つはより狭い形をしており、ar/R 選択フィルター(ar/R selectivity filter)と呼ばれている。 アクアポリンは通常細胞膜内で4量体を形成しているが、単量体それぞれが水チャネルとして機能する。水(場合によっては電荷を帯びてない小さな物質:グリセロール、二酸化炭素、アンモニア、尿素など)を通過させる。種類の異なるアクアポリンではペプチド配列が異なっており、それによって細孔のサイズもそれぞれ違っている。細孔のサイズによって通過させることが出来る分子は限られており、小さな細孔では水分子のような小さな分子のみを通す。しかし電荷を帯びたもの(電子など)は通さないため、膜の電気化学ポテンシャルを保つことができる。 コンピュータを用いたシミュレーションにより、水分子は1列にチャネルを通過することがわかった。水分子はチャネルの壁の原子によって作られる電場に順応することで狭いチャネルを通過する。 水分子はチャネルに入ると酸素原子を下方向に向ける。中間部では配向が逆になり、酸素原子が上を向く。この細孔内の水の回転運動は、2つのNPAモチーフのアスパラギンと水分子の酸素原子間の水素結合によるものである。水分子は1列でチャネルに下向きに入り、上向きに出る。Grotthussメカニズム(rotthuss mechanism)によって逆向き ar/R(芳香族/アルギニン:aromatic/arginine)選択フィルターは、水分子に結合したまま細孔に入ろうとする分子を除去する。
機能
発見
構造アクアポリン1(AQP1)の2D概略図
6個のαヘリックスと5個のヘリックス間ループが存在するアクアポリンの3D構造
漏斗状構造により水分子などを通過させることができる
アクアポリン
NPAモチーフ
の水分子を遠ざけることで、チャネルの水分子通過速度を上げている[12]。
ar/R 選択フィルターアクアポリンによる水の取り込みの概念図
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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