『アイリッシュ・オクトーバー』
U2 の スタジオ・アルバム
リリース1981年10月20日
録音ウィンドミル・レーン・スタジオ
ボーイ
(1980年)アイリッシュ・オクトーバー
(1981年)WAR(闘)
(1983年)
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『アイリッシュ・オクトーバー』 (October) は、アイルランドのロックバンド、U2の2枚目のアルバム。 1981年6月9日のロンドン公演を以てBoyツアーが終了すると、バンドは早速7月にスタジオ入りし、2ndアルバムのレコーディングに入った。この時点で完成していた曲はFireとOctober(曲)の一部のみ。ツアー中に披露した未発表曲Father Is An ElephantとCarry Me Homeは手応えを感じなかったのか、そのままオクラ入りとなった。 が、レコーディングは遅々として進まない。通説では1981年3月22日のポートランド公演でボノが歌詞の入ったブリーフケースを盗まれたため(ちなみにこのブリーフケースは2004年ボノの元に戻った)ということになっているが[1]、これに疑義を呈している[2]のがリリーホワイトで、彼は「彼らは歌詞をなくしたと言っているけれど、それはメモ程度のものだったんじゃないかな。僕の言っている意味が分かるかい? 歌詞を書いて、できあがったものを歌ったりすることは、ボノもよくやっていたけれど、大抵の場合、使いものにならなかった。僕は彼らは歌詞を完成させていなかったと思う。そんなものなかったんだ」と述べている――端的にいえば、U2は早くもネタ切れに陥っていたということだろう。歌詞だけではなく曲も書けなかったのだから。 もう一つ、当時アダム以外のメンバーはシャロームという宗教団体に属していて、ロックと信仰の狭間で揺れたいた。このままロックバンドを続けるべきか、それとももっと宗教的意義のある職業に就くべきか悩んでおり、これもアルバム制作を難しくした一因だった。 結局、アルバムのテーマはその宗教になり、アイルランド出身というルーツや宗教観を色濃く反映した内省的な作品になった。が、キリスト教圏では、これは大きなリスクで、というのもロックの世界で信仰心を赤裸々に告白するのは、非常にダサいことと考えられていたからだ。例えばボブ・ディランは80年代初頭にゴスペル3部作と呼ばれるアルバムを発表して人気を落としていたが、U2もそうなりかねなかった。後年、ボノはこのアルバムを評して、「ほとんどのロックンロール・バンドが無視する分野に立ち入っている」と述べているが、なんのことはない、誰もそんなことをやりたくなかっただけである。 そんな中でもバンドは自分たちの音楽性の幅を広げようと苦心していて、Stranger In a Strange Land、Scarlet、Octoberではエッジがピアノを弾き、Gloriaではアダムは3種類のベースを弾き、I Threw a Brick Through a Windowではラリーはドラムの限界まで挑戦し、Tomorrowではイーリアン・パイプスをフィーチャーし、With a Shout (Jerusalem)では一部ホーンセクションをフィーチャーしたりしている。またこのアルバムでは「アダムのベースが躍動している」というのが決まり文句で、実際そうなのだが、実はエッジのギターが型にはまらず全開に唸っているのも特徴。ややもすれば一本調子だったBoyの時と違って「空間」を意識したプレイになっている。 が、収録曲の過半がレコーディング前に完成しており、ライブで何度も演奏されていたBoy収録曲と違って、そのほとんどがスタジオで作ったOctober収録曲は、スタジオヴァージョンよりもライブヴァージョンのほうが断然いいというジレンマを抱えることになった、と後年、リリーホワイトは述懐している。 U2の作品の中でもっとも人気のないアルバムであるが、その一因はU2史上最大にダサいジャケットにもあるように思う。 ジャケットは、メンバー4人が港を背に立っている写真、といったシンプルなデザインになっている。歌詞カード表紙をひろげるとパノラマ写真になっており、メンバー4人の左側に背景が写っている(国内盤において確認)。 ちなみに、アニメ版『笑ゥせぇるすまん』第9話「プラットホームの女」に於いて、タイトルコール後に流れる新宿駅東口と見られる街並みの映像中に、このジャケット写真をモデルにしたと思われる大広告が確認できる。
概要
ジャケット