アオサ
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アオサ
オオバアオサ
分類

:植物界 Plantaeもしくは
アーケプラスチダ Archaeplastida
:緑藻植物門 Chlorophyta
:アオサ藻綱 Ulvophyceae
:アオサ目 Ulvales
:アオサ科 Ulvaceae
:アオサ属 Ulva

学名
Ulva Linnaeus, 1753
和名
アオサ
英名
Sea lettuce

アオサ(石蓴)は、アオサ類に属する緑藻の総称。またアオサ類に属する一部の緑藻は加工食品として食用にでき、アオサノリとも呼ばれる[1]
アオサ類

植物としてのアオサ類は、狭義にはアオサ科アオサ属(Ulva)の海藻の総称をいう[2]。広義にはアオサ科あるいはアオサ目の海藻を含む海藻をいう[2]。なお、アオノリについては体の横断面が1層のものをアオノリ属、2層のものをアオサ属としていたが、DNA分析や比較形態学的研究から同属と指摘されるようになった[2]

アオサ属は2層の細胞層からなる膜状体で、一般に鮮緑色を呈する。日本を含む世界各地の沿岸に普通に見られる。海岸に打ち上げられた状態でもよく目にする。日本の国立環境研究所によると、特にミナミアオサは海中で漂いながら生長するため、滞留しやすく養分となる窒素が多い海域では大量発生して海岸を覆うことがあり、景観を損なったり、腐敗して悪臭を放ったり、アサリを死なせたりする被害が出ることもある[3]。「緑潮」でも後述する。
生態

アオサは、一般的に潮の満ち引きのある浅い海の岩などに付着して生息・繁殖する。海水に浮遊した状態でも成長・繁殖する場合がある。

アオサの生活環は同型世代交代型であり、胞子体・雄性配偶体・雌性配偶体の3種の藻体が共存するが、これらの外見上の区別は不可能である。無性世代である胞子体が成熟すると、辺縁の嚢から4本の鞭毛を有する遊走子が遊離する。遊走子が有性配偶体になり熟成すると、性別があり2本の鞭毛を有する配偶子が遊離する。雌雄の配偶子は接合して胞子体に成長するが、配偶子がそのまま同性の配偶体になる無性生殖の生活環を有する種も存在する。遊走子や配偶子を放出した成熟個体は枯死する。

アオサ属の藻の形態には個体間に大きな差異が認められ、しばしば種レベルの同定が困難である。以下に日本産の種を列挙した[4]

Ulva arasakii ナガアオサ

Ulva californica

Ulva clathrata タレツアオノリ(ホソエダアオノリ、ヒゲアオノリ、Syn. Enteromorpha clathrata、Enteromorpha crinita、Enteromorpha ramulosa、Ulva muscoides)

Ulva compressa ヒラアオノリ(Syn. Enteromorpha compressa)

Ulva conglobata ボタンアオサ

Ulva fasciata リボンアオサ

Ulva fenestrata チシマアナアオサ

Ulva flexuosa キヌイトアオノリ(ワタゲアオノリ、Syn. Enteromorpha flexuosa、Enteromorpha plumosa)

Ulva intestinalis ボウアオノリ(イトアオノリ、Syn. Enteromorpha intestinalis、Enteromorpha capillaris)

Ulva lactuca オオバアオサ(Syn. Ulva latissima sensu Nagai)

Ulva linza ウスバアオノリ(Syn. Enteromorpha linza)

Ulva ohnoi ミナミアオサ

Ulva pertusa アナアオサ

Ulva prolifera スジアオノリ(Syn. Enteromorpha prolifera)

Ulva reticulata アミアオサ

Ulva rigida アオサリカ(Syn. Ulva armoricana、Ulva scandinavica)

Ulva spinulosa コツブアオサ

Ulva sublittoralis オオアオサ

Ulva tanneri ヒメボタンアオサ(Syn. Chloropelta caespitosa)

ヤブレグサ属 Umbraulva のウシュクアオサ U. amamiensisとヤブレグサ U. japonica は、アオサ属に含まれたことがある[2]

また、アオノリ属 Enteromorphaのアオノリなどは、アオサと藻体の構造が異なっており、別属に分けられていたが、DNA分析などによりアオサ属に含められた。

なお、ヒトエグサ(Monostroma nitidum)については従来はアオサ目に分類され後述のアオサ類に属していたが、ヒビミドロ目に改められたため、植物分類上はアオサ類からは外れている[2]。しかし「アオサ」として販売されている食材はヒトエグサであることも多い[5](加工食品としての「アオサ」については「加工食品」節を参照)。
緑潮漂着したアオサ和白干潟福岡市)に漂着したアオサ

海水の富栄養化などが原因でアオサが大量繁殖すると緑潮(グリーンタイド)となる。その多くが不稔性のアオサである。稔性のアオサは遊走子や配偶子を放出すると枯死してしまうのに対して、不稔アオサは成熟せず成長し続けることとなる。

大繁殖したアオサは漁網に絡まり、沿岸に漂着したものが腐敗して悪臭を発し、多量に堆積すると底生生物窒息状態に陥らせる。悪臭の問題は既に1921年に日本海藻学の祖である岡村金太郎によって指摘されていたが、顕著化したのは水質汚濁が進んだ1970年代以降である。アオサの大量繁殖は自然環境への打撃のみならず漁業観光海水浴ウォータースポーツ潮干狩り等)への経済的打撃をも与える。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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