エータ・カリーナ
Eta Carinae
りゅうこつ座η星(りゅうこつざイータせい、Eta Carinae, η Car)は、りゅうこつ座の恒星。
太陽質量の100倍以上の大質量星同士の連星であり、高光度の青色超巨星(高光度青色変光星、LBV)である。光度は太陽の500万倍で、銀河系内でも特に異色の大質量星である。
エータ・カリーナという名でも知られている。過去に恒星から放出された大量の物質が星雲(人形星雲)となって周囲を取り巻いており、この星雲を含めてイータ・カリーナと呼ぶ事もある。なお、ラテン語では Eta Carinae であり、原語により忠実に読むと「エータ・カリーナエ」あるいは「エータ・カリーネー」、英語では「イータ・カライニー」となるが、日本語ではCarinaを属格Carinaeにしない「エータ・カリーナ」という通称が広まっている。 以下の2星から構成される 指標構成要素 60 (35,000Kの"コア")23.6 35,000 (中心から60R?)9,400- 15,000 (恒星風終端)37,200 2011年現在、りゅうこつ座η星は太陽系近傍において詳細な研究ができる最も大質量な恒星であるとされている。地球に近い他の恒星がより高光度・大質量である可能性もあるものの、りゅうこつ座η星の光度は広い波長域でのデータに基づいて確認されたものとしては最高である。非常に大質量であるとみられるピストル星などの他の恒星でも、りゅうこつ座η星よりは質量は小さいと考えられている。 りゅうこつ座η星のように質量が太陽質量の数十倍以上の恒星は、明るさが太陽の10万倍以上になる。このような規模の恒星は極めて稀で、銀河系と同程度の規模の銀河1つあたり数十個程度である。これらの星はエディントン限界に達しつつある(あるいは超えうる)のではないかと考えられている。つまり、恒星を膨張させる輻射圧がそれを抑える重力と同じくらい強いということである。太陽質量の120倍を超える超巨星は理論的なエディントン限界を超えるため、輻射や吹き飛ぶガスを重力で保持できず、結果として激しい重力波と共に極超新星爆発を起こし、ブラックホールとして終焉を迎える。 りゅうこつ座η星は連星なので、表面温度と絶対光度の関係からだけでなく、連星系の公転軌道の大きさや周期の測定によっても質量推定が可能である。しかし、後述の通り、表面の位置が不明確であり、軌道に関する情報も正確には判明していないので、質量の推定値にはかなりの幅がある。非常に大きな光度から質量の下限は90M?と推定されており、連星系の測定から主星の質量は100?120M?、伴星の質量は30?60M?と推定されている。 主星の半径推定値には、非常に大きな幅がある。主星は高密度の恒星風の存在が"表面"の定義を困難にしている。ある研究においては、物理的"表面"と見なせる可能性のある場所として、光学的深さ約150・温度35,000Kとなる"コア"を定義し、その半径を60R?と算出した。光学的深さ約0.67の半径は800R?を超えるとされ、高密度の恒星風が広範囲に広がっていることを示している。大増光時にはその半径が約1400R?であったと推定されており、仮にこれを"表面"と見なした場合、既知の恒星としては最大級とされているおおいぬ座VY星に匹敵する大きさにまで膨張したことになる。 前述のとおり、表面の定義が困難なため、どこをもって表面温度とするか?という問題がある。表中の主星の表面温度:15,000?25,000Kは"不透明な外縁"における推定温度である。 りゅうこつ座η星はこれまでに数度、異常な増光が記録されている。1677年、エドモンド・ハレーはこの星を4等級と記録しているが、1730年頃に増光が観察され、1782年には元に戻った。さらに19世紀前半には0等級前後という異常な光度の増加を少なくとも4回起こしている。中でも1841-43年には-0.8等級に達し、カノープスを抜いて全天でもシリウスに次ぐ明るさとなった[6][7]。 この現象は超新星爆発ではなかったものの、りゅうこつ座η星は数年で超新星爆発と同レベルの光を放った。その後は減光し1900年から1940年ごろには8等級ほどの肉眼では見えない星となった。さらに後には再びやや明るくなり、2000年代初頭の現在は6等級ほどの明るさを保っている。
特徴
η Car A (主星)η Car B (伴星)
スペクトル型OIまたはO2(LBV)[5]
質量 (M?)100-12030-60
半径 (R?)最大800以上 (高密度恒星風の終端)
光度 (L?)500万[5]933,000
表面温度 (K)15,000- 25,000
光度変化