アイリス・マードック
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アイリス・マードック
誕生1919年7月5日
イギリス(現: アイルランド)、ダブリン
死没 (1999-02-08) 1999年2月8日(79歳没)
イングランド、オックスフォード
職業小説家、哲学者
活動期間1954年 - 1999年
影響を受けたもの

プラトンフロイト
シモーヌ・ヴェイユ
サルトル
ドストエフスキー
マルセル・プルースト
シェイクスピア

ウィキポータル 文学
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ジーン・アイリス・マードック(英語: Jean Iris Murdoch, 1919年7月15日 - 1999年2月8日)は、アイルランド出身の英国哲学者作家詩人

倫理的・的な主題を巻き込み、セクシャルに纏わる筆者の独特の倫理観や「無自覚のままに起こされた行動」について問題提起してゆく著書は、緻密なキャラクター造形かつ読者の興味をかきたてられるような構想ゆえに名高い。

「愛する事を教えてくれたあなた。今度は忘れる事を教えて下さい」という格言が有名である。

処女出版小説『網のなか Under the Net』(訳:鈴木寧)は、2001年に米国の『モダン・ライブラリー』誌編集部によって、20世紀の英語小説ベスト100の一冊に選ばれた。1987年大英帝国勲章を授与され、デイムの称号を得た。

2001年のアメリカ映画『アイリス』は、最晩年にアルツハイマー症を患うまでの彼女の姿を、6歳下の夫ジョン・ベイリーの視点を通して描き出している。
略歴

ダブリン出身。父親のウィリス・ジョン・ヒューズ・マードックは、ベルファスト近郊カウンティ・ダウンの、長老派教会に属する農夫の家系の出身で、かつて声楽家を目指した母アイリーン・アリス・リチャードソンは、ダブリン出身のアイルランド聖公会の信徒であった。幼くして両親に連れられロンドンに渡り、この地で父親は文官を務めた。

ブリストルで教育を受けた後、オックスフォードのサマーヴィル・カレッジで古典・歴史・哲学などを学ぶ。後にセント・アンズ・カレッジの研究員となる。

1954年にはじめての小説「網のなか」、哲学に関するエッセイ、ジャン=ポール・サルトルに関する研究書などを執筆。1956年にジョン・ベイリーと結婚。

マードックのセクシャルを題材とした図書を複数出版する一方、配偶者であるベイリーは性に対するイメージは後ろ向きなものであったようである。

1997年にアルツハイマー病と診断され、歿年をオックスフォードで迎えるまで、夫のベイリーに支えられながら25の小説・哲学書などを執筆した。
小説

マードックは、プラトンフロイトサルトルたちから強い影響を受けている。マードックの小説は激しさと奇怪さがかわるがわるあり、ブラック・ユーモアと予測できない筋のひねりに満ち、登場人物たちに認められる上流階級の洗練されたうわべはえぐり取られている。『鐘』(1958年)、『A Fairly Honourable Defeat』(1970年)など、マードックは作品の中に非ステレオタイプのゲイの登場人物を出すことがよくある。

マードックは主として写実的な手法で書いているが、象徴をミスリーディングに使って、また、緻密な場面描写の中にファンタジーの要素を混ぜることによって、作品に曖昧さを導入しようとした。『ユニコーン』(1963年)は洗練されたゴシック小説として、あるいはゴシックで飾った小説として、ひょっとしたらゴシックのパロディとして楽しむことができうる。『黒衣の王子』(1973年)はエロティックな妄想についての考察で、登場人物たちが語り手および「あとがき」を書く謎の人物に異議を唱える時、テキストは錯綜し、多様な解釈を生む。

マードックは1978年に『海よ、海』でブッカー賞を受賞した。この本は愛の力と喪失を描いた美しく緻密な小説で、主人公の隠退した男優は、数十年離れ離れだったかつての恋人と再会した時、嫉妬に押しつぶされる。

マードックの作品のいくつかが映画化されている。『野ばら』と『鐘』はイギリスでテレビシリーズ化された。『切られた首』はJ・B・プリーストリーによって戯曲化され、リチャード・アッテンボロー演出、イアン・ホルム主演で1971年に上演された。
論争

マードックの生涯に関する論争は、2003年のA.N.ウィルソンの著書『私の知るアイリス・マードック Iris Murdoch as I Knew Her』によって火蓋が切られた。同書は ガーディアン紙によって、「おちゃめな啓示」で「びっくりするほどエッチだ」と評されており、ウィルソン自身もこれは「反伝記」であると分類している。ウィルソンは対象に対する愛着を注意深く言明してはいるものの、マードックの背信や放縦さについて書くことにやぶさかではない。ウィルソンによると、マードックは「背信行為を生き甲斐にしていた」というのである。しかしながらマードックが「恋多き女」であったことは、すでに夫ベイリーの伝記にも書かれていることであり、ウィルソンの文章は、ことさら目立つ部分をスキャンダラスに騒ぎ立て、マードックの作品群が持つ重厚さに対して、消極的なレッテルを貼る行為にすぎないといわざるを得まい。
作品
小説

『網のなか』 Under the Net (1954) 鈴木寧
訳、白水社、1965

『魅惑者から逃れて』 The Flight from the Enchanter (1956)

『魔術師から逃れて』井内雄四郎訳 太陽社 1969 「魅惑者から逃れて」集英社文庫


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