るいそう
[Wikipedia|▼Menu]
著しく痩せた子供

るいそう(羸痩、: emaciation, : Abmagerung)とは、脂肪組織が病的に減少した症候をいう[1]。いわゆるやせ(痩せ、leanness, thinness)の程度が著しい状態であり[2]、症候であることを強調するためにるいそう症[3]、あるいは症候性やせ[4]などと称することもある。脂肪組織が過剰に蓄積した症候である肥満症(obesity)、あるいは症候性肥満(symptomatic obesity)と対極にある概念である[5]。対義語で、肥えている状態は肥満または肥胖(ひはん)。

通常、脂肪組織が減少すると、それに伴って筋肉などの非脂肪組織も減少するが、脂肪組織のみが特異的に減少するリポジストロフィーのような例外もある[6][7]

関連する用語に体重減少(weight loss)が挙げられるが、厳密には別概念とみなすべきという意見もある[2]。一方で体重減少が特に急激であったり、あるいは慢性化したりすると、るいそうに至るため[2][7]、臨床的には体重を基準に診断を行うのが現実的である[1]。また、乳幼児期においては、体重が減少しない場合であっても、単に体重の増加が不良であるだけで、速やかにるいそうをきたす[4]。なお、飢餓による栄養失調(malnutrition)の状態を「るいそう」と総称することもある。

るいそうは、組織各部が萎縮(atrophy)し、体積が小さくなることによって生じると解釈することもできるが、先天的に組織の体積が小さいものは「低形成(英語版)」(hypoplasia)と呼び、区別される[8]。また、小児における身長、体重、発達など全般的な発育の異常は、「成長障害」(failure to thrive)と呼ぶ[4]。なお、るいそうは、成長障害を伴うことが多い[4]

るいそうや体重減少には、重要な疾患が背後に存在することも決して珍しいことではなく、早期に原因を検索し、適切に治療を行うことが必要となる。
用語

「るいそう」は「羸痩」という漢語字音であるが、「羸」という漢字があまり一般的でないため、平仮名で表記されることが多い。「るいしゅう」という読み方もある[3]。なお、「羸」は、「やせる」「よわる」「つかれる」などといった意味をもつ[9]

ほぼ同義の用語に瘠痩(せきそう)や削痩(さくそう)がある。「瘠」と「痩」はどちらも「やせる」という字義であり、「瘠痩」という語が用いられる例もある[10]。又、中国語では、「羸痩(.mw-parser-output .pinyin{font-family:system-ui,"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}.mw-parser-output .jyutping{font-family:"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}?音: leishou)」よりも「削痩(?音: xi?oshou)」の方が一般的である[11]

英語の“emaciation”は、“emaciate”(やせさせる)の名詞形であり、ラテン語の“emacio”(やせ)がその語源になっており[12]フランス語の“emaciation”がこれに対応する。また、英語における類義語の“wasting”も訳として日本語の「るいそう」があてられることもある[8][12]

ドイツ語の“Abmagerung”は、“mager”(やせた)の派生であり、英語の“meager”(貧相な)と語源を同じくする。
判定

健康状態を維持するための適正な体脂肪量や体重には個人差があるため、どの程度の「やせ」を病的とみなすべきか明確に言及することは難しい[2][7]。一般的には、身長別の標準体重が10%以上少ない場合、やせと判定される[1][5][4]。また、ヒトの肥満度の指標であるボディマス指数(BMI)における標準域の下限が20程度(学会によってバラツキがある)であるため、BMIが20未満であることも一つの基準となる[2]。ただ、数値がこれら基準に該当する場合でも医学的介入が必要にならない「体質性のやせ」(単純性やせ、constitutional leanness)であることも多く、臨床的に問題となるのは、もっぱらBMIが17.6未満、すなわち標準体重から20%以上減少した場合であるという[1][2][7][13][14]
原因

体水分量の増減が体重に変化をもたらす場合(浮腫脱水など)を除けば、体重の大きな変動の背景には熱量(エネルギー)の摂取量と消費量の不均等があると解釈される[15][16]。この解釈によれば、摂取熱量が減少する病態、あるいは消費熱量が増大する病態が、るいそうに至る原因となるといえる[14][15][17]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:37 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef