アイトラー
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曾祖母アイトラーを逃そうとしているデーモポーン(?)、前470?460年

アイトラー(古希: Α?θρα, Aithr?)は、ギリシア神話の女性である。トロイゼーンピッテウスの娘で、テーセウスの母である。その名は「晴れた空」の意。長母音を省略してアイトラとも表記される。

アテーナイの王母としてあったが、晩年に至り、ヘレネーと共にトロイアに亡命した[1]
概説
テーセウスの誕生の経緯

ペロプスの息子ピッテウスはトロイゼーンの王であった。ピッテウスの王女アイトラーは、最初ベレロポーンから妻へと求愛された[1][2]。その頃、アテーナイアイゲウスは、最初の妻メーター(Meta)とのあいだでも、第二の妻カルキオペー(Khalkiope)とのあいだにおいても子に恵まれず、その理由を尋ねてデルポイに神託を求めた[3][4][5]。彼は神から神託を得たが、それは意味が定かに分からない曖昧なものであった為、アイゲウスは神託が理解できなかった。デルポイからの帰途、彼はトロイゼーンを訪ね、ピッテウスに神託の件を話すと、ピッテウスは即座にその意味を理解した[4][6][7]

ピッテウスはアイゲウスを酔いつぶし、夜半にアイゲウスの寝所に彼の娘アイトラーを送った。こうしてアイトラーはテーセウスを身籠もったとされるが、別の話が同時に語られている。彼女がアイゲウスと寝を共にしていた夜、アイトラーはアテーナーが送った夢に導かれ、さる島で犠牲を献げるため寝所を抜け出し、そこでポセイドーンに犯された[8][9][10]。こうして生まれたのがテーセウスで、しかしアイゲウス王は生まれた子が自分の子と信じて疑わなかったとされる[4][6][11]
テーセウスの成長岩を持ち上げるテーセウス

アイゲウスがアテーナイに帰って後、アイトラーはトロイゼーンに留まり、テーセウスを育てた。アイゲウスは彼の甥に当たる、パラースの息子たちを恐れて、テーセウスをアテーナイに呼ぼうとしなかったので、テーセウスはトロイゼーンに居住していた。

しかし、アイゲウスはトロイゼーンを去る前に、巨岩の下に剣とサンダルを隠し、これをアイトラーに教え、秘密を守るよう伝えた。すなわち、テーセウスには自分の名を教えてはならない。この巨岩を動かせるほどにテーセウスが強くなったとき、初めて父の名を教えよと。そして彼が剣とサンダルを取り出し、これらで武装して、密かにアテーナイに来るよう言い残した[6][7]。パラースの息子たちの陰謀はこれによって阻止される[12]

テーセウスは成長し、父アイゲウスの言葉の通り、冒険の旅に出る。彼は数々の危難を乗り越えてアテーナイに辿り着き、更にそこからクレーテー島迷宮へと冒険に出かける。
晩年

テーセウスはクレーテー島の迷宮より無事に帰還し、アイゲウスを継いでアテーナイ王となる。アイトラーはアテーナイの王母としてアテーナイに居を移していた。テーセウスはアルゴナウタイの一員となったり、アマゾーンと戦ったりした。テーセウスは、テッサリアーラピタイ族の王ペイリトオスと親友となった[13]

二人は、ゼウスの娘を自分たちの妻にしようと企てた。テーセウスは自分の妻として、当時10歳だったヘレネースパルタより誘拐した。一方、ペイリトオスの妻としては、冥府の王ハーデースの妃であるペルセポネーがよいとして、これを奪わんと二人で冥府へと降りた[14]。テーセウスは奪ったヘレネーを母アイトラーに預けて冥府へと降って行った[15][16]

しかし、テーセウスがアテーナイを不在にしているあいだに、ヘレネーを奪還しようと、彼女の兄のディオスクーロイポリュデウケースカストール)の兄弟が、ラケダイモーン人やアルカディア人と共にアテーナイに侵攻し、ヘレネーを奪回し、アイトラーを捕虜にして連れ去った[15][17]


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