アインシュタイン係数
[Wikipedia|▼Menu]
連続スペクトルと比較した輝線と吸収線

アインシュタイン係数(アインシュタインけいすう、: Einstein coefficients)は、原子もしくは分子による光の吸収および放射の確率を評価する数学量[1]。A係数は光の自然放出の確率と関連し、B係数は光の吸収および誘導放出に関連する値である。
スペクトル線

物理学において、スペクトル線は2つの視点から考えることができる。

原子または分子が原子の特定の離散エネルギー準位E2から低いエネルギー準位E1に遷移し、特定のエネルギーと波長の光子を放出するときに輝線が形成される。多くのそのような光子によるスペクトルは、その光子に関連する波長において輝線のスパイクを示す。

原子または分子が低いエネルギー準位E1から高い離散エネルギーE2に遷移すると、吸収線が形成され、この過程で光子が吸収される。これらの吸収された光子は背景連続放射(電磁放射の全スペクトル)に由来し、スペクトルは吸収された光子に関連する波長における連続放射の降下を示す。

2つの状態は電子が原子または分子に結合している束縛状態でなければならないため、この遷移は、電子が原子から完全に連続状態に放出され(束縛自由("bound?free")遷移)、イオン化された原子を残し連続放射を生成する遷移に対して、束縛間("bound?bound")遷移と呼ばれることもある。

エネルギー準位差E2 ? E1に等しいエネルギーを持つ光子はこの過程で放出または吸収される。スペクトル線が生じる周波数νは、ボーアの周波数条件(英語版)E2 ? E1 = hν(hはプランク定数)により光子エネルギーと関連する[2][3][4][5][6][7]
放出係数と吸収係数

原子スペクトル線は、気体の放出および吸収の現象を指し、 n 2 {\displaystyle n_{2}} は線の高エネルギー状態の原子の密度、 n 1 {\displaystyle n_{1}} は線の低エネルギー状態の原子の密度である。

周波数νにおける原子線放射の放出は、エネルギー/(時間 × 体積 × 立体角)の単位で放出スペクトル ϵ {\displaystyle \epsilon } により表される。ε dt dV dΩ は体積要素 d V {\displaystyle dV} により時間 d t {\displaystyle dt} で立体角 d Ω {\displaystyle d\Omega } に放出されるエネルギーである。原子線放射の場合 ϵ = h ν 4 π n 2 A 21 , {\displaystyle \epsilon ={\frac {h\nu }{4\pi }}n_{2}A_{21},}

である。ここで A 21 {\displaystyle A_{21}} は自然放出のアインシュタイン係数であり、2つの関連するエネルギー準位の関連する原子の固有の特性により決まる値である。

原子線放射の吸収は、1/長さの単位で吸収係数 κ {\displaystyle \kappa } により表される。式κ' dxは、距離dxを移動するときに周波数νの光ビームの吸収される強度の割合を示す。吸収係数は κ ′ = h ν 4 π ( n 1 B 12 − n 2 B 21 ) , {\displaystyle \kappa '={\frac {h\nu }{4\pi }}(n_{1}B_{12}-n_{2}B_{21}),}

で与えられる。ここで B 12 {\displaystyle B_{12}} と B 21 {\displaystyle B_{21}} はそれぞれ光子吸収と誘導放出のアインシュタイン係数である。係数 A 21 {\displaystyle A_{21}} と同様に、これらも2つの関連するエネルギー準位の関連する原子の固有の特性により決まる。熱力学およびキルヒホッフの法則の適用のために、合計吸収はそれぞれ B 12 {\displaystyle B_{12}} と B 21 {\displaystyle B_{21}} により表される2つの成分の代数和として記述される必要がある。これらはそれぞれ正の吸収と負の吸収とみなすことができ、直接光子吸収と一般に誘導放出と呼ばれるものである[8][9][10]

上式は分光学的線の形状を無視している。正確にするためには、上式に(正規化された)スペクトル線の形状を掛け算する必要がある。このとき単位は1/Hzの項を含むように変えられる。

熱力学的平衡の条件の下では、数密度 n 2 {\displaystyle n_{2}} と n 1 {\displaystyle n_{1}} 、アインシュタイン係数、およびスペクトルエネルギー密度は吸収率と放出率を決定するのに十分な情報を提供する。
平衡条件

数密度 n 2 {\displaystyle n_{2}} スペクトルと n 1 {\displaystyle n_{1}} は、局所スペクトル放射輝度(もしくは一部の発表では局所スペクトル放射エネルギー密度)含むスペクトル線が生じる気体の物理状態により決まる。この状態が厳密な熱力学的平衡またはいわゆる「局所的熱力学的平衡」である場合[11][12][13]、励起の原子状態の分布( n 2 {\displaystyle n_{2}} と n 1 {\displaystyle n_{1}} 含む)が原子の放出と吸収の確率をキルヒホッフの放射吸収率と放射率の等式が成り立つように決定する。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:63 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef